リクエスト消化 | ナノ

他の女登場andデレる夢主






「デート行こ!」

『パス』

「パスをパス」

『更にパス』

「更にパスを更にパス」





休日に部屋にダラダラしていると五条悟が現れて意味のわからないことを言い始めた。私は見ていたドラマのCMを飛ばすと、そのリモコンが五条悟に奪われて眉を寄せる。




「デート!行こう!」

『……面倒臭いから嫌だ』

「ほら!準備して!」

『オマエ言葉通じねぇの?』

「さーてどこ行こっかなぁー!」

『やっぱりオマエ宇宙人だろ』





私の言葉を無視して勝手に私のクローゼットを開けてポイポイ服を選ぶ五条悟にムカついた。しかもセンスがいいのが余計にムカつく。




「あ!プリクラでも撮る!?」

『撮らない。何歳だと思ってんだ』





五条悟に無理矢理連れ出されて竹下通りに来た私は右手を拘束されてる。ガッシリと。溜まってた映画見たかったのに。





「じゃあクレープ?」

『オマエの奢りな』

「勿論!」





そして五条悟はJKでも頼まない様な甘すぎるクレープを頼むと美味しそうに食べていた。私は普通のにした。胃もたれが心配だし。





「美味っ!」

『…久々に食べたけど美味しいな』

「名前はどこか行きたい場所ある?」

『んー…、そういえばファンデ無くなりそうだったかも』

「なら買いに行こっか」




そう言って私の手を引く五条悟の後をついて行きながら辺りを見渡していると、ふと2人組の内の一人の女性と目が合った。




「あー!悟じゃーん!」

「そういえば名前グロス欲しいって言ってなかった?」

『…え?』




目が合った女性は駆け寄って五条悟の前で名前を呼んだけど、当の本人は私の方を見てだらしなく頬を緩ませていた。





「ちょっと悟!聞いてる!?」

「僕がプレゼントするから色は僕が選んでいい?」

『いや、あの…、』

「なんで無視するの!?悟ってば!」





遂に煮えを切らした女性は五条悟の腕を掴む。すると五条悟はバッと軽く払って抑揚のない声で言った。





「駅ならここ真っ直ぐです」

「…は?」

「あ、そうだ。アイシャドウも買おうよ。勿論僕からのプレゼント」

『…え?』

「アイシャドウは嫌?」

『いやそうじゃなくて…』





コイツ本当に人間か?どう見ても知り合いなのにここまでスルーできるか?目ん玉ついてんのか? 流石の私も驚きだよ。この女の人と同じ顔しちゃってるよ。




「ねぇ!悟!」

『……よ、呼んでるけど、』

「………はぁぁ〜…、…………なに」





五条悟は如何にも鬱陶しそうに顔を歪めて半分白目を向き、ガラ悪く舌を出しながら低く聞き返していた。





「ねぇ、この人誰?」

「私が16の時に言ってた元カレ」

「…あぁ!イケメンだって言ってた?まじイケメンだね!」





2人組の女性は話が盛り上がっているのか楽しそうに笑いあっていた。でも多分彼女ではない。このクズは特定の女性を作ってないはずだから。チラリと五条悟を見上げると、本人は首を傾げていた。




「……………………誰だっけ」

「…はァ!?」





ほらね。コイツまじでクズだから。五条悟が同じ女の人を連れているところなんて見た事ない。




「どうでもいいけどさ、僕忙しいんだよね。見て分からない?知らない人に構ってる暇ないの」

「忙しいって…、…え?なに?この女と付き合ってるの?」

「そうだけど。デートしてるの分からない?」

「………この女と?」





女性は私を睨むと唇を噛んでいた。まぁ確かにコイツ顔だけはいいからな。顔だけは。





「…ねぇ、悟、また私と遊ぼうよ。いいでしょ?」

「はァ?」





女性は甘えた声を出しながら上目遣いで五条悟を見上げていた。その隣にいた友達は五条悟の顔に騙されているのか頬を赤らめていた。





「今私フリーなんだぁ…、ね?いいでしょ?」

「嫌だよ絶対」

「え〜?なんでぇ?」

「彼女いるし」

「……こんなブスに本気なの?」

「………あ?」




確かにこの人より可愛い自信はない。美人にブスと言われるなら仕方ない。受け入れよう。自分で美人だとは思っていないし。





「……オマエ今なんつった?」

「は?だからこのブスに本気なのかって」

「……コイツをブスって言っていいのは俺だけなんだよ」

『ん〜?』





期待していたわけじゃないけど別方向から射撃されたよ?仲間だと思ってた奴がスパイで背中をぶち抜いてきたよ?敵は本能寺にありだよ?





