幸せな三角関係


未来設定





「かーさん」

『ん?どうしたの?』

「明日の授業参観来れる?」

『えっ、』

「…来れない?」




私が驚いたような声を出すと、目の前の少し目つきの悪い青髪の可愛い男の子(私の息子)、もうそれは可愛い可愛い我が息子は、シュンと落ち込んだように眉を下げて、上目遣いで私を見上げる




『んん゛っ!』

「かーさん?」





その可愛さに心臓が持っていかれそうになり、必死に心臓を抑える




「かーさん?顔、凄いけど…、いや、それも、その、可愛い…、けど、」

『かっ、可愛い〜〜〜〜!!!!!』




顔を赤らめて、恥ずかしそうにそう言う可愛い我が息子(自慢)に耐えられず、成長が早くて私よりほんの少しだけ小さい体を抱きしめる



「かっ、かーさん、恥ずかしいって…」

『だってぇ!可愛いんだもん!!』




可愛い我が息子(強調)は恥ずかしそうにそう言いながらも私の背中に腕を回してくれる




『も〜!この可愛い子!どこの子!?あ!私の子だった〜!!』

「わっ、くすぐったいって、」




モチモチ、すべすべの肌に頬擦りしていると不意にグイッて襟元を引っ張られて、カエルのような声が出る



『ぐげぇっ、』

「はいはい、いつまでくっついてるんですか〜?オレもうすぐ仕事で出るんスけど?」

『あ、ジュンくん。いってらっしゃい』

「はぁ〜?愛しの旦那様にお見送りは無いんですか?」

『え〜?私は今、このかわい子ちゃんに夢中なの〜』



また抱きしめようと両手を伸ばすと、更に襟元を引っ張られる

私もふざけてジュンくんに絡もうと首をジュンくんの方へと向ける


「…愛しの、旦那様が、出かけるんですよ?」

『も〜、ジュンくんってば甘えたさ〜ん』

「甘えたでもなんでも良いんで、見送りしてください」

「…さっさと行けよ」

「小さい声で言ってるつもり何だろうけど聞こえてるんだよな〜?」

「あれ?聞こえた?じゃあ早く行けって」

『っ、見た!?見た!?ジュンくん!今の可愛い笑顔!!』

「目が笑ってないっスけどね〜?」



私が喜んでいると、目の前の天使(息子)が私の両手を両手で包み込んで、首を傾げながら上目遣いで私を見上げる



「かーさん、明日の授業参観デート来れる?」

『行ける!!何があっても行くよ!!!』

「デートじゃなくて、ただの授業参観スよね?」

「うるさい。男女が2人で出かけるのはデートなんだよ」

「はぁ?それは他人の異性の話で、お前と名前さんは親子だからデートじゃなくてただの授業参観って言うんだよ。その点、オレと名前さんが出かけるのはデート<Xもんね〜?」

