ヤバい萌える




あれから数年経って三郎くんは中学3年生になったらしい。もちろんその分私も歳をとった。
三郎くんが小学生のうちは毎日のように山田家に通い詰めて、それはもう愛情を捧げ続けた。
けれどここ数年は仕事も忙しくなってあまり一郎とも会えていなくて、三郎くんにも会えていない。



つまり、私は飢えているのだ。



『…はぁああぁぁぁぁあ』

「何その大きな溜息。こっちまで気が重くなるからやめてくれる?もしくは息するのをやめてくれる?」

『サラッと死んでくれと言ったな?』

「あんたみたいなショタコンが生きてる事がショタからしたら不安要素でしかないのよ」

『待って。異議を申し立てる。私は健全なショタコンだ。別にショタ相手にハァハァなんてしないし。ましてや襲おうなんて思ってない。ただ私は触れたいのだ。ショタに。そしてその柔らかくすべすべの肌に頬擦りをしたい。』

「お巡りさ〜ん。この人で〜す」

『やめろ』




真顔で同僚の上げている手を降ろして睨む。すると何故か同僚が舌打ちをした。解せぬ。




「でもあんた前まで天使を見つけたとか言ってなかった?」

『何年前の話!?』

「あー、5、6年くらい前?」

『それを先週くらいの事の様に話してる事にびっくりだよ』

「私にとってはそれくらいどうでもいいのよ」

『……あれ?友達って何だっけ?』

「私寄るとこあるからあとは1人で帰って。じゃあね」

『えっ、私も一緒に…、話聞けよ!!』




彼女は私の返事など待たずに人混みに紛れて去って行った。……本当に友達ってなんだっけ?都市伝説だっけ?



『…こういう時はショタに限る』



傍から見たら危ない発言だが勘違いはしないで欲しい。私は健全なショタコンだ。



『うわっ、』

「っと、」

『すみません。前見てなくて』

「いや、俺も悪かった」


歩きスマホをしていたせいで前に人がいるのに気づかずに背中にぶつかってしまった。
相手は全く悪くないのに謝ってくれて、余計に罪悪感だ。



「って名前か。歩きながらスマホいじってんじゃねぇ」

『…げっ、一郎!』

「げっ、ってなんだ?」

『い、いや、何でも…』



一郎に片手で頭を掴まれて慌てて誤魔化すと、1度だけ大きく息を吐き出して手を離した。



「本当に危ねぇからやめろよ」

『うん、ごめん』

「にしても久しぶりだな」

『数年ぶりかな?』

「変わらねぇな」

『褒め言葉として受け取っておくね』




サラッと流すと一郎は思い付いたように両手を合わせた。勢いが良かったせいかパチンと小気味いい音が響いた



「家で飯食ってけよ」

『え?』

「お前の事だからどうせコンビニとかで済ませてんだろ?」

『流石一郎!よく分かってるぅ〜!』

「分かってるぅ〜じゃねぇんだよ」

『はい』



急に真顔になるのやめて。元ヤン怖い…。




******


「ただいまー!」

『お、邪魔します』

「ははっ、なんで他人行儀なんだよ。前なんて毎日のように来て、ただいまっつってたろ?」

『だから前って何年も前だからね!?そんな最近の話じゃないから!』



なんでみんな数年前を数週間前のように語るの!?怖いよ!!



キラキラしてるリア充には久しぶりに来た人の家の怖さが分からないんだ!小さい頃は婆ちゃんの家に入り浸ってたけど、何十年後に久しぶりの婆ちゃんの家に行くと気まずさやばいだろ!?それだよ!!私婆ちゃん居ないけど!!





「おかえり兄ちゃん!」

「おぉ、二郎!ただいま!」

「って、え?誰?」

「名前だよ。昔よく遊んでただろ?」

『お、お久しぶり、です…』

「えぇえぇえ!?名前姉ちゃん!?……確かに名前姉ちゃんだ!変わんねぇな〜!」

『…褒め言葉として受け取っておきます』




変わらないって言うけど、気づいてなかったよね?というか、二郎くん…。大きくなったね…。あんなにも可愛かったショタが見る影もない…。



『…二郎くんは、変わったね…、その、残念な方に…』

「えぇ!?残念な方に!?」

「名前の言葉は気にすんな。一種の病気だ」

『本当に失礼だな』





久しぶりの山田家でいつものように大声で突っ込むわけにも行かず、肩身が狭さを感じながらも不満を露わにする。



「おかえりなさい!一兄!」

「おう!ただいま!」




階段から顔を覗かせたのは可愛らしい男の人だった。


「……名前姉?」

『…え?』



私は呼んだその子はトタトタと私の前に来ると首を傾げた。



「…分かりませんか?」

『いや、分かるよ?天使でしょ?こんなに顔が綺麗な人間がいるわけない。…あれ?私死んだ?いつの間に死んだの?…あぁ、最後に三郎くんに会いたかった…。』

「…名前姉が会いたがってる三郎です」

『…………………!!!???』




私は驚きから後ろに下がると玄関の扉にぶつかり、ガタリと大きな音が立った



『え?…え?さ、三郎くん…?』

「はい」

『だ、だって、三郎くんは小さくて…、』

「いや、三郎だって成長するだろ」

『小さくて…、可愛くて…、そう、まるで、天使のような…、』

「名前姉ちゃん、三郎の事ついさっき天使って言ったよな?」

『そんなっ、三郎くんがっ、三郎くんがっ、こんなに成長してるなんて…!!』

「お、おい?名前?大丈夫か?」

「名前姉ちゃん?」








『ヤバい……萌える……』





私がそう言うと何故か一郎と二郎くんが三郎くんを背中に隠すように私の前に立った








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