望み通りの永遠
「名前ー!」
『なにー?美羽』
「今日うち来ない?」
部活終わりだというのに元気な美羽は無尽蔵の体力を持ってるのかもしれない。
『えー…、』
「おいでよ!一与くんも紹介したいし!」
『一与くん?美羽、彼氏居たっけ?』
「居ないよ?一与くんは私のお爺ちゃん」
お爺ちゃんを“くん”呼びは凄いな、なんて思いながら頭を悩ませていると美羽が言葉を続けた。
「一与くんバレー教えるの上手いからさ」
『……本当に行っていいの?』
「いいよー!」
ふたりで荷物を纏めて家路を急ぐ。私と美羽は同じバレー部で、この中学校で出会って仲良くなった。1年生の時から仲が良くて、2年の今でも仲がいい。
「ただいまー!」
『お邪魔しまーす』
美羽の家に着いて靴を脱ぎ、お邪魔する。今思ったけど部活の後だ。臭かったらどうしよう。
「おかえり美羽ちゃん…、と?」
「私の友達の名前」
『苗字名前です』
「おぉ!よく来たなぁ!名前ちゃんはカツ丼好きか!?」
『え?あ、はい…、好きです…、』
「なら食べて行きな!今温めるから!」
『あ、ありがとう、ございます…』
美羽が言っていた一与くんは思っていたより嵐のような人だった。トントン拍子に事が進み、私の前にカツ丼か置かれた。顔を上げてみると、隣に美羽、斜め前に一与くん、そして私の前には小学生だと思われる男の子が座っていた。
「私の弟の飛雄」
『こんばんは?』
「…………」
コクッと頷くように頭を下げた飛雄くんは美味しそうにカツ丼を頬張っていた。私も部活終わりでお腹が空いていたし、食べ始めている美羽に続いて咀嚼する。
『めちゃくちゃ美味しい!』
「今日作ったの一与くん?」
美羽の質問に一与くんは口にカツ丼が入っているからかコクリと頷いていた。というか心の中とはいえ、私が一与くんと呼んでいいのかな。
『すっごく美味しいです!』
「それは良かった」
人当たりのいい笑みを浮かべる一与くんを見て、やっぱり美羽と少し似てるなって思った。
「名前ちゃんさえ良ければいつ来てもいいんだよ」
「そうそう。うちは親帰ってくるの遅いしさ」
「飛雄も喜んでるしな」
一与くんの言葉に、私の前に座る男の子を見ると未だにカツ丼に夢中だった。とても私が来て喜んでいるようには見えない。けど、凄く温かい家だな、って思った。
∵∵∵
「あー!悔しい!」
『惜しかったよね…』
2年生最後の試合は惜しくも準優勝だった。私も美羽も調子は良かったんだけどな。
「もっと試合したかったなー」
『…うん、そうだね』
「あとは来年か」
『来年こそは優勝したいなぁ』
「できるでしょ。私達なら」
美羽の言葉に目を見開いて、瞬きを繰り返す。そして大きな声で笑うと美羽が私のことを軽く叩いた。
「何笑ってんのよ!」
『いや、その通りだと思って!』
「本当!?」
これから私達はずっと一緒にバレーが出来ると思っていたし、私と美羽ならなんだってできる気がしてた。
でも、その一年後、美羽がバレーを辞めると知った。
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