困った子がかわいいから仕方ない



『真希さん達と一緒にいれるのもあと1年だけですか…』

「どうせ任務とかで会うだろーが」

『でも寮は出ちゃうんですよね!?嫌です!ここに住んでください!』

「住むわけねぇだろ!」





真希さんのお腹の辺りに抱きついてそう言うと額に手を置かれて引き剥がされた。真希さん酷い…。
私の部屋で紅茶を傾ける真希さんは美しすぎた。本当美人だなぁ。





「オマエももう3年なんだからしっかりしろよ」

『交流会に参加出来るのも最後ですね…。今年も勝てるといいなぁ…』

「勝てよ。何がなんでも」

『頑張ります!』





敬礼すると真希さんはフッと口角を持ち上げた。笑い方がもうかっこいい。




「棘は本格的に呪術師として仕事してるから学校も来てねぇし、最近会ってねぇんだろ?」

『狗巻先輩忙しそうですよね。やっぱり家が立派な家系は大変そう…』

「恵も面倒な事になってるしな」

『……禪院家ですか』

「恵には悪ぃけど私も真依も落ちこぼれだからな。恵に声がかかるのも仕方ねぇな」

『でも真希さんが当主になるんじゃないんですか?』

「私はそのつもりでも禪院家が認めねぇんだよ」





御三家っていうのも大変なんだなぁ。私は一般家庭出だから何も無いけど。





『でも恵くんが当主になっちゃったら困りますよね』

「あ?なんでだよ」

『だって当主って事は禪院家のトップって事ですよね?』

「そりゃそうだろ」

『しかも御三家って古くから呪術師じゃないですか』

「だから?」

『つまり………袴を着るわけじゃないですか!』

「……………」

『絶対似合う!袴じゃなくても着物!?そんなの着たら恵くんの魅力が爆発しますよ!?』

「……オマエが馬鹿なの忘れてた」

『馬鹿…!?』






呆れたように息を吐く真希さんにショックを受けていると扉が壊れるんじゃないかって位の強さで開かれる。





『お、おかえり…、恵くん』

「任務長かったな。1週間か?」

「…………」

『恵くん?』





1週間振りに会った恵くんの瞳は光が無くて人を何人か殺ったあとみたいだった。ゆらりと顔を上げた恵くんはドスドスと靴を脱いで私の前にしゃがみこんで勢いよく私を抱きしめた。





「末期だな」

『そんな病気みたいに言わなくても…』

「病気だろ?現に一言も発さねぇじゃん」

『恵くん?大丈夫?』





私の首筋に顔を埋める恵くんは深く息を吸って吐いてを繰り返していた。まだ夕方でお風呂入ってないからやめて欲しいなぁ。





『恵くん、私まだお風呂入ってないからあんまり嗅がないで欲しいんだけど…』

「…………」

「呪いでも受けて話せなくなったのか?」





真希さんの煽りにも無反応の恵くんに本格的に疲れてるな、って思いながら彼の背中に腕を回してポンポンと叩く。すると背中に回された腕の力が強まって息が詰まる。




『うっ…、』

「たかが1週間でそれだろ?オマエらどっちかが憂太みたいに海外出張になったらどうすんだよ」

『海外は…、』

「あ?なんだよ」

『恵くんのトラウマがあるので…』

「はァ?トラウマ?財布でもスられたか?」





真希さんの質問に苦笑を浮かべながら恵くんの背中を撫でる。2日間の海外出張行ったことあるけど、帰ってきた時の恵くんの表情は今でも忘れられない。





「恵は使い物にならなそうだし私は帰るわ」

『今度ちゃんとおもてなししますね』

「楽しみにしてる」





真希さんはガシガシと私の髪を撫でるとそのまま恵くんの髪も撫でて部屋から出て行った。




『恵くん?大丈夫?』

「……………疲れた」

『お疲れ様です』




未だに私に抱きついている恵くんの髪を撫でると、ゆっくりと顔を上げた。何も言わない恵くんに首を傾げると唇が重ねられて瞼を閉じる。




『………疲れたからキスしたの?』

「したかったからした」

『そっか…。任務で疲れてるならもう寝る?』

「………寝ない」





恵くんはそう言ってもう一度唇を重ねると啄むように角度を変えて何度も重ねた。息が苦しくなった頃に唇が離れて体が浮遊感に襲われてベッドに下ろされる。





『…疲れたんじゃないの?』

「疲れよりも会えなかった方が辛い」

『3年生になってから恵くんの任務増えたね』

「日帰りにするか名前を連れて行くかどっちかにして欲しい」

『どっちかっていうか、後者は絶対無理だね…』

「1週間は長すぎる」

『確かに…。私も寂しかったし…』





恵くんの首裏に腕を回して擦り寄ると耳元で息を飲む音が聞こえて首筋に吸いつかれてピリッと小さな痛みが走る。




「名前、」

『……1回だけ、1回だけだからね。ご飯もまだ食べてないし』

「ん、分かった」




本当に分かってくれたのか分からないけど嬉しそうに笑うから何も言えなくなってしまう。つくづく恵くんに甘いなぁ、なんて思うけどそれが嫌じゃないから止められなかった。



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