004
レオナくんに協力を頼んでから視線はピタリと無くなり、食欲も戻り、十分な睡眠も取れるようになってきた。ここまで平和だと、ストーカーなんて最初から居なくて私の勘違いだったのではと思えてくる。
『って事なんだけど、レオナくんはどう思う?そろそろレオナくん達に助けてもらわなくても平気なんじゃないかな〜って思ってるんだけど』
「オマエは弱肉強食の世界に居たら1番に死ぬタイプだな」
『そんなぁ!?』
「むしろなんでそんなに楽観的になれるのかオレはオマエの頭の中を覗いて見てぇな。中身はきっとスッカラカンなんだろうぜ」
『つ、詰まってるよ!ちゃんと脳みそが!』
「その脳みその出来が悪すぎだんだろうな。」
『確かに、レオナくんに比べたら可哀想なおツムだけど…』
「…考えなかったのか」
『…へ?』
「わざと今は距離を取ってるんじゃねぇかって」
『なんの、ために、』
「安心させてオマエからオレ達を引き話した所を狙ってるとは」
『た、確かに、』
「無いおツムを使え。こんなことガキでも分かる」
『情けない大人でごめんね…』
「オマエが情けなくて使えなくて馬鹿なのは知ってる」
『そっ、そこまでかなぁ!?』
レオナくんは私を馬鹿にする様に鼻を鳴らすと、また寝そべってしまった。
『…早く解決してくれると、いいんだけど』
「…」
『あともう少し、お願いね』
「…うるせぇ。寝る」
そう言ってレオナくんは瞳を閉じて眠ってしまった。
*****
「……なんだその面は」
『こ、ここ、最近、学園長が、一気に仕事を渡してきまして…、』
「……」
『ちょっと、寝不足、っていうか、』
「…とにかく帰るぞ」
『うん、』
ユウくんと突然現れた私の為に、学園長は色々な手配を進めてくれた。ユウくんは学生としての生活。私には雑用係という生活。元の世界に帰るまでのとりあえずの処置だ。私はそれに満足しているし、突然訳の分からない世界に来て、それこそ0からのスタートの私には衣食住を与えてくれただけでも感謝しきれない。のだけれど、
『流石に、堪えるな…、』
レオナくんに寮の前まで送ってもらい、部屋のベットに寝そべる。お風呂も入っていないけれど、今日はこのまま眠ってしまおうかと瞳を閉じる。
『…そう、いえば、レオナくんが、言ってたような、』
手のひらを天井に向けて腕を上げる。寮の前で別れる時にレオナくんから渡されたピンキーリングが目に入る。
「これやる」
『…リング?』
「防御魔法を組み込んだモンだ。即席で作ったモンだから1度だけしか発動できねぇ」
『へぇ〜。凄い…、綺麗…』
「発動したらオレにも知らされるようになってる。あとラギーもだ」
『…至れり尽くせりで申し訳ない…』
「それからーーー」
あの後、レオナくんはなんて言ったんだっけ…。何回も言われてた事だと思うんだけど…、眠過ぎて頭が働かない。視界が暗くなる。勝手に瞼が落ちる。
その時、部屋の扉がノックされた。
『…ぇ、』
失いかけていた意識が少しだけ戻ってくる。学園長だろうと思って、仕事を一気に渡された苛立ちから居留守を決め込もうとまた瞼を閉じる。
けれどまたノックされる。学園長なら声をかけてくれるはずだ。ならば誰なのだろうか。
私は立ち上がってフラフラしながら扉に向かって、ドアノブを掴む。
『…あれ、』
そこまで来て、私は思い出した。
そうだ、レオナくんが言ったのは、
「それから、チェーンロックはかけろよ」
本当に私は救えない馬鹿だ。
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