006




「後片付けは私がしておきました。私、優しいので」

『ありがとう、ございます、』

「でも問題が1つありまして。魔法がぶつかりあったせいで寮が少し壊れてしまいまして…」

『…他に空いてる部屋とかって』

「あとは生徒が使っている寮の一部屋を借りるという選択肢しか無いですね」

『…そう、ですか』



流石に今回の事があって、男の子と同じ寮で生活するのは少し怖い。どうしたものかと考えて、ふとある男の子が思い浮かぶ。



『オンボロ寮は!空いてませんか!?』

「なるほど…、オンボロ寮ですか」

『ユウくんなら信頼出来ます!』

「う〜ん…しかし、あそこは…」

「サバナクローで良いじゃねぇか」

『…え?』



ここまで無言を貫いてきたレオナくんが意見を述べたの事に驚いて顔を見ると、彼はなんでもない様な顔をしていた。



『い、いやいや!サバナクローはちょっと…』

「あ゛?文句あるのか」

『文句っていうか…、弱肉強食の中で生きていける自信が…』

「そんなもん生きていけるわけ無ぇだろ」

『あれぇ!?』

「だからオレの部屋で過ごせば問題無いだろ」

『………え?』

「それとも監督生は信用出来るのにオレは信用出来ねぇって事か?あ?」

『違う!違うよ!?』

「あのストーカー野郎は死んでねぇんだから、いつまた来るか分かんねぇぞ」

『うっ…、そう、だけど。でも流石に…』

「本当にテメェは甘ちゃんだな」




そう言って鼻で笑うとレオナくんは学園長に向き直した。



「もしストーカーがサバナクロー生だったらオレのそばに居た方が楽だろうが」

『えっ、』

「可能性の話だ」




そうだ。あの男の子がどこの寮生なのかは分かっていない。あの子がサバナクロー生の可能性だって大いに有り得るのだ。



「サバナクローなら安心ですね!オンボロ寮は防犯に関して不安な事が多いですから!」

「フード野郎からはオレたちと近い匂いがしたしな」

『…それって、サバナクロー生って、こと?』

「そう決まったわけじゃねぇけどな。匂いなんて簡単に移るもんだ」

「なら尚更キングスカラーくんの近くにいた方が良いですね!」

『…すみませんが、よろしくお願いします』



深々と頭を下げるとレオナくんは鼻を鳴らした。


『…それと学園長』

「はい?」

『ユウくんが言ってたんですけど、ちゃんと元の世界に戻れる様に調べてくれてるんですよね?』

「え?」

『ユウくんが言うには最近遊んでばっかりみたいじゃないですか?私に雑用押し付けて。まぁ、それはお世話になってるので良いんですけど。でも私とユウくんは全く魔法が分からないんです!学園長が頼りなんです!ちゃんと、元の世界に戻れる様に頑張ってくれてますよね…?』

「……………もちろんですよ!!」

『…間が酷く怪しいんですけど』

「まぁまぁ!とにかく名前さんは寮から荷物を取ってきてください!」

『……』

「そんなにむくれてないで!さぁ!さぁ!」

『ちゃんとお願いしますよ!!』



冷や汗をダラダラと流している学園長に背中を押されて荷物を取りに足を進める。



すると学園長がいつものセリフを言った。







「私、優しいので」





そのセリフが嫌に耳に残った






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