欠けないピースで君を埋めるよ
恵の視覚・聴力を使って流れを見た。変な髭を生やしたおじさんとの闘い。
ウルトラマンに出てきそうな見た目をしている呪霊との闘い。
ーーそして漆黒の髪を靡かせる何処かで見たことのあるような気がする男の人との闘い。
いつ見たのか、何処で見たのか覚えてない。それでも感じたことがある気配と雰囲気
そうだ、中学時代の恵と少し似ている気がしたんだ。私自身はあの人に会った事はない。
ピリピリとした雰囲気に漆黒の様な髪、そして切れ長な瞳
少し無茶な闘い方をした恵は横腹を抑えて少し体勢を崩していた。だから、恵は気付いてない。
すぐ後ろの気配に、
『ーガハァッ、』
「………名前?」
「これこれこーいうのよ!!……あり?違うや。まぁいっか!こーいうのが向いてんのよ!!」
「名前ッ!!」
口から黒っぽい血みたいなのが出て膝から崩れ落ちそうになる。っていうか崩れ落ちる。足に力が入らない。
「名前っ!名前ッ…!!」
「俺が切りたかったのそっちのガキなんだけど!割り込んで邪魔しやがって!」
「名前!」
「式神使いってそういう使い方もすんのな。盾に使うのか。確かにどうせ呪霊なんて消えるだけだもんな〜」
体から力が抜けて膝から落ちそうになって恵が慌てて私の体を抱き止めて座り込んで横抱きにした。見たところ恵まで刀は届かなかったみたい。良かった、ちゃんと守れた。
「名前ッ…!」
『…初めて、恵の役に立てたね、やった…、』
私がそう言うと恵は眉を寄せてしまった。それを見て苦笑を浮かべるとお腹の辺りにあった自分の手が濡れていくのが分かった。
「すぐに戻せば間に合うかもしれない…!」
『……無理だよ、恵』
「分かんねぇだろ…!」
『無理なんだよ』
お腹の傷を塞ごうと当てられた恵の手を掴むと彼はその手を振り払って私を戻す為に意識を集中させ始めた。
「今ならまだ…!」
『……恵』
「戻れッ…!」
『…恵、』
「絶対に死なせない!」
『伏黒恵ッ!!』
「ーっ、」
私の声が聞こえない程集中する恵の胸倉を掴んで顔を引き寄せて今出せる限界の大声で恵を呼ぶと瞳孔が開き、小刻みに揺れている恵の瞳と視線が交わった。
『…恵だって、本当は分かってるでしょ』
「な、にが、」
いつまで経っても忙しなく小刻みに揺れている恵の瞳を見て、フッと笑みを浮かべた。やっぱり恵も分かってんじゃん。
『私が恵の式神じゃないことに』