じゅうさん
交わった視線はすぐに逸らされ、ふっと息を吸い込む。名前はその時自分が息を止めていた事に気づいた。
「第1試合2セット目中盤です!」
仁花の声に影山達が動き出す。それに合わせて立ち上がり、何も言わず立ち去ろうとした時、後ろから声をかけられる。
「まさか烏野に居るとはなぁ〜」
『っ、』
「なァ?………裏切りもん」
「……裏切りもん?」
侑の言葉に月島が反応し、繰り返す。
「もしかしてベンチにでも入るんか?コーチか?…いや、コーチは
居ったもんな?」
『……』
「ならトレーナーとして、ベンチに入るつもりか?凄いやん。尊敬するわぁ。よく普通の顔して
稲荷崎の前に来れたなぁ?」
『……呼ばれてるから、行かないと』
「…そうやってまた逃げるんか」
『……それじゃあ』
「……俺は許さんからな」
名前は1度も視線を合わせること無く、侑に背を向け、月島の隣を通り過ぎる。すると月島は名前を目で追い、スっと侑に視線を戻すとニコリと笑った。
「それじゃあ失礼しま〜す」
異様な空気を感じながらも、烏野はぞろぞろとサブアリーナから立ち去った。
「…絶対に、許さへん」
侑だけがじっと名前が去っていた場所を睨み続けていた。
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