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俺は名前を連れて買い物に出ていた

そこで最悪の男と会った


「あ?銃兎じゃねぇか」

「...左馬刻」

「おい、人の顔みて嫌な顔してんじゃねぇよ」

「何故ここに居るんですか?」

「ヨコハマだからだろうが」

「...」



俺は名前が見えないように左馬刻の前に立ったが、目敏く名前を見つけると俺の後ろへと顔を向けた




「んだ?そのチビ?.....てめぇのガキか?」

「分かってて言ってるだろ。ちげぇよ」

「だろうな」



左馬刻はニヤニヤと笑い俺を見た



「んで?そいつはなんだよ」

「訳あって俺が預かってんだよ」

「はっ、なんだそりぁ。丸くなったなぁ?悪徳警官様よぉ?」

「.....うるさい」


左馬刻が更に名前の方へと体を向けると
名前は体をビクリと1度揺らし俺の足の後ろへと隠れた


「近づくな」

「あ?」

「怯えてんだろうが」

「ふはっ!てめぇまじでどーしたんだよっ!
親代わりのつもりかよっ!ふっ、腹痛てぇっ!」

「.....」



俺が青筋を浮かべていると不意にズボンが軽く引っ張られ目を向けると名前が俺を見上げていた


『お、おかい、もの、』

「あぁ、そうですね。行きましょうか」

「おい、なに俺を無視して行こうとしてんだ」

「はぁ...。何か用ですか?」

「用はねぇよ」

「...」



ここでイラッときたのは仕方ないことだと思う


「つーか、お前はどこ行くんだよ」

「どこでもいいでしょう」

「おい、クソガキ」

『ひっ』

「あっ!おいっ!」


左馬刻は名前の前にしゃがみこんだ


「俺様が飯おごってやる」

『ぇ、え?』

「何が食いてぇ?」

『ぁ、ぁ、うっ、いるまっ、さっ』

「は?なんで泣くんだよ」



俺が抱きあげようとした瞬間、名前の体は左馬刻によって抱き上げられていた


「おら、泣くんじゃねぇよ」

「.....は?」



左馬刻は片手で名前の体を支えると器用にもう片手で流れ落ちていた涙を拭き取っていた


「名前なんだっけか」

『ぅ、あっ、』

「ゆっくりでいい」

『ぁ、のね、』

「おう」

『名前、名前って、いうの、』

「おー、自分で名前言えんじゃねぇか。すげぇな」

『い、言えるよっ!あのねっ、名前っ、言えるのっ!おなまえっ!』

「すげぇ。んで、名前は好きな食いもんあんのか?」

『ハンバーグ!ハンバーグがすきだよっ!』

「んじゃ、ファミレスにすっか」



俺が呆然としていると左馬刻はいつもの間にか歩き出していた


慌てて追いかけると左馬刻はファミレスへと入っていった


そして左馬刻は店に入るなり、店員に子供用の椅子を頼み、席に腰掛けた



なにより、ちゃっかり名前の隣に腰掛けている


「名前はハンバーグだよな」

『うん!』

「なに普通に馴染んでんだ。お前は」

「あ?」

「あれだけ笑ってただろ」

「銃兎が子守りなんて笑うしかねぇだろ」

「俺はお前が子守してる方が笑えるけどな」

「笑ってねぇじゃねぇか」

「笑えるわけないだろ」

「どっちだよ」

『おなまえは?』

「「は?」」



名前は隣に座っている左馬刻を見上げ、そう問いかけていた


『おなまえは?なんていうの?』

「碧棺左馬刻」

『おいひ?』

「左馬刻だ。さまとき」

『さまときさん?』

「おう」

『さまときさん!』

「覚えんのはえぇな」

『うん!』


そう言って左馬刻は名前の頭を撫でていた


「んで?なんで名前は銃兎といんだよ」

『じゅーと?』

「俺だ」

『あっ!いるまさん?』

「お前入間さんって言われてんのかよ」

「悪いのか」



俺が答えると左馬刻はニヤリと笑って名前を見た


「俺は左馬刻だもんな」

『さまときさん!』

「ふっ」

「...そのドヤ顔やめろ」

「親はどうしたんだよ」

「おいっ、左馬刻っ」



俺が慌てて止めると左馬刻は眉間にシワを寄せ俺を見た