「俺以外がコイツの事ブスとか言ってんじゃねぇよ。コイツいじめていいの俺だけなんだけど」

『オマエにも許可した覚えはないんだが?』

「だって本当の事じゃん!私の方が可愛いし胸も大きいし!」

「当たり前だろ。名前はブスでスタイルも良くねぇんだから」

『よーし。今からオマエの事殺すからな〜』





コイツの言う通りだけどムカつく。ナイフを持っていないことが悔やまれる。大きく舌打ちをすると女性は胸を押し付けるように五条悟の腕に巻きついた。





「……ねぇ、最後でいいから、」

「…………」






見た。私は見た。このクソ男一瞬、押し付けられた胸を見てた。信じられない。まじクソ。下半身本体クズ野郎。





『………………』






一応とはいえ私の彼氏なのに。ムカつく。他の女にデレデレしやがって。彼女は私だろうが。




『…………悟』

「…へ?」





羞恥を噛み殺して袖を掴んで五条悟を見上げる。突然の行動に五条悟は驚いている様だった。




『…私とデートだって、言ったでしょ』

「え、……名前?」

『私が彼女なのに…、』






拗ねた様な声が出て少し恥ずかしくなって視線を下げる。それでも羞恥に耐えきれずに走り出して高専を目指し、硝子さんの元へとたどり着く。





「…え、なに?なんで息切れるほどダッシュしてんの?」

『硝子さん!飲みに行きましょう!今すぐ!』

「は?」




驚く硝子さんの腕を取っていつもの居酒屋に入って1杯目からテキーラを頼んで一気に流し込む。その間もスマホは震え続けていたけど気のせいだと言い聞かせて無視した。





「アンタ飲みすぎ。大丈夫?」

『ぜーんぜんっ、大丈夫ですよ〜』

「今回は何?またあのバカがなにかしたの?」

『んー…、なんだっけ…、』




まだ大して飲んでいないのに何故か頭がふわふわしてきた。でも全然飲んでないから酔ってない。なんか恥ずかしい思いをした気がするけど、多分気のせいだ。






「あ、噂のバカ」

「………すげぇ探したんだけど」

『あれ…?五条悟?』

「あれじゃねぇんだけど。置いて行きやがって」





おでこに痛みが走って後ろに倒れそうになると、背中に腕が回されて支えられた。酔ってないのに体が言うこと聞かない。





「は?もうこんなに飲んでんの?まだそんなに時間経ってないはずなんだけど」

「空きっ腹の一発目でテキーラいったからね」

「は?」

『もう一杯テキーラお願いします!』




右手をあげてそう言うと五条悟に腕を取られて下ろされた。目を細めて睨むと呆れたように息を吐かれた。




「とりあえずなにか食えって」

『なんで五条悟が居るの…?』

「オマエが逃げるからだろ」

『んー…?』





眠くなってきた頭で必死に頭を動かす。もう何でもいっか。考える事を放棄して五条悟の首に腕を回して抱きつくと少し汗の匂いがした。でも意外と嫌いじゃない。






「………は?」

『……この匂い好き』

「……………」





そのまま体から力を抜いて胸元に耳を当てるとバクバクと大きな音が聞こえた。膝の上に座って動かない五条悟の手を取って握って遊ぶ。





『ふふっ…、手おっきい』

「…………」

『指長いし、肌白いねぇ?』

「大丈夫か?息はしろよ」

「…………情報が完結しない…」





なんか気分が良くて五条悟の手のひらを頬に当てて瞼を閉じる。すると手がピクリと揺れたけど気にせず頬を寄せた。





『悟、』

「えっ、あっ、なに?」

『キスしたい』

「へっ、」




変な声を上げる五条悟に首を傾げながら顔を寄せると唇が大きな手のひらで覆われる。眉を寄せながら瞼を持ち上げると真っ赤な五条悟の顔が見えた。




『なんで真っ赤なの?…お酒飲んだ?』

「……勘弁しろよ、」

「よっ、本命童貞!」

「うるせぇ!」





いつまで経ってもキスをしない五条悟にムカついて手のひらを退かして唇を重ねる。五条悟は石のように固まっていたけど私は満足して瞼を閉じて眠気に任せて意識を手放した。



∴∴






『…ん、』




心地いい揺れを感じて瞼を持ち上げるとザリザリと地面を歩く音がして顔を持ち上げる。





『………五条悟?』

「…はい、五条悟ですけど」

『私、おんぶされてる?』

「されてる」

『なんで?』

「オマエが潰れたから」

『…潰れた?』

「酒飲んで潰れただろ」





そういえば硝子さんを連れて居酒屋に行った。何も食べずにテキーラいったところまでは覚えてる。




『あの女の人は?』

「知らね。オマエが走って逃げるから慌てて追ったんだっつの」

『………胸当てられて喜んでたくせに』

「喜んでねぇよ」






嘘だ。絶対少しは喜んでた。本当ムカつく。悪かったな胸が小さくて可愛げも無くて。まだお酒が完全に抜けていないのかいつもじゃできないような事ができる気がした。だから腕に少しだけ力を込めて五条悟の肩口に額を当てる。





『……他の女に、デレデレしてんなよ…、馬鹿』

「………オマエなんなのまじで」

『私の方があの女の人より、好きだし…』

「……………俺だって、名前の事好きだし」





少し拗ねたようにそう言った五条悟に目を細めて瞼を閉じる。ゆっくり歩いてくれるおかげでまた眠気が襲ってきた。嗅ぎ慣れた香水に安心感を覚えて首元に擦り寄る。





「……勘弁しろよ、」





そんな声が聞こえた気がしたけど眠気に勝てずに段々と意識が遠くなった。






「名前〜!デート行こう!」

『……………15分待ってくれるならいいよ』

「………うん!待ってる!」





あまりにも五条悟が嬉しそうに頷くから素直になってみるのも悪くないかな、なんて思ってしまったことは、絶対に秘密だ。





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