リクエスト消化 | ナノ

前神様兼父親が伏黒甚爾だと分かった話






∵原作との矛盾が生まれるかもしれません。何でもありの時間軸です。






「名前にお土産だよ〜!」

『…いえ。大丈夫です。要らないです』

「えっ!?お土産なのに!?断られた!」





任務帰りの五条先生がハイテンションに話しかけて来たから嫌な予感がして丁重にお断りをした。だと言うのに五条先生は分厚い本を私の頬に押し付けた。






「ほらほら〜!欲しいでしょー!?欲しいって言いなよ!」

『要らない!要らないです!!痛いっ!』





本の角が刺さって本当に痛い。痛みで涙が出そうになった時、バシンッと大きな音がして本が床に落ちた。すぐ後ろを振り返ると恵くんが右手を振り下ろしていた。





「やべっ、セコムが来ちゃった」

「……何してんですかアンタ」

「だって折角、僕が良いもの持ってきてあげたのに名前がさぁ〜」

「大丈夫か?」

『平気…、跡残ってない?』

「残ってたら五条先生を召してやるから心配すんな」

「…え?召すって、…天に?」





恵くんは私の頬を撫でると、それを見た五条先生はブーブー言いながら本を拾った。





「いいもーん!僕だけで見るから!」

「勝手にどうぞ」

「えー?いいのー?本当にー?」

『執拗いですね』

「恵のメモリー僕だけで見ていいのかな〜?」

「は?………もしかしてそれ、」






五条先生は私達の前に本を翳すと、ドッキリ大成功とでも言わんばかりに楽しそうに言った。





「恵のアルバムー!!」

「何勝手に…、」

『見ます!見たいです!見せてください!』






右手をピシッと上げてそう言うと五条先生は胸を張って、憎らしげに体を左右に揺らした。






「えー?見たい〜?」

『見たいです!』

「でもさっき要らないって言ってたしな〜?」

『数々の御無礼お許しください!』

「人のアルバム如きで…」

「じゃあ恵は名前のアルバムがあったら見なくていいの?」

「見るに決まってるでしょ。馬鹿ですか」

「え、即答だし辛辣…」






無事に五条先生からお許しを貰って恵くんと一緒にアルバムを見る事になった。





『…きゃ、』

「………」

『きゃわいぃい!!』

「うるせぇ」





1ページ目から恵くんの可愛さが爆発だ。今も可愛いしかっこいいけど、これは反則だ。しかも赤ちゃんの時からのアルバム!五条先生は天才だ。





「こんな写真どこから…」

『…可愛い、…可愛すぎる。天使かな?』

「人間だろ」






この写真、いくらで貰えるかな。写真というかアルバム。良い値で買うんだけど。





『恵くん、可愛い…、』

「普通だろ。しかも赤ん坊に可愛いも何も…」

『小学生の時、恵くん半袖短パンなんだねぇ〜…、可愛い…』

「可愛いの基準がよく分かんねぇ」





アルバムを眺め続けて、悲しい事に最後の1ページになってしまった。恵くんは飽きたのかスマホをいじっていた。





『…………あれ、』

「どうかしたか」






最後のページには写真が無く、1枚の封筒が入っていた。悪いと思いながら中を見ると、中に入っていたのは、写真だった。その写真に写っていたのは、






『…………甚爾さん?』

「は?誰だよ」






名前を呼ぶと、恵くんは低く唸った。私の手から写真をパシッと奪い取り睨んで、目を細めた。





「誰だ?コイツ」

『……甚爾さん、って、』






そういえば甚爾さんの苗字は何だったか。赤ん坊を抱えた女性の隣に座る甚爾さんの表情は見たことが無いほど優しいものだった。でも、その赤ん坊はきっと、





『………甚爾、』

「さっきからうるせぇな。誰だよ」

『…甚爾、……伏黒、…伏黒甚爾?』

「はァ?」






確か、甚爾さんの苗字は伏黒だ。…あれ?恵くんは?恵くんの苗字は何だっけ。




『…ふ、伏黒くん、』

「…………………」

『…………………』





恵くんも何が言いたいのか分かったように眉を寄せていた。そして彼も戸惑っているのか謎の言葉を口にした。





「……顔だったんだな」

『……へ?』

「オマエは神様に似てたから俺の事好きになったんだな。そうなんだな」

『酷い言いがかり!!』

「名前は俺の顔と体だけが目的だったのか」






恵くんが珍しくテンパっている。真顔だけど冷や汗が凄い。にしても酷い言いがかりだ。





『神様のお父さんは神様だった?…神様は神様の家族で、神様で…?』

「意味わかんねぇよ」





どうやら私も気が動転しているらしい。目が回りそうだ。というか回ってる。どうしたらいいんだろう。





「…とりあえずコイツ殴ってくればいいのか」

『違うね!?』




その前に甚爾さんは既に亡くなってる。でも恵くんはそれを知らないのかもしれない。どうしたものかと頭を必死に回す。とりあえず、






『……かっこいい、』

「………殺す」

『止めて!?』






カメラを見てはないけれど、確かに甚爾さんは笑っていた。幸せそうに。思わず出てしまった言葉に恵くんは殺気を放ってそう言った。






