またたきの越




「夏油さんが?」

『……多分、正確には夏油傑の中にいる別の誰か、だと思います』

「そうダ。今、渋谷駅構内は正しく伏魔殿」





説明を始めたメカ丸の話を聞いていると伏黒くんから視線を感じて顔を上げると不機嫌そうな顔をされてしまった。




『どうかした?』

「…なんで苗字が夏油傑に詳しいんだよ」

『……………えへっ』

「えへっじゃねぇ」





伏黒くんの片手で両頬を抑えられると七海さんに睨まれた。私のせいじゃないのに。





1級わたしでしか通らない要請がいくつかある。外に出て伊地知君とそれら全てを済ませて来ます。4人にはその間に術師を入れない帳≠解いてほしい。……猪野君」





七海さんに名前を呼ばれて降りてきた猪野さんは服装も真っ黒なのに帽子まで真っ黒だった。ちょっと怖い。




「3人を頼みます」

「…はい!」






猪野さんは小学生ばりのいい返事をすると黙ってしまった。伏黒くんの制服をちょいちょいと引っ張り耳打ちをする。




『猪野さんどうしたの?』

「知らね」

「猪野さん?」

「オマエらぁ!」




猪野さんは急に大声を出すと仕切る様に説明を始めた。まるでクラスの学級委員長みたいだ。あのちょっと鬱陶しがられるやつ。





「五条家は五条悟のワンマンチーム!五条サンが利かせていた融通(ワガママ)で救われた術師が数多くいる!虎杖、苗字オマエらもその1人なんじゃないか?」

「ッスね!」

『不本意ながら』

「軽いし冷たいな」






そのまま猪野さんは五条先生がいなくなった最悪なパターンの話をすると七海さんが戻る前に帳をブッ壊すと言った。





「五条悟を助けるぞ!!」






そして私達は帳の前に移動して、一番打撃力のある虎杖くんが殴ってみたけどダメだった。





「ダメだ。ビクともしねぇ」

「ま…、まぁまぁの威力だな」

「相当強固な帳≠ナすね。どこか脆い所を探して一瞬でもいいから穴をあけないと」

『最低1人は入りたいね』

「中に入らないことには始まらない」

「えっ、なんで?」

「なんでって…、いいかこれは術師を入れない帳=Bつまりバリアなんだよ。バリアってのは自分を守る…。囲うもんだろ?こういう場合、原則として帳≠降ろしてる奴は帳≠フ中にいるんだよ」






猪野さんの答えに虎杖くんが言葉を返すと猪野さんはコロンブスの卵と言った。すると虎杖くんは不思議そうにはてなマークを浮かべていたから短めに説明を加えた。





『コロンブスの卵っいうのは、誰にできることでも最初に実行し成功するのは難しいって事だよ』

「へぇ!苗字博識!」


『たまたま知ってただけだけどね』

「その理屈なら帳≠フ基はかなり目立つ所にあるんじゃないですか?」

「より見つかるリスクを抱えて更に強度を上げるってわけか」

「目立つ…場所…」





虎杖くんの独り言に空を見上げると、一際高いビルが目に入った。渋谷Cタワーだ。




『基本ツーマンセルがいいね。4人だし。相方がいてくれた方が安心する』

「なら俺は苗字と」

「駄目に決まってんだろ。この場合伏黒と虎杖。俺と苗字だ」

「は?なんでですか?」

「俺は虎杖のスピードについていけな、…俺は合わせるより合わせてもらった方がやり易いからな!」

「…………」

『ふ、伏黒くん、任務だから…』





舌打ちをする伏黒くんを宥めると、任務という事は分かっている伏黒くんは鵺を出した。




「俺と苗字と虎杖で屋上に奇襲をかける。これだけ目立つ所にいるってことは相手は複数人と考えた方がいい。2人の場合、地上で待機している伏黒の方へと落とす。4人以上の場合、その場の臨機応変だ!そして呪詛師より優先すべきは結界術の破壊だ!」

『………それは、作戦無しというのでは?』

「よし!行くぞ!」





猪野さんの声に鵺に飛び乗り屋上に降りて虎杖くんと鵺の間に作られたワイヤーを使って呪詛師をひとり落とす。私は猪野さんと屋上に残ってお婆さんと男の人の前に立つ。






「孫よ」

「うん。分かってるよ婆ちゃん」

「カワイイ後輩もできたことだし、ここいらで活躍してボチボチ俺も一級術師になっちゃうぞ」

『……………』






助けて伏黒くん。完全に見た目犯罪者が私の相方だったみたいです。




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