夜がこんなに眩しくなるのは



「と、いうわけで〜!カンパーイ!」

「かんぱーい!……って俺だけ!?」



高専に戻り、お菓子や料理を並べ終わる頃には辺りが暗くなり、みんなの元気は無くなっていた。虎杖くんだけが五条先生が発した乾杯の音頭に楽しそうに応えていた。




「みんなー!もっとテンション上げてこうよ〜!せっかく全部終わったんだよ〜!?」

「そうだよ!苗字も生きてるし!成功じゃん!」

「その事について私は名前に聞くことが山ほどあんのよ…。けどその前に伏黒ォ!アンタいつまで名前とベタベタしてんのよ!アヒルの子じゃないんだから何処に行くにしてもついて行くな!」

『あ、あはは…』





野薔薇の言葉に私と手を繋いで肩がぶつかってしまう程近くにいる恵くんに苦笑を浮かべる。ちょっと動くだけで肩がぶつかるから歩きずらいし、トイレ以外には必ずついて来るから困ってしまう。多分手を離したのもトイレくらいだ。





「まぁまぁ、釘崎も落ち着いて!伏黒も一旦苗字の事離せば?」

「嫌だ」

「即答!?」

「あぁ!もういい!伏黒も名前と一緒に正座しろォ!」

『……一緒に正座するんだ』





即席にしては酷く色鮮やかに飾られた教室に正座をすると、恵くんまで隣に正座してくれた。でもその間も手が離されなくて少し座りずらかった。




「…で?どういう事なの?」

「野薔薇のヤツ、キレてるな」

「しゃけ」

「嬉しさと怒りが混じってるんだろうなぁ」

『先輩方…、冷静な分析してないで助けてください…』

「おかか」

『えぇ〜…』





狗巻先輩に助けを求めても首を振られてしまった。…世知辛い。




「棘は名前が死んだって聞かされて大分ショック受けてたもんなぁ〜」

「あーあ、私の同期が後輩にいじめられてんだけど」

「高菜っ…、ツナマヨォ…、」

『現に私は先輩にいじめられてるんですが…?』





悪ノリを始める4年生に眉を下げると繋がれてる手が引かれて視線を戻すと不機嫌そうな恵くんと視線が交わった。




「狗巻先輩ばっかり見てんなよ」

『………キュンです』

「私を無視してイチャイチャしてんじゃないわよ。殴んぞ」

『の、野薔薇サンっ、金槌は本当に死んじゃいますけど!?』

「……………」





野薔薇は俯くとグッと唇を噛んで振り下ろそうとしていた金槌をゆっくりと下げた。……私は本当に野薔薇を泣かせてばかりだ。親友なのに。





『…ごめんね、野薔薇。心配かけて』

「ほんとっ、…ふざけんじゃないわよっ、」




野薔薇は崩れ落ちるように膝をついて私の前に座り込む。そんな彼女の手を握るとキュッと握り返された。






「つぎっ、死んだらっ、金槌で殴り殺すからっ、」

『……それじゃあ、死ねないなぁ、』






優しすぎる脅しに頬を緩ませると未だに手を離さない恵くんが淡々と答えた。






「名前を殺すのは俺だから釘崎の出番はない」

「……………」

『…………恵くん、…タイミング…、』





恵くんは譲る気がないのかフイっと首を背けた。反応が子供だ。




「とりあえず!飯食おうぜ!せっかく先生が買ってきてくれたわけだからさ!」

「なんで悠仁が仕切ってんだよ」

「えぇ!?駄目なの!?」

「てか憂太は食べ始めてるけどな」

「しゃけしゃけ」

「え?だ、駄目だった…?」





4年生と虎杖くんの声にバラバラとみんなが机に広げられた食べ物に手をつける。野薔薇も私の髪をぐしゃぐしゃと撫でて立ち上がると涙を拭って真希さんと一緒にご飯を食べ始めた。




『……………』






それが眩しくて目を細めると恵くんが立ち上がったせいで腕が引っ張られてつられる様に立ち上がると腕を引かれて教室を出る。




『…め、恵くん?』

「少し、話したい」

『…………』



あの日と同じ言葉なのに、どうしてこうも世界が眩しく見えるんだろう。



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