リクエスト消化 | ナノ

ご都合呪術A






「うわー!苗字さんごめん!!」

『………え?』





虎杖くんの任務について行き、よし帰ろうとなった時に、凄く大きな声で謝られた。首を傾げると視界が少し揺れて足がふらついた。慌ててバランスを取ると虎杖くんが巨人化していた。




『いっ、虎杖くん!?体大丈夫!?』

「それ俺のセリフ!!苗字さん体大丈夫!?」

『え!?何も異変は無いけど…』





そう言いながら自分の手のひらを確認すると手のひらが小さかった。あれ?と思いながら体を見るとスーツのスカートが脱げ地面に落ちていた。ワイシャツとスーツのおかげで下は見えてないけど、スーツがやけに重い。





『………私もしかして、縮んだ?』

「もしかしなくても、縮んだ…」





虎杖くんの話だと、私の後ろに呪霊が迫っていたらしい。それを祓う瞬間に、呪いをかけられて縮んだそうだ。因みに呪霊は虎杖くんが祓ってくれた。





『……ごめんね、伊地知くん。迎えに来てもらって…』

「ごめんなさい…」

「いえ。近くて良かったです」

『しかもタクシーで来てもらって…。後で払うからね。タクシー代』





虎杖くんと車で任務に向かった私は伊地知くんに連絡をしてタクシーで来てもらった。このままで運転するわけに行かないし…。だからって伊地知くんに車で来てもらっちゃったら私が乗ってきた車が置いてけぼりだし…。本当にごめんね…。頼りない先輩で。




「着きました」

『ありがとう…』





伊地知くんと虎杖くんの間になり歩いているとふたりはどんどん先に行ってしまう。そんなにすごく小さい子なわけじゃないのに、追いつけない。





「あれ?苗字さん平気?ごめん!いつもの感じで歩いちゃった!」

『だ、っ、大丈夫っ、』

「全然大丈夫じゃなさそう!息切れ凄いよ!俺抱っこしようか?」

『……………………お願いします』






大人としてのプライドと久しぶりに走った辛さを天秤にかけて後者をとった。久しぶりのガンダッシュ超辛い。虎杖くんはヒョイッと私を抱き上げると腕の上に私のお尻を乗せて片手で支えた。片手なのに安定感が凄い。あと虎杖くんだからセクハラの感じがしない。





「どうする?五条先生の所行く?」

『絶ッ対嫌!』




今の状態で五条悟に会ってみろ。確実に馬鹿にされる。えー?補助監督なのにこのザマ?何にも補助してないじゃーん。ヤバくない?雑魚過ぎない?的な事を言われる。




「私は報告がありますので…」

『本当にごめんね。助かりました…』

「いえ。それではお気をつけて」





伊地知くんはそう言って去って行き、虎杖くんは高専の校舎の中に足を進めた。いつもと違う高い景色に少しテンションが上がってきた。





『虎杖くん!ちょっと走ってみて!』

「え?ここで?廊下だよ?」

『大丈夫!今日みんな授業ないって言ってたから!』

「じゃあまぁいっか!」




虎杖くんはそう言って私を落ちないように支えると走り出した。思ったよりも早くて怖かったけど、ジェットコースターみたいで楽しかった。前髪がぐしゃぐしゃになったけど気にせずに声を上げた。





『きゃー!』

「きゃーはヤバくない!?俺捕まらない!?」






数秒走って虎杖くんはゆっくり立ち止まった。まだ心臓がバクバクしている。中身は20後半だけど、変に幼くなっている気がする。





『もっかい!もっかい走ろ!』

「まぁ俺はいいけど…」

「あれ?悠仁?何してんの?」

「あ、五条先生」





私の後ろ、つまり虎杖くんの正面から五条悟が現れた。慌てて顔を虎杖くんの制服に埋める。バレたら終わり。バレたら私の精神が破壊される。




「ん?何?その子」

「えっとぉ〜…ま、迷子?」

「高専内で?」

「に、任務先で…」

「なんでそんなに汗かいてんの?」

「はっ、走ったからかも!」

「…この間5キロ走っても汗かいてなかったよね」

「あれ!?そうだっけ!?あ、暑いからかなぁ!ここ!」

「今日の気温10度だよ」

「あれー!?俺熱あんのかも!」





まずい。空気がマズイ方向に進んでる。虎杖くんの声は裏返ってるし汗も凄い。因みに私の冷や汗も凄い。





「その子の名前は?」

「なっ、名前!?」

「そう名前」

「な、名前…、名前…」

「ねぇ、君。名前は?」





五条悟は痺れを切らして私に質問してきた。どうしよう。名前…、山田花子?いやいや、嘘だってバレる。どうしよう、焦りすぎて頭が回らない。




『…ひ、』

「ひ?」

『…………稗田八方斎』





絞り出した名前に自分で引いた。有り得ない。これは終わった。私だとバレなくても変な子だと思われた。交番に連れて行かれたら困る。



「………忍たま乱太郎の?」

『そ、そう…』

「まぁ君くらいの歳は見てるよね」

『だ、大好きで…』





意外な事に私がただの忍たま乱太郎好きと認定された。これはいけるかもしれない。そうだ。私は今子供だ。これくらいのお茶目もする年だ。このまま乗り切って時間が経つのを待てば、





「んで?何してんの。名前」

「……へ?」

『え?』

「僕が分かんないと思ったの?」

「え!先生気づいてたの!?」

「最初は分からなかったけど、そのスーツ名前のだよね。下履いてないけど」

『……………私スーツ5着持ってんだけど』

「全部覚えてるよ」






引くわ。普通に引くわ。きもい。なんだコイツ。なんで私のスーツ全部覚えてんだよ。勝手にクローゼット開けるなよ。つーか開けて何してた。




「というわけで悠仁。名前渡して」

「え、えっと〜…」

『駄目!虎杖くん!アイツの手に渡ったら私は馬鹿にされる未来しか見えない!』

「悠仁はこれから任務の報告書書くんでしょ?預かっておいてあげる」

『子供じゃないから邪魔しねぇよ!嫌だ!行かないで虎杖くん!』




虎杖くんの制服をギュッと握ろうとした時、男性物の香水の香りがして瞬きする。顔を上げると五条悟のダッサイ目隠しが見えた。




『……………瞬間移動?』

「じゃあこの子は貰っていくねぇ〜」

「……え!?早っ!見えなかった!」





虎杖くんの驚いた声が聞こえた時にはもう五条悟は歩き出していた。私を抱いて。





『はーなーせー!』

「ほらほら暴れないの。僕の手元が狂ったら名前は落ちちゃうよ?いつもなら何とも無いかもしれないけど、今はこんなに体が小さいんだよ?」

『………え、』

「僕の身長だからね。地面まで1m以上はある。そこから落ちたら怪我しちゃうだろうなぁ〜。痛いだろうなぁ。最悪頭打っちゃうかも」

『…………………』

「うんうん。いい子だね」





コイツ!脅してきやがった!私が小さいからって!クソッ!地面を見たら本当に高かった!無駄に身長高ぇんだよ!





「硝子ー!いるー?」

「…………隠し子か」

『いや、分かってて言ってますよね?』

「うん。名前でしょ。顔がそうだ」





意外にも五条悟は硝子さんの元を訪れた。その事に安堵していると、私を膝の上に乗せて五条悟は椅子に腰を下ろした。





「見てー?可愛くない?」

「意外だな。オマエが子供を好きなんて」

「いや別に好きじゃないよ」

『は?』

「だって名前が小さくなったんだよ?満足に僕を攻撃もできない。今なら何でもし放題。最高に可愛いよね」

『…………硝子さん、タスケテ』

「私が居る限り襲いはしないだろ」

「その為にここに来たんだよねぇ」

『ふたりだったら襲う気だったのか!変態!』

「えー?なにー?ちゅーしたい?仕方ないなぁー」

『言ってねぇ!言ってねぇよ!顔近づけんな!』





両手で五条悟の顔を押し返しても頬にキスを落とされた。本物のヤバいやつだ。全国の幼女逃げてくれ。





『今までよく捕まらなかったなオマエ!』

「だから別に子供が好きなわけじゃないって。名前だからだよっ」

『きめぇ!』




声を高くして甘えた声を出す五条悟に鳥肌が立った。特別扱いされて嬉しくないことってあるんだな。誰かコイツを逮捕してください。お巡りさーん。




「そうだ!竹下通りにクレープ食べに行く?」

『え、この格好は恥ずかしいなぁ…』

「洋服買っちゃう?」

『数時間のために?無駄じゃん。金持ちクソかよ』





妙に甘い金持ちにある考えがピカンと浮かんだ。もしかしたら上手くいくかもしれない。いつもだったらこんなこと絶対できないけど今の私は子供だ。つまり、無敵だ。実質マリオのスターを手に入れた私は五条悟の服をキュッと掴んで上目遣いを意識して顔を上げる。





『ねぇねぇ』

「ん?なに?」

『私ね?今欲しいソファあるんだけど…』

「どれ?」





五条悟はスマホを取り出すから、背中を五条悟のお腹に預けて寄りかりスマホを覗く。固くてあんまり座り心地は良くない。まぁ仕方ない。




『このやつ!』

「いいよ。買っちゃおっか」

「金ヅルだな」

「あとは?欲しいのあるの?」

『あ、あとドライヤー!』

「マイナスイオン出るやつ?」

『うん!』



何故かノリノリな五条悟にここぞとばかりに欲しいものを頼む。ネットショッピングサイトのカートの合計を見たら凄いことになってた。でもそれを普通に買うコイツに正直引いた。





『あ、ありがとう…』

「買ってもらって何引いてんの?」

『強いて言うならテレビ欲しい』

「どれくらいの大きさ?」





ポンポン私の欲しいものを買っていく五条悟に硝子さんがコーヒーを飲みながら口を開いた。





「私もテレビ欲しい」

「は?名前だけだから。僕の財布の紐が緩むの」

『硝子さんもテレビ欲しいんですか?』

「仕方ないな。どの大きさ?」

「一周回ってキモイなオマエ」






私は買ってあげてとも何とも言ってない。ただ欲しいのかと聞いただけだ。勘違いしないで欲しい。このままでは私が金を積ませる悪女だ。






「それにしても緩すぎないか?」

『………確かに』

「他に欲しいものないの?」

『………………』







スマホを見ていた視線を上げて、油が足りていないブリキのおもちゃのようにギギギと振り返ると五条悟は、それはもう楽しそうに笑っていた。うん。あれた。ヤバいやつ。





「欲しいもの何でも言っていいよ?」

『あ、いや、だ、大丈夫です…』

「そんな遠慮しないでさ〜」

『本当に、あの、大丈夫ッス』

「えー?買ってあげるよー?」




五条悟の膝から降りようとしてもお腹に手が回されて動けなかった。すると五条悟は私の耳元に唇を寄せてグリグリと腰を押し当てながら口を開いた。コイツ…、幼女に興奮してる…、




「だってこのあとでたーっぷりお返しをもらうから」

『…………買ったのキャンセルできますか』

「出来るけど結果は変わらないよ。なら貰っておいた方が良くない?」





そう言って五条悟は私を米俵の様に抱えると足で扉を開けた。お願いします。助けて。この変態に喰われる。






『しょっ、硝子さっ、』

「テレビ届くの楽しみにしててー」

「よろしく」

『その為にテレビ買ったのかーッ!!』






今日学んだのは呪術師は本当にクソだって再確認しました。とりあえず五条悟は死んでください。





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