うつくしさで翳す正当性
『おはよう』
「今日は少し遅いのね」
『うん、ちょっとコンビニ寄ってて』
「ふーん」
教室に行くと私以外の3人が揃っていて私は席に着いて教科書を仕舞う。そしてコンビニで買ったチョコレートを野薔薇に差し出すと、彼女は嬉しそうに摘んで口に放り込んだ。
「んー!美味しい!」
『期間限定なんだって』
「私も今日買いに行こうかな…」
『なら付き合うよ』
「ありがとー!」
私が笑うと、私の席に影が差して顔を上げると伏黒くんが私を眉を寄せて見下ろしていた。
「苗字、」
『伏黒くんもチョコレート食べる?美味しいよ?』
「…苗字、俺は、」
伏黒くんが口を開こうとした時、教室に五条先生が現れ彼は口を噤む。すると先生は首を傾げていた。
「恵ー?どうしたの?授業始めるよ?」
「……」
『…伏黒くん、授業始まるよ』
私の言葉に伏黒くんは顔を俯かせたまま席に着くと、五条先生は首を傾げながら授業を始めた。野薔薇と虎杖くんも彼の雰囲気に首を傾げていた。
「次の授業は体術やるよー」
「はいはい!俺呪具使いたい!」
「体術かー…。汗かくの嫌なのよね」
『確かに最近暖かくなってきたからすぐ汗かいちゃうよね』
4人で外へと移動して1対1で組手を始める。私の相手は虎杖くんだ。最初からハード過ぎる。まぁ私からしたら誰が相手でもハードなんだけど。
「なぁ、苗字」
『ん?なに?』
「伏黒と何かあった?」
『なんで?』
「俺が昨日コンビニから帰った時にさ、ちょうど伏黒が部屋に入る時にあったんだけど、なんか放心状態っつーか、元気が無いって言うか…。今日も様子変だったし」
『……そっか』
「今だって釘崎にぶん殴られてるし」
『…それは、止めた方がいいんじゃないかな…?』
見ると伏黒くんが野薔薇に背負い投げを決められている所だった。体術苦手じゃないのに珍しいな、なんて思っていると彼と視線が合って肩が小さく跳ねた。すると彼が視線を逸らすから少しだけ寂しさを感じてしまった。そんなの感じる資格、私には無いのに。
「恵ー、上の空すぎ。そんなんで任務なんて行ったら死ぬよ」
「…分かってます」
伏黒くんは舌打ちをしながら立ち上がると背を向けて去ってしまった。五条先生は引き止めることもせずに溜息を吐いて肩を竦めた。
「恵は放っておいて組手やるよー。次は名前と野薔薇対悠仁」
「おっし!」
私が彼の去って行った方向を眺めていると五条先生が隠すように前に立ったから顔を上げると、先生は首を傾げていた。
「恵と何かあったんだろうけど、今は授業に集中」
『…はい、』
私は虎杖くんに向き返り構えると、野薔薇も気合を入れたのか釘を構えていた。……それはありなのだろうか?
「うわっ、痛そー」
「ごめん!力入りすぎた!」
『…だ、大丈夫…』
虎杖くんに思いっきり吹っ飛ばされた私は受身が取れずに口の中を噛んで切るわ頭を打ってガンガンするわ額が切れて視界が赤くなった。五条先生は私の前にしゃがみ込むと不思議そうに首を傾げた。
「なんで名前は反転術式使えないの?」
『なんで、と言われましても…』
「呪力量は問題無いし使えそうだけどね」
五条先生は閃いた、と言わんばかりに手のひらにポンッと乗せた。
「名前知ってる?呪力が流し込まれたりすると反転術式を使えることがあったりするんだって!」
『…はい?』
「だから、名前の呪霊から呪力を流してもらえれば反転術式が使えるかもしれないってこと」
『…反転術式って呪力量だけの問題なんですか?』
「あー、うん、そう、」
『……絶対、嘘でしょ、』
「出来るかどうかは実践あるのみだよねー。だから今から名前の事半殺しにしていい?」
『…いいわけ、無いでしょ』
なんで傷を治すために、治るかも分からないのに半殺しされないといけないんだ。本当にこの人はイカれてる。
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