にじゅうさん
「今度試合あんねんけど来れるやろ?」
『…なんで行ける前提で話を進めるの?しかもまだ入学して数ヶ月だよ?試合出れんの?』
「出れる!出たる!絶対!」
『…それは侑が決める事じゃなくて監督が決める事だと思うけど?』
いつもの様に2人で公園に現れたと思ったら、カバンも下ろさずにそう言う侑に名前は眉間にシワを寄せる。
『治は?どうなの?』
「出れると思います」
『……2人の自信はどこから来るの?姫路城?』
表情を変えずにそう言う治に名前は溜息を吐き出す。
『というか試合見に行っても遠くからじゃ、どっちがどっちか分からなくなりそうだね』
「……」
「……」
名前の何気ない言葉に2人は顔を顰めて名前をジト目で睨む。けれど名前は気にした様子もなくケロリとした顔で言葉を続ける。
『だって仕方ないでしょ?似てるんだから。話せば分かるけど、遠くからじゃ難しいよ』
名前はベンチから立ち上がり、慣れた様に治のカバンの中からボールを取り出す。
『それで?出来るようになった?』
名前がニヤリと笑いながら挑発する様に言うと2人はムッと眉を寄せて先程までの会話を忘れ練習に取り掛かる。
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『……どこのヤンキーかと思ったよ』
「どや!?似合うやろ!」
『……なんか、目がチカチカする』
「なんでやねん!」
見分けられないと話をしてからたったの1週間しか経っていないというのに、2人は髪色がガラッと変わっていた。
『それ、高校で平気なの?』
「知らん。まぁ、大丈夫やろ」
「特に何も言われなかったんで」
『寛大な学校だね』
名前はちょいちょいと手のひらで2人を呼び、頭を少し下げるように声をかけると2人は中腰になり首を傾げる。
『…うわ、めっちゃ髪傷んでる』
「染めましたからね」
「何触っとんねん!」
全く違う反応に名前は笑うと、摘んでいた指をわしゃわしゃと撫でるように2人の頭の上で動かす。
『良く似合ってるよ』
「あざっす」
「…知っとるわ、そんなもん」
治は少し表情を緩め、侑は頬を染めて視線を逸らしてそう言うと名前は手を離して腰に手を当てる。
『後はレギュラーになる事だね』
名前の言葉に2人は真っ直ぐに立ち、スっと真剣な表情になり返事をする。
「「おん」」
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