『あのね、名前のママとパパはこわいの』

「は?」

『名前が悪い子だから、ママとパパは怒るの』

「...?」

『いたかったけど、名前が悪かったから...』

「は?痛かった...?.......おい」

「...そーゆーことだ」

『だから、名前はいい子にするってきめたの』

「.....」

『静かに、いい子にしてればパパもママもやさしいんだよ!』

「...」


『でもねっ!名前がね!くるしい!って思った時にね!いるまさんがたすけてくれたんだよ!』

「...そうかよ。」

『いるまさんはすごいんだよ!!』

「...俺はお前の方がすごいと思うぜ」

『え?』



左馬刻は名前の頭に手を置くと左右に動かした


「我慢したんだろ?クソみてぇな両親の為に。
痛くても泣きたくてもお前はずっと」

『さ、さまときさん...?』

「名前の方がよっぽど強ぇよ」

『つよい?名前、つよい?』

「おう」

『ほ、ほんと?』

「ほんとだ。それにお前はちゃんといい子だしな」

『やった!!名前いい子!』

「おう。だからいい子な名前に俺様が特別に昼飯を食わせてやる」

『ありがとう!!』



左馬刻は名前の髪をぐしゃぐしゃと撫ぜると
メニューを名前に見せていた


『これ!名前これがいい!』

「ハンバーグじゃねぇのかよ」

『あ!ハンバーグ!...んー...』



名前は悩んでいるのか唸っていた


「どれで迷ってるんですか?」

『えっとね...、ハンバーグと、これ!』

「チキンステーキですか」

『うん!』

「なら、私がチキンステーキを頼むので名前はハンバーグを頼んでください」

『え?』

「そしたら私のチキンステーキを分けてあげます」

『っ!ありがとう!!』



俺がそう言うと名前は嬉しそうに笑っていた


メニューを頼み、名前と分けながら食べ終わると左馬刻はまたメニューを出し始めた


「は?まだ食うのか?太るぞ」

「うるせぇ。俺じゃねぇよ」

「は?」

「デザート食うだろ?」

『デザート!?』

「どれがいい?」

『ケーキ!ケーキ食べたい!』

「ケーキな。だってよ銃兎」

「はぁ...」

「あと食いてぇのはねぇのか?」

『えっと、えっと、でも...』

「気にすんな」

『...』


名前は正面にいる俺を不安気な視線を送ってきた


「気にしなくていいですよ」

『っ!じゃあね!名前ね!』

「おう」

『これも食べたいの!』

「よし。んじゃ頼むか」

『うん!!』




名前は食べ終わり眠くなったのか首がカクカクと舟を漕いでいた


「そろそろ帰りますか」

「銃兎の家に住んでんのか」

「あぁ」


左馬刻は名前の体をゆっくりと持ち上げると
片手で会計を済ませ外へと出た


「あっ、やべぇ」

「なんだ?」

「銃兎の分まで払っちまった」

「おい」

「冗談だ」


左馬刻は笑いながら名前の背中をリズムよく叩いていた


「左馬刻」

「あ?」

「なんでそんなにガキの扱い慣れてんだ
気持ち悪い」

「あ゛!?」



俺が素直に伝えると名前がいるのを気にしてかいつもよりも小さな声でキレていた




「.....俺、妹いんだよ」

「.....」

「なんだその顔は」

「信じられねぇな」

「嘘じゃねぇよ。」



左馬刻は遠くを見るようにそう答えた



「俺らもクソな親父に虐待されてたんだよ」

「...」

「だから、こいつの辛さは分かんだよ。
まぁ、俺らよりもこいつのが辛かっただろうけどな」

「...は?」

「俺らはお互いが居たから痛みを分け合えたけど、こいつは1人で耐え続けたんだろ」

「.....そうだな」




そう言って左馬刻は背中を向け歩き出した





「おい、何帰ろうとしてんだ」

「...」

「名前返せ」

「.....ちっ」





左馬刻に名前を会わせるのはやめようと決めた





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