「はい、名前は硝子のところ行っておいで」
『伊地知さん迎えに来てくれてありがとうございました』
「いいえ」
「あれ?僕のこと無視?」
『今日は家入さん居るんですね』
「基本的に居るでしょ」
『前に私が大怪我した時は珍しく出張に行ってたみたいでしたよ』
「うわー…禪院家が関わってるの丸分かり」
『流石にあの時は死ぬかと思いました』
「それにしても直哉くんはどうして恵と名前を殺そうとするんだろうねぇ」
『当主になりたいらしいですけど、でもあの人27代目当主じゃないですか』
「それも僕が死んだら終わりだけどね。僕が死んだら伏黒甚爾との誓約状を履行されて恵が当主になるわけだけど」
『恵くんが死なない限り死なないでください』
「僕達の年の差分かってる?」
『最強なんだから何とかしてください』
「わ〜無茶ぶり〜」
『当主であり続ける為に殺したいんですかね。本当に御三家ってくだらないです』
「人によって価値基準は違うから。御三家の人間は地位が大切なんだよ」
人によって価値基準が違う…か。私の一番は恵くんだ。でも禪院さんにとっての一番は当主という名の椅子。それを否定してしまった事は悪いと思う。私も恵くんを否定されたらキレる。
『だからって、絶対に恵くんは殺させません』
「僕だって死ぬつもりはないし、恵を禪院家に渡すつもりはないよ」
『恵くんが幸せになれるなら私はなんだってする。喜んでこの命だって差し出しますよ』
「……言ったね?」
『………え?』
「その言葉忘れないでね」
五条先生はそう言ってニヤリと笑うから冷や汗が背中を伝った。
∴∴∴
『……ここ最近、私に休みが無いんですけど』
「ん?仕方ないよ。禪院家を敵に回しちゃったんだから」
『………恵くんの後ろ姿すら見れてない。学校に行きたいって思ったの初めて』
「残念だけど学校に来ても恵も来てないよ」
『えぇ〜…』
肩を落として落ち込むと五条先生に肩を叩かれて顔を上げると彼は静かに惜しむように言った。
「じゃ、任務頑張ってね」
『…?…はい』
よく分からなかったけど小さく頷くポンポンと頭を撫でられて送り出された。
「……逝ってらっしゃい」
五条先生の言葉が酷く重たく感じた。
≪ . TOP . ≫