01
『だぁってさぁー!!』
「飲みすぎだっての...」
『まだまだこれからだぜぇ〜』
「もうやめとけって」
『諦めたらそこで試合終了だよ?』
「ドヤ顔で何言ってんだ。酔っ払い」
『大人羨ましい?』
「全然。」
『私は子供が羨ましい』
「どっちだよ」
******
「はぁ!?明日合コン!?」
『違うよ〜。会社の人達と呑むだーけ!』
「それは二郎に言ってあんのかよ」
『ないよ〜』
「言えよ!」
「一郎は声が大きいねぇ〜、お姉さん頭痛くなっちゃう」
「酒のせいだろ!合コンみてぇなもんだろ?二郎にも言っとけよ?お前ら付き合ってんだから」
そう。私と一郎の弟である二郎は付き合っている 知り合ったきっかけは、まず私がヤンキーに絡まれている所を一郎に助けてもらってそこから山田家との交流が始まった。
そしてある日
「あの!名前さん!!」
『はーい、なんでしょうか』
「おおおおお、俺と!」
『うん』
「け、けけけ、けこ、けっこ」
『けっこ?』
「けっこ、ち、ちがう!」
『え、なに?違うの?』
「つ、つつつ、つき、つきあ、つきあ」
『?』
「俺と!付き合ってください!!」
『はい?』
「や、やったぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「よくやったぞ!二郎!」
「どもりすぎ童貞」
『え、いや、あの、今の“はい”って言うのは...』
「やったよ!兄ちゃん!」
「1回結婚って言い始めた時はヒヤヒヤしたぜ!でも流石は俺の弟だ!」
「うん!!!」
『えぇ...』
っていう流れだったけど今では私は二郎のことが好きだ でもそれでも不満はあるわけで...
『二郎がなんにも手を出さない!!』
「お、おう」
『いや、童貞っていうのは知ってるよ?三郎も言ってたしね?にしても手も繋がないって何!?キスとかがハードル高いのは分かる。童貞だからね?』
「お前は二郎をディスってんのか?」
『そんなわけないでしょ!でもさぁ、もうちょっと頑張って欲しい。この間なんて...』
『あそこのカフェ美味しかったねぇ』
「美味かった!今度兄ちゃんとまた来よう!」
『ほんとに一郎が好きだね』
「うん!兄ちゃんは凄いから!かっけぇ!」
『確かにかっこいい。喧嘩強いしね』
「そうなんだよ!」
『兄自慢かよ!!!』
「うぉ!机叩くなよ!零れんだろ。」
『普通そこは歩きながら手を繋ぐシーンでしょ!?兄自慢されて終わったよ!』
「な、なんか悪かった...」
『まぁ、そこが二郎のいい所でもあるんだけどさ...今どきあの年で兄を好きな人少ないでしょ?それはいいと思う。家族思いってことだし。 でもさ!もうちょっと、こうさ、甘い時間があってもいいと思います!』
「な、なるほど...」
『童貞だよ。わかってるよ。でも私だって経験ないし!キスはあるけどさ!』
「...俺はなんて言えばいいんだよ...自虐なのか自慢のかわかんねぇ。とりあえず今日は帰るぞ。ほら立てって」
『くっそぉぉぉぉ...』
「でも飲み会のことは言っとけよ」
『ねむい!!』
「話聞け!」
*****
「へぇ。名前ちゃん彼氏いるんだ?」
『はい』
「名前の彼氏年下なんですよぉ〜」
「え、そうなの?」
『...そうですけど(なんか悪いのかよ)』
「ふーん。」
はぁ...帰りたい。 一郎の言う通りほんとに合コンだったし。 結局二郎に言えてないしさぁ... てか、この男なに?だれ?てかなんで隣にいