愛と正義の反対の反対



「なーんか最近また女と会ってるみたいじゃない。伏黒のヤツ」

『うん、そうみたいだね』





野薔薇と教室から門の辺りに視線を落とすと、恵くんの前には少し派手目な女の人が立っていた。少し前に会ったふたり組のうちの一人だ。




『中学校同じなんだ。あの人と』

「友達ってこと?」

『友達では、ないかな…』

「ならどういう関係よ」

『私をイジメてた人?』

「はァ!?」




野薔薇は外を見ていた視線を勢いよく私に向けた。その勢いが良すぎて少し驚いてしまった。首大丈夫かな…。




「意味わかんないんだけど!?」

『うーん、…なんか、あの子が好きだった人が私のことを好きだったみたいで…』

「……中学生に在り来りな理由ね」

『本当にね』





その男の子だって本気で私のことが好きだったわけじゃない。いつもヘラヘラ笑って、言って欲しい言葉を言ってくれる私≠ェ好きだっただけなのに。本当にくだらない。





「また暴れたり別れたりしないでしょうね?」

『大丈夫だよ…、それに多分…』





恵くんはあの子とどうにかなりたいとかじゃないと思う。2年生の頃のは相手が彼の運命の人だったからっていうのもあるし…。だとしても…、





『いい気分ではないよね…』

「顔がやばいわよ。今から殺しに行くんじゃないでしょね」

『大丈夫…、多分…』

「多分!?」





もちろん冗談だけどね。…半分は。
視線を門へと落とすと恵くんはまだあの女の子と話しているようで、お腹の辺りがジクジクと痛んで制服を握る。本当に自分が汚くて嫌になる。





∴∴∴





「あれ?伏黒?」

「虎杖か」

「何してんのー…っていうか誰?」



門で伏黒を見つけて寄ってみると、伏黒の後ろには見たことない女の人が居て驚くと伏黒は楽しそうな顔をしていた。




「……え、」

「教室戻んのか?」

「あ、うん…戻るけど…」

「なら俺も戻る」

「え?…い、いいの?そっちの人…」

「別にいい」

「えぇ…?」





伏黒は何処か機嫌が良さそうで俺は混乱した。だって伏黒が機嫌いい時って大体苗字絡みだから。
少し気になって後ろを振り返るとさっきまで伏黒と話していた女の人も楽しそうに頬を緩めていた。




「なぁなぁ、これどういう状況?」

「さぁな」

「なんで伏黒は楽しそうなの?」

「別に普通だろ」

「鏡見てみ?すげぇ嬉しそうだよ?告られでもしたの?」

「……まぁ悪い気分ではねぇな」

「ねぇ本当に大丈夫?また別れたりしないよね?」





俺が冷や汗をかきながら聞くと伏黒は立ち止まってニヤリと口角を片方だけ持ち上げた。悪どい笑顔ってやつだ。





「……潮時かもな」

「……………え、」






そう言った伏黒の表情はとても楽しそうで、それがちぐはぐで恐怖を感じた。



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