『ちょ、ジュンくん近い』



ジュンくんは甘えたような声を出すと私の頬に頬擦りをした



「…時間いいのかよ。おひいさんに怒られるんだろ」

「あ〜…、そろそろ本当に出ないとやばいな。名前さんお見送りしてください」

「…とーさんがして欲しいのはお見送りじゃなくて、行ってらっしゃいのキスだろ」

「おっ、よく分かってるな〜。んじゃ、そういう事なんで、はい、名前さん」

「いつまでそんな事してるんだよ!行き帰りにキスするのって新婚だけだろ!?」

「オレたちはいつまでも新婚みたいな甘酸っぱさを持ってるからいいんだよ」

『ジュンくん、喧嘩しない』

「え〜、オレだけですか?」

『お父さんなんだから』

「ちぇ〜」




ジュンくんは唇を少し尖らせながら私を後ろからぎゅっと抱きしめると、頬にキスを落とした



「はい、次は名前さんの番ですよ?」

「〜っ、さっさと行け!クソ親父!」

『も〜、喧嘩しないっ!』

「「痛っ、」」

『ほら、もうすぐ学校でしょ?準備しなさい』

「…は〜い」




優しくそう言うと、素直に自分の部屋に行って準備を始めた

ジュンくんは私の手を掴み、玄関へと向かって行く



「最近の…、ていうかあいつが産まれてから名前さんはオレに冷たいんですよ」

『え〜?冷たくないよ』

「ちょぉ〜と寂しいんですけど?」

『ふふっ、子供みたい』

「仕方ないでしょ」




ジュンくんは玄関で靴を履くと、立ち上がって私を見下ろした



「男は好きな人にはいつだって見ていて欲しいもんなんですよ」

『…そんな、学生みたいな、』

「あらら、顔が真っ赤になっちゃって。本当にオレの奥さんは可愛い人なんですよね〜。可愛すぎて困っちゃいますよ」

『…ばかじゃないの、』



ジュンくんは私の頬に手を当てて、親指でスリスリと何度も頬を撫でる




「名前さん」

『ん?』



ジュンくんは名前を呼ぶと、大きな手で私の頬を包み込んで、指先で髪を撫でると、そのまま私にキスをした




「いってきます」

『…いってらっしゃい』




唇を離したけど、少しでも近づいたらまた唇がくっついてしまう程近い距離で呟く




「…」

『…』

「……」

『…あの、ジュンくん、ずっとこの距離は、恥ずかしい…、』

「……やっぱり今日は休んでこのままベットに…、」

「早く行け!!!!!!!!」

「ちっ…、」




ジュンくんは渋々といった顔を浮かべて、ゆっくりと私から離れると、手招きで私たちを呼んで、両手でポンポンと頭を撫でる




「んじゃ、行きますかね。いってきます」

『いってらっしゃい、お仕事頑張って』

「…いってらっしゃい、」



ジュンくんが出て行くと、さっきまで言い争っていたのに、少し寂しそうな顔をしていた


『夜には帰ってくるって言ってたから、帰ってきたら一緒に遊ぼっか』

「…オレ、父親と遊ぶって歳じゃないんだけど…」

『何言ってんの、中学生なんてまだまだ子供でしょ!』

「…」



頭を撫でると、項垂れるように頷いた気がした




可愛い息子を見送り、家の家事を行なって、一日が過ぎて夜になる



ソファに2人で腰を掛けて、テレビを見ながらジュンくんの帰りを待っていると玄関の扉が開く音がして、慌てて玄関に向かう




『おかえりなさい!』

「…ちょっと、名前さん」

『ん?』

「玄関のカギ開いてましたよ?いつもカギは閉めろってオレ言いましたよね?」

『あっ、ごめんね?うっかりしてた』

「このご時世危ないことが多いんですから、気をつけてくださいよ?」

「口煩いな…」

『はーい』

「あんた可愛いんですから変な男に襲われたらどうするんスか」

「確かに」

『2人には悪いけどそれは無い。』

「「はぁ〜?」」

『うわっ!そっくり!』




2人は顔を見合わせて眉をひそめていたけど、それが可愛くてバレないようにそっと笑った



ジュンくんがお風呂に入ってる間に、ソファに2人で座って話をする



『明日本当に授業参観行ってもいいの?』

「うん。なんで?」

『なんとなく、イメージで中学生ってあんまり親に来て欲しくないのかな…って思って』

「俺はかーさんに来て欲しい」

『…うん、お母さんも楽しみ』



頭を撫でると嬉しそうに肩をすくませ微笑んでいた。
すると不意に影が差して、ぽたぽたと頬が濡れて、顔を上げると上半身裸で首にタオルを掛けたジュンくんがいた



「そんなにお願いされたら期待に答えるしかないですね〜。ね?名前さん」

『え?』

「そんなわけで明日オレも授業参観に行くから」

「…は!?」

『え?明日お仕事は?』

「明日はオフになりました」

「くっ、来んな!」



なんて叫ぶように言うとバタバタとお風呂に向かって行ってしまった




「…なんであんなにオレには生意気なんですかね?」

『口ではああ言っても、本当は嬉しいんだよ?』

「どうですかねぇ?」

『素直になれない年頃なだけだよ』

「それなら良いんですけどねぇ〜」

『ジュンくんは凄くいいお父さんだよ』

「…息子に冷たくされて傷ついたオレを慰めてくださいよ」

『え〜?どうやって?』




頬を寄せてくるジュンくんの顔を覗き込む


「そりゃあ朝の続きを…、」

「風呂出た!!!!!」

「…絶対にタイミング狙ってるだろ」




眉を寄せたジュンくんは1度ため息を吐くと、私の頬にキスを1度落として、「髪乾かさないと風邪ひくぞ〜」なんて自分のことは棚に上げて自分の首にかかっているタオルで髪の毛を拭いてあげていた





******





「それじゃあいってきます!」

『いってらっしゃい』

「ちゃんと来てね!」

『うん。観に行くね』

「…とーさんまだ寝てんの?」

『大丈夫だよ、ちゃんと起こすから』

「別に!来て欲しいわけじゃ!…いってきます!!!」

『気をつけてね!』



駆けて出て行った背中を見送って、寝室に戻る




『ジュンくん、…ジュンくん朝だよ』

「……」



枕に顔を埋めて瞳を閉じたまま眉を寄せるジュンくんの髪を撫でる



『ジュンくん…、授業参観行くんでしょ?』

「…ん、」

『ほら、頑張って起きて、』

「…、う゛〜、……名前さん、」

『ん?』




ジュンくんは瞳を開ける事無く、自分が眠っている隣をポンポンと弱い力で叩く



眠るつもりは無いけど隣に寝転がりジュンくんを呼ぶ


『なに?ジュンくん』

「ん゛〜、」




ジュンくんは抱き枕のように腕と足を絡めて私を抱きしめる




『ジュンくん、まだ起きない?』

「…ん、」




ジュンくんはまだ眠いのか私の頭を胸元に押し付けるように手を強める



『…行く前にジュンくんとデートしてから行きたいんだけどな〜』

「…」




わざと甘えたような声を出してそう言うとジュンくんの腕がピクリと揺れた




『朝ごはん一緒に食べに行きたいな〜』

「……」

『ジュンくん』





最後に名前を呼ぶとジュンくんは腕を緩め、ムクリと起き上がったのを見て私も上体を起こす



『起きれる?』

「…デート、行くんでしょ、」

『うん、ジュンくんとデート行きたいな』

「…準備、する」



寝癖のついた髪を撫でるとジュンくんは寝起きで掠れた声を出しながら私を抱きしめた



「…起きますか、」

『うん、起きよう』



ジュンくんはのそりと立ち上がり、大きな欠伸をしながら洗面台に入っていった





*****




『…やだジュンくん、……かっこよすぎ』

「……オレの心情は微妙ですけどね」




大人気アイドルのジュンくんが素顔のままで授業参観に行く訳にも行かず、黒い髪のウィッグとメガネをかけていて、いつものワイルドな感じでは無く、真逆のインテリ系に変貌していた



『かっこいい…、』

「…名前さんてインテリ系好きですよね」

『…うん』



ジュンくんは少し不貞腐れた様な顔をしながらも私の手を取って指を絡めた




朝食という名のデートに行って、時間が過ぎるのが早くて、もう授業参観の時間になって2人で教室を目指す



私たちが入ってきた事に気づいて、嬉しそうに顔を緩める


『…可愛い』

「意外と親来てるんスね」

『ジュンくん今インテリ系なんだから口調に気をつけて』

「意外に親御さんが来てるんだね?」

『…キュンと来た』

「……」



ジュンくんはジトリと私を見ると、弱い力で私の額を人差し指で弾いた




授業が始まって、真面目に授業を受ける我が子を見つめる
流石はジュンくんの息子というべきか、発言する度に女の子が頬を染めていた



「じゃあ次の問題は……、漣くん」

「はい」




『……』

「…」




授業を見守っていると不意に手が包まれる

ゆっくりと見上げるとジュンくんは真っ直ぐと前を見つめていた


『…ジュンくん?』



周りに他の子の親御さんがいるからすごく小さな声でジュンくんを呼ぶ




「…なんていうか、良いですね、こういうの」

『…え?』

「家族みたいだなって、」





ジュンくんの瞳は薄らと膜が張っているような気がして、私はぎゅっと手を握り返す





『何言ってんの。家族なんだよ』

「……そっか、」





ジュンくんは少し笑って、指を絡めた







******





「というわけで3人で手でも繋いで帰りましょうかね」

「はぁ!?なんでそうなるんだよ!」

『まぁまぁ。たまにはいいじゃない』

「親と手繋いで帰るなんて恥ずかしいって!」

「よそはよそ、うちはうち」

「っ、かーさんからも言ってくれよ!」

『ちゃんと人目が少ない道を行くから。ね?今日だけ』

「……」

「オレの可愛い奥さんからのお願いっスよ〜?」

「わかったよ!!手を繋げばいいんだろ!かーさんの隣は俺だから!!」

「はい、却下〜」

「ワガママ言うなよ!バカ親父!!」

「名前さんの隣はオレって決まってるんスよ〜」





言い争っている2人の手を取り、歩き出す




2人は私の手をちゃんと握り返してくれて、その温かさに心が暖かくなる



『愛されちゃって困るな〜』




私が子供のように両手を振ると、





「子供みたい…」

「そんな所も可愛いですけどね〜」






呆れたように笑ってくれる




『2人とも大好きだよ』


「おれも、…すきだよ、」

「オレは愛してますよ」

「なんでマウント取ってくるんだよ!」

「本当のことなんで〜」

「大人気無ぇ!」

「ありがとうございます」

「褒めて無ぇ!!」




私にとっては、本当に幸せすぎる三角関係だ






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