002
「それじゃあレオナさんが手伝ってくれる事になったんスね!良かったじゃないスか!」
『うん!レオナくんが居れば百人力だよ!』
「顔色も良くなったみたいで安心したっス」
『ラギーくん…、』
ホッとしたように笑ったラギーくんに心がジーンと暖かくなって、お礼を言おうと口開くと私よりも先にラギーくんが笑って口を開いた
「名前さんに元気が無いとたかる相手が減るんスよ!」
『……』
「冗談っスよ!これでも名前さんの事は気に入ってるんスよ!」
『ラギーくんっ!』
「弱い人間は大好きっスよ!利用価値があるっスからね!」
私の感動を返してください。
*****
「…テメェ」
『ごめんね!本当にごめん!ちゃんとお金払う!クリーニング代!!』
馬鹿な私は安心してそのまま眠り、レオナくんの制服にヨダレをダラダラと垂らしてしまって、起きた時に目に入ったのは怒っているレオナくんの顔だった。
『久しぶりの安心出来る睡眠に爆睡しちゃって…!本当にごめんね!かっ、代わりの制服サムさんの所にあったりするかな!?』
私が顔を青くしてワタワタしていると、レオナくんはため息を吐き出すと、山吹色のベストを脱ぎ捨てた。
「面倒くせぇからいい。後でラギーに回収させる」
『えっ…、でも、』
「オレがいいって良いんだから良いんだよ。うるせぇな」
『…ごめんね』
「人の言葉に逐一真に受けてんじゃねぇ」
『うん…、ごめんね…、』
私はグッと唇を噛んで俯くと、レオナくんはまた寝転がって舌打ちをした。その舌打ちにビクリと体が揺れて、それを見てまたレオナくんは舌打ちをした。
「それでオマエはオレに何の用だ」
『…言い難い、事なんだけど、』
「さっさと言え」
『私が…、その、世間で言う、えっと、』
「……」
私が言い淀んでいると、レオナくんは鬱陶しそうに眉を寄せて、おい、と低い声を出されてビビリな私は覚悟を決めた。
『ストーカーをされてるみたいで!!』
「……あ゛?」
『ひいっ!』
レオナくんはさっきよりも低い声で唸ると、上体を起こした。
『いや!私の勘違いかもしれないんだけど!私なんかがストーカーされるなんてありえないよね!?だけど、ラギーくんが直接被害に合う前にどうにかした方がいいって言ってくれて!もちろん私なんかをストーカーしてる人が居るとは思えないんだけど!念には念を!みたいな!?ラギーくんがレオナくんの所に連れて来てくれて!レオナくんが良ければなんだけど少しだけ力を貸してくれないかなーって!嫌だったら全然大丈夫なんだけど!』
人は焦ると勝手に口が動くらしい。私の口はペラペラと勝手に動き、聞いてもないのにレオナくんにどんどんいらない情報を冷や汗をダラダラと流しながら話してしまう。
「…分かった」
『だよね!やっぱり面倒くさいよね!』
「分かったって言ってるだろ」
『話聞いてくれただけでも本当に有難いよ!それじゃあアタイはもう行くね!おやすみ!!』
立ち上がってレオナくんの方に上体だけを捻って振り返り、顔の横に手のひらを上げて自分の中の1番のキメ顔を決める。するとグイッと手首を掴まれて引き止められる。
「手伝ってやるって言ってるだろ」
『……………………………………え?』
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