バレるor言いたい
「そういえば苗字と伏黒って俺らが入学するより前から仲良いんだろ?」
『4月から一緒だからね!仲良いよ!』
「別に普通」
「アンタらの温度差凄いわね」
私は親友くらいのつもりなのに伏黒くんはそうでも無いみたい。ショックだよ、100メガショックだよ。
「でも確かに名前と伏黒ってバランスがいいわよね」
『バランス…?』
「陽な感じの名前と陰の感じの伏黒」
『…それはあんまり褒めてないね』
「誰が陰だ」
伏黒くんは釘崎さんを睨んでたけどあんまり彼女には効いてないみたい。凄い。釘崎さんと虎杖くんが入学してきて数日だけど伏黒くんがいじられてるのが面白くて笑っていると拗ねた様なこえがした。
「えー?僕は恵と名前より僕と名前の方がバランスも良くて最高だと思うんだけど」
「………何してるんすかアンタ」
『無音で近づくのやめてください』
突然私達の輪の中に入って来た五条先生に心臓が音を立てた。音が無くて驚きすぎて声すら出なかった。
「ほら名前も僕が近付いただけで心臓の音凄いよ?」
「驚いてんでしょうが。五条先生が急に隣に現れて」
「えー?そんなことないよねぇ?」
『伏黒くんの言う通りです』
素直に答えると五条先生は顔を寄せてくるから慌てて顔を引くと間に伏黒くんが入ってくれた。
「何しようとしてんですか」
「もー!恵は何!?勝手に名前の彼氏面やめてくれる!?名前の彼氏は、」
『あー!!私喉乾いたからジュース買ってこようかな!』
「なら僕が買ってあげる〜」
嬉しそうに私の後に続く五条先生の腕を掴み教室を出て誰もついてきてないことを確認して立ち止まり問い詰める。
『何考えてるの…!?』
「えー?なにがー?」
悟はデレデレと頬を緩ませて首を傾げていた。そんな悟を睨み上げると抱きしめられた。
『ぎゃあー!ここ学校!』
引き離す為に腕に力を入れると強く抱き締められた。そのまま顔が寄せられるから慌てて顔を逸らす。
「ねぇ〜、みんなに僕達が付き合ってること言おうよ〜」
『付き合ってないのに嘘つけない』
「はぁ!?結婚すんだから付き合ってるって言っても問題ないでしょー!?」
『結婚だって私が卒業してから考えるとしか言ってないよ…!』
「言いたいー!名前は僕のだって言いたいー!自慢したいー!」
『悟のじゃないし、言わない!』
悟は唇を尖らせると顔を背けてしまった。子供のような拗ね方に小さく溜息を吐くと悟は私の頬を抓った。
「なに大人ぶってるわけ。馬鹿のくせに」
『馬鹿のくせに…!?』
辛辣な言葉に驚いていると悟はフンッと鼻を鳴らして私の手首を掴んで教室に戻った。少し怒らせてしまったかもしれない。
∴∴
「名前ー」
『はーい?』
「僕のワイシャツ知らなーい?」
『えー?クリーニング出したままとかじゃないんですか?』
「あ、そうかも」
意外にも悟の機嫌は悪くないみたいだ。むしろ機嫌が良い様だ。まぁ機嫌がいいに越したことは無いはずだ。
「…………」
『伏黒くん?どうかした?』
「………いや、なんでもない」
『そう?』
どこか煮え切らない反応の伏黒くんに首を傾げていると頭に重みを感じて視線を上にあげる。
「そういえば恵今から任務だよ」
「……それは分かりましたけど…」
『先生重たい』
「えー?」
重たいと言っているのに更に体重をかけてくる五条先生に眉を寄せる。私の頭は肘置きじゃないんだけど…。
∴∴
「名前ー」
『私の分も残しておいてくださいね』
教室で同期のみんなと話していると五条先生に呼ばれて仕方なく鞄からチョコレートを出して渡す。自分で買ってきて欲しい。
「……」
「…………」
『…どうかした?』
伏黒くんと釘崎さんの引いたような顔に首を傾げると五条先生はチョコレートを摘んだ私の手首を掴んで自分の口に運んでしまった。
『あっ、私のチョコ…』
「これ前に僕が美味しいって言ってたやつだよね」
『ちょっと高いんですよね…』
「これくらい僕が買ってあげるよ。そういえば名前が雑誌見て行きたいって言ってたお店が駅前に出来たらしいよ」
『え…!?』
思わず顔を上げると五条先生は薄く笑いながら私の前髪を撫でた。この間五条先生の部屋で読んでいた雑誌に乗っていたパンケーキ屋さんだ。任務が無い日に絶対に行こう。
「あと雑誌部屋に置いて行かないでよ。僕読まないから」
『えー…』
「あと今日泊まるでしょ?」
『外泊届けだしてないよ?』
「それなら僕が用意するから平気だよ」
『んー…………、…ん?』
そこまで話してここが学校だったことを思い出した。冷や汗をかきながら悟を見上げるとニヤーっと口角を上げた悟が見えた。
「んー?名前はどうしたのかなー?」
『……………』
顔を引きつらせながら同期の3人に顔を向けると同情の目を向けられた。虎杖くんにもその目を向けられて少し泣きたくなった。
「まぁ、みんな知ってるわよ」
『え!?』
「五条先生のアピール露骨だったしな」
「しかもたまに苗字から五条先生と同じ匂いしてたしなぁ」
『……………』
「あーあ、僕達の関係バレちゃったねぇ?」
ニヤニヤして私の頬にキスを落とす悟に全てを悟った。この人、私がバラしたくないと言った時からバラす為に行動してたんだ。
「バレちゃったから隠れずにイチャイチャできるね?」
そう言った悟の表情は酷く楽しそうに歪んでいたのと相反して私の表情は酷く引き攣っていた。
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