リクエスト消化 | ナノ

虎杖悠仁視点






うつくしさで翳す正当性 からの虎杖視点です




「ふんふーん、ふんふふーん」




コンビニに飲み物を買いに行って自分の部屋を目指していると、フラフラ歩いている伏黒を見つけた。背中をポンっと叩いて挨拶をすると倒れそうになるから慌てて体を支えた。





「うおっ!?そんなに強く叩いた!?」

「……………」

「……伏黒?」





立たせて顔を覗き込むと伏黒の瞳は虚ろで顔は真っ青だった。風邪ひいてると言われても納得できるほど顔色が悪かった。





「伏黒?大丈夫か?家入さんの所行く?」

「………いい、」

「でも顔色悪いよ?」

「平気だ…、」




そう言って伏黒はフラフラしながら部屋に入って行った。でも熱がある感じでもなかったし、もしかしたら寝不足なのかもしれない。明日も調子が悪そうなら声かけようと決めて俺も部屋に入った。




『おはよう』

「今日は少し遅いのね」

『うん、ちょっとコンビニ寄ってて』

「ふーん」





朝、教室に入って来た苗字を見て伏黒は苗字と何かあったんだなって思った。基本的に苗字は5分前には教室に居るし、伏黒と目を合わせて挨拶するはずなのに、今日はそれがなかった。でもだからって何があったのかは、俺には分からなかった。



「なぁ、苗字」

『ん?なに?』

「伏黒と何かあった?」





体術で苗字と組むことになって伏黒の事で聞いてみると苗字は少し首を傾げていた。





『なんで?』

「俺が昨日コンビニから帰った時にさ、ちょうど伏黒が部屋に入る時にあったんだけど、なんか放心状態っつーか、元気が無いって言うか…。今日も様子変だったし」

『……そっか』

「今だって釘崎にぶん殴られてるし」

『…それは、止めた方がいいんじゃないかな…?』





チラリと伏黒を見ると珍しく釘崎に殴られていた。伏黒は体術苦手じゃないのに。心ここに在らずって感じだ。五条先生に注意されて伏黒は去って行ってしまった。





「虎杖」

「ん?釘崎どったの?」

「名前の様子がおかしいの」

「伏黒もおかしいんだよなぁ」

「……飯行くわよ」

「え?なんで?」

「事情聴取」





釘崎の言葉に納得して体術終わり苗字に声をかけた。そしたら苗字は苦笑を浮かべて誘いを断ってしまった。




『誘ってくれてありがとう。でも部屋でやりたいことがあるから』

「そっか〜…」

「……まぁそれなら仕方ないわね」





それ以上無理強いさせる訳にもいかなくて俺と釘崎は苗字と見送ってラーメン屋に入って麺を啜った。





「何があったんだろうな」

「アンタ伏黒から聞いてないの」

「いや何も」

「……なんで、私達に何も言わないのよ」

「ふたりとも頼るって事に慣れてなさそうだもんなぁ」

「本当に面倒臭いんだから」




そう言った釘崎の声は何となく寂しそうな気がした。




∴∴





「…伏黒ー!」




最近元気が無い伏黒が気になって部屋の扉を叩くと少ししてから部屋の扉が開かれた。




「…虎杖」

「よっ!」

「………何か用か」

「最近元気ないみたいだからさ。話だけでも聞けたらと思って」

「…………」

「話すだけでも楽になったりするだろ?」




伏黒の部屋は真っ暗で、顔色も悪くて少し痩せたようだった。目の下にはクマもあるし、今にも倒れそうだ。





「………いや、大丈夫だ」

「………最近、飯食ってる?」

「腹が、減らねぇ」

「でも食わねぇと体力持たねぇぞ」

「……なんか、飯が美味くねぇ」

「……美味く?」

「味がよく分かんねぇ」




伏黒は疲れたような瞳でそう言うと目を細めた。その姿があまりにも痛々しすぎて心臓の辺りが少し痛んだ。



∴∴




「ん?…あ、五条先生」





五条先生の奢りで飯に行ったのに俺と伏黒は任務になってしまった。呪霊を祓って合流出来るかなー、なんて思いながら歩いていると五条先生からメールが入った。





プランAZ開始





それを見て俺はフンッと鼻を鳴らして伏黒に声をかけた。




「伏黒!俺腹痛い!」

「は?便所行けよ」

「病院!病院じゃないと駄目な感じ!」

「………」




伏黒は眉を寄せてどこか信用してないようだったけど、そんな伏黒の手を引いて病院を目指した。




「伏黒!ちょっと俺の代わりに寝ててくんない!?」

「はァ?」

「腹痛くて寝てられないから代わりに寝て!」

「意味分かんねぇよ!」




高専に理解のある病院を使って伏黒をベッドに寝かせる。苗字を騙すみたいでちょっと嫌だけど、仕方ない!



「おい!意味分かんねぇって!」

「ちゃんと寝れてないんだろ!少し経ったらちゃんと起こすから!」

「意味分かんねぇ…」

「はい!これ保冷剤!」

「冷てぇ…!」





伏黒の頬に保冷剤を押し付けてキンキンに冷えた頃に回収して病室を出る。




「……上手くいくといいなぁ」




その後、病院を走っている苗字とすれ違ったけど相当焦っていたのか俺には気付いてない様だった。…本当、なんで別れたんだよ…。



「早く仲直りしろよー」




苗字の後ろ姿に小さく呟く。あれだけ想い合ってんだから、きっと大丈夫だ。





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