空白のまま冷凍保存
『伏黒くん、私のTシャツ取って』
「ん、」
彼に拾ってもらったTシャツを被って下着を身につける。今日はもう出かける予定が無いのか伏黒くんはまだベットに寝そべっていた。
『私そろそろ帰るね』
「まだ8時だろ」
『8時は立派な夜だよ』
「小学生か」
『小学生は5時には帰ります』
「まだ居ればいいだろ」
伏黒くんは私の腕を掴み、引き止める。ベットから立ち上がろうとしていた私はまたベットにお尻が沈んだ。溜息を吐きながら振り返ると彼は少し唇を尖らせてた。その顔をしたいのは私だよ。
『なんでそんなに帰らせたくないの?寂しんぼ?』
「それでいいからまだ居ろ」
『はいはい、寂しんぼなんでちゅね〜、恵くん抱きしめてあげまちょうか〜?』
「ん、」
『………いや、冗談だよ?』
「抱きしめるんだろ?」
私が巫山戯てそう言ったのに伏黒くんは上体を起こして両腕を少しだけ広げた。私が目を見開いて固まっていると彼は首を傾げた。
「抱きしめねぇのか?」
『…抱きしめる』
私が腕の中に収まると彼は私の背中に手を回して珍しく少し楽しそうにポンポンと私の背中を叩いた。私が子供扱いされてる。
『…9時になったら帰るから。明日仕事だし』
「あと1時間しかねぇ。短い」
『1時間って結構長いよ』
「泊まってけば」
『……泊まっていいの?』
「…?なんで聞くんだ」
彼女さんは来ないのだろうか。当の本人の伏黒くんはキョトンと本当に不思議そうか声を出していた。まるで何がいけないんだ、と言わんばかりに。
『伏黒くんの家から職場に行くの嫌なんだよなぁ』
「は?なんでだよ」
『気持ち的に?』
「意味わかんねぇ」
伏黒くんは私の首筋に唇を落としてリップ音を鳴らして離れると私の髪を耳にかけた。そのまま唇が重なってまたベットに倒れ込む。服着たばっかりなのに。
「俺ん家からの方が職場近いだろ」
『…確かに近いけど』
「ならいいだろ」
『距離の問題じゃないんだよなぁ…』
口ではそう言いながらも抵抗しない私は伏黒くんの共犯者だ。
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