『でっ、でもっ、今は恵くん一筋なわけで…!』

「当たり前だろ。それでやっぱりコイツの方がいいなんて言い出したら本気で閉じ込めるからな」

『ヒェッ〜…』





据わった瞳でそう言う恵くんに心臓がギュッてした。もちろん恐怖で。





「……まぁ、過去の事だし、コイツはどこにいるかも生きてるかも分からねぇから、仕方ねぇから許す。…気持ちが浮つかない限りは」

『…き、肝に銘じておきます、』




それにしても、血には抗えないとはよく言ったものだ。私もあの女と同じだったわけだ。まぁ、甚爾さんに惚れていた時点で分かってはいたけど…。伏黒の血筋は強いなぁ…。




「……なんだよ」

『やっぱり少し似てるなって』

「…………」

『顔じゃない!好きになったの顔じゃないから!』





恵くんと甚爾さんの横顔はやはり少しだけ似ていた。恵くんの方が少し幼い感じだ。恵くんも大人になったら甚爾さんのようにワイルドになったりするんだろうか。それはそれでかっこいいだろうなぁ…。




∵∵∵






『……どうしてこうなった?』





任務帰りに高専へと帰ると、何故か恵くんと甚爾さんが一緒に居た。




「名前」

『な、なに?恵くん…』

「今すぐ部屋に戻れ」





ドスの効いた声でそう言った恵くんに肩をビクつかせると、ギッと恵くんが私を睨んだ。





「コイツを見るな。声を聞くな。視界に入れるな。今すぐ部屋に戻れ。今日一日出てくるな」

『それは、流石に…』

「つーかここどこだよ。何で俺がガキに囲まれねぇといけねぇんだ」






耳を小指で掻きながら面倒臭そうに言った甚爾さんに視線を向けると、ペチンッと音を立てて目が塞がれた。ちょっと痛かった。





『恵くん、』

「見るな」

『いや、あの…』

「五感を遮断しろ」

『無理難題…!』




恵くんの手を退かそうとしても力が入れられて無理だった。甚爾さんは興味が無いのかどうでも良さそうに言葉を発した。





「どうやって帰んだよ」

「死ねばいいんじゃねぇの」

「可愛くねぇな」

「別に可愛く思われたくねぇ」





ピリついている。以前よりも険悪な雰囲気だ。これはどうするべきかと冷や汗を流しながら考える。





「しかもまたそのガキかよ。どんだけ俺のこと好きなんだよ。地獄から呼び出すんじゃねぇよ」

『え、今回は、』

「おい近寄るな。それにオマエの事なんか何とも思ってねぇよ。クソ親父」

「息子ならもうちっと可愛く出来ねぇのか」

『呼び出したの、…私じゃないです…』





小さく呟いた声はふたりに届かなかった。きっと恵くんが呪術にでもかかっちゃったのかな…。というかいい加減、手を離して欲しい…。どうにか頑張って恵くんの手のひらを退かすと甚爾さんがニヤリと笑った。





「俺の顔に似て良かったな。おかげでこのガキとヤれたんだろ?」

「違ぇよ。一緒にすんな」

「俺に似たならちんこもデカかったか?」

「おいやめろ。」

『え、…え、』




私の顔を覗き込んでそう言った甚爾さんになんて答えるべきか迷う。下世話な人だ。でもかっこいい。





「でもオマエひょろっちいからな。大丈夫か?コイツので満足出来てんのか?」

『いや、あの…、』

「下半身が本体のテメェと一緒にすんな」

「男なんてみんな下半身が本体なんだよ。さてはムッツリだろ。オマエ」






ふたりに挟まれて慌てることしか出来ない。これが本当に親子の会話なのだろうか。少し下品過ぎないか…。





「タッパだけでかくなりやがって。肉付けろよ」

「うるせぇな。関係ねぇだろ」

「反抗期か?はー、若いねぇ」

「………」





遂に恵くんが無言になってしまった。怖い。青筋が浮かびまくってる。そんな恵くんに声をかけようとした時、肩が抱かれて唇のすぐ端に温もりを感じて目を見開く。するとしてやったりと顔を歪めた甚爾さんと視線が交わった。





『………へ、』

「殺す…!!」

「出来ねぇくせに威張んなって」





唇の端を抑えながらボーッと喧嘩を始める2人を眺める。次第に意識がハッキリして、顔が一気に熱くなった。




『………ッ!?』






ヘナヘナと床に座り込んで必死に手のひらで風を送る。でも手のひらでは大した風は来ず、全身から汗が吹き出る。





「二度と戻って来れねぇ様にしてやる!」

「オマエじゃ無理だな」






少し遠くで本気の殺し合いを始めている恵くんと甚爾さんを見て、既視感を覚えた。





『………あ、』







甚爾さんの顔はあの写真の様に笑っていた。傍から見たら、分からないほど、小さく。けれどずっと彼を追ってきた私にはわかる。今の彼の顔は紛れもない“父親”だった。





『……親子揃って、不器用だなぁ』






言葉を零して笑うと、恵くんがギュンッと振り返って今までに見た事のない程、恐ろしい顔で言った。





「コイツ殺したらオマエだからな」

『………………』






お願いします。神様。どうかお救い下さい。





2021.05.08





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