じゅうに


「相手は今年のインターハイ準優勝チーム、兵庫県代表の稲荷崎高校。まぁ、あれだ、優勝候補ってやつだ」

『…稲荷崎、』




烏養の言葉に、1番後ろに腰掛けている名前が小さく繰り返す。




「セッター宮侑。影山はユース合宿で会ってるな」



画面に侑が映し出され、名前の手がピクリと動く。




ーー「裏切りもんが俺に話しかけんなや」

ーー「お前なんか知らん」

ーー「……俺の視界から消えてくれ」





名前の脳裏に、侑の姿が映し出される。



『……』


無意識に手のひらをグッと握るとチクリと手のひらが傷んだ。




「…名前?」

『あ、……なに?』

「ミーティング中に寝るなよ?」

『寝てません〜。目を閉じてただけです〜』




烏養の声に返すと、話し合いが続けられ内心でホッと息を吐く。



明日は嫌でも顔を合わせることになる。その事を考えるだけで心が重たくなった。



*****




サブアリーナで影山と日向がレシーブ練習をしているのを横目に床に座り込み、スマホを弄る。



「ぶわぁっ!!」

「日向ボゲェ!!」


影山のボキャブラリーの少なさに少し笑っていると、頭上から烏野の選手では無い声が聞こえて、体がビクリと固まる。




「気合い入っとんなぁ」

「ちわっす」

「飛雄くん、元気しとった?今日頑張ってな。俺、下手くそと試合すんのホンマ嫌いやねん」




ゆっくりと顔を上げると、茶色い瞳と視線が交わった。






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