リクエスト消化 | ナノ

五条視点






つたない魂の戯論 辺りの五条悟視点です。かっこいい五条悟はいません。






任務終わりに硝子の元へと向かったけどアイツは居なかった。暇さえあればここに居るくせになんで居ないんだ。




「硝子〜」

「私だって暇じゃないんだけど」

「僕だって暇じゃないよ」

「なら帰れば?」

「うっわ冷たっ」





冷たい言い方に心が冷えた。僕の周り冷たい人多くない?七海とか七海とか七海とか。僕の渾身のちんこも笑ってくれなかったし。



「アンタあんまり名前にちょっかいかけるなよ。うざがられてるよ」

「だって面白いじゃん」

「後輩が可愛いのは分かるけど、あの子もいい歳なんだから遊ぶだけなら他を当たってやりなよ」

「えー?」

「それとも名前の事本気なの?」





硝子の言葉に一瞬、頭が真っ白になった。なんでバレてんだ。いや、この言い方だと確証は無いはずだ。何がなんでも硝子にバレる訳にはいかない。コイツは確実に情報を流す。




「僕が名前に本気ぃ?」

「違うのか?」

「本気なわけ無いでしょ。僕のタイプがあんなちんちくりんなわけないでしょ〜。遊びだよ、ただの遊び〜。暇つぶしみたいなもん」

「あっそ」





思ったより早口な自分に冷や汗が流れる。あれ、僕ってこんなに嘘下手くそだったっけ?バレたら死ぬ。恥ずかしさで死ぬ。というかこの関係が終わる。名前は僕の事が嫌いだ。僕が名前に惚れてるなんて知られたらきっと姿を消す。それだけは嫌だ。



∴∴




「やっほー!」




ピッキングも慣れたものだ。というか鍵付けても意味無いのになぁ。僕に出来ないことなんてないからさ。





『………』

「あれ?テンション低くない?」




元気が無い名前の顔を覗き込むと低い声で返される。……僕何かした?全然覚えないんだけど。





「おーい。聞いてる?」

『……近い』

「ありゃ。本格的にご機嫌ななめ?」




本格的に機嫌が悪い名前に首を傾げる。今日の仕事で何かあったのかもしれない。仕方ない。今日は僕が甘やかしてあげよう。それに別にヤりたくて来てるわけじゃない。でも今の関係は体を重ねることで成り立っているから抱いてる。勿論抱けることは嬉しいけど、本心を言うなら心が欲しい。



「仕方ないから今日はヤらないであげるよ。機嫌悪いみたいだし」

『…………………さっさと帰って』




棘があり過ぎる言い方にピクリと口角が揺れる。何だよその言い方。




「なに、その言い方」

『……ヤりたいだけなら他の女の所いけば?そのご自慢の顔なら女に困らないでしょ』

「……こっちが気を使ってやったら偉そうにすんなよ」




ヤりたいだけならオマエみたいな奴選ぶわけねぇだろ。ただこの距離を保つためにはこの方法しかないからだ。





『いっつも自慢してたじゃん。女が寄ってきて大変だって。馬鹿みたいに』

「………あ?」

『だったらさっさとその女のところに行けば?私に構ってる暇ないんじゃない?』

「……調子乗んなよ」





もしかしたらオマエが嫉妬すんじゃねぇかと思って言ってたんだよ。そんな事有り得ないって分かってても。




『そもそも私はアンタが大っ嫌いだし。勝手に人の部屋入ってくんなよ。そんなんだからいっつも傑先輩に怒られるんだよ』

「おい、」

『っていうか私が好きだったのは傑先輩だし。抱かれるなら傑先輩が、』






その言葉に頭が冷えた。ふざけんな。傑よりも俺の方がオマエの事分かってんだろうが。俺の方がオマエを見てんだろうが。




「……オマエ、本当にうざい」

『ならさっさと出て行ったらどうですか。私は一回だって居てくれなんて言ってませんけど』

「………」





そんな事わかってる。一度だってオマエは俺を求めた事はない。弱ってるオマエに漬け込んだだけ。セコいと分かっていながら、それしか手が無かった。何が傑先輩だ。傑はオマエなんかに興味ねぇよ。オマエみたいなブスで雑魚な奴なんか。




「…なんか冷めたわ。オマエもういいや」




俺がそう言うと少しだけ名前の顔は歪んだ様に見えた。それも俺の都合のいい幻覚だ。




∴∴




報告書を書く気にもなれず、椅子に寄りかかって天井を仰ぐ。あー、つまんねぇ。



『………五条悟、』

「…………何か用?見ての通り僕忙しいんだけど」





ボーッとし過ぎて反応が遅れた。というかなんで名前が居るわけ。顔見たくねぇんだけど。




『……話があるんだけど』

「へぇー。僕は無いよ」

『私はあんの』






二度と顔を見せるな、とか言われたら目隠しとマスクをするしかなくなる。それなら顔を見せた事にはならないでしょ。




『………私のお爺ちゃんとお婆ちゃんってさ、呪詛師だったんでしょ』

「はァ?いつの話してんの」

『村の人達を生贄に呪霊を復活させようとしてたんでしょ』

「……もしそれが本当だとして、今する話?」

『確認の為』

「何のだよ」





思ってもみなかった内容に素の声が出た。というかそんな昔のこと覚えてない。僕がこなしてきた任務の数分かってんの。




「いつまで居んの?僕忙しいって言ったよね?」

『……』

「オマエみたいな奴と違って僕は多忙なの。邪魔しないでくれる?」





さっさと帰って欲しい。僕の心臓が嫌な音を立ててる。これ以上嫌われたら僕は確実に泣く。三十路が泣く所なんて誰も見たくないでしょ。僕の高いプライドが崩れそう。




『…………好き、です、』

「………………は?」

『五条悟が、好き、』






すき?すきってなんだ。隙?漉き?鋤?どのすきだ。というか今の流れで使われるすきってどういう意味のすきだ。隙があれば殺すぞってこと?待て、意味が分からない。すきってなんだよ。どのすきだよ。辞書持ってこいよ。さもなくば勝手に解釈するぞ。スキップし始めるぞ。クララと草原走り抜けるぞ。いいのか。




「……なに。オマエ俺の事好きなの?」

『………認めたくない、けど、』

「へぇー」





Loveの方かよ。クソが。おんじとハイジ追いかけてフランクフルトまで行くぞ。いいのか。列車と並走するぞ。つか汗がヤバい。手汗と背中の汗と額汗。目隠し邪魔くせぇ。暑い。ここはかっこよくクールに決めるべきだ。傑が言ってた。告白されて吃る男はモテないって。




「そういうのなんて言うか知ってる?身の程知らずって言うんだよ」

『………』

「数回寝ただけで勘違いすんなよ」





はい。俺の初恋終わったー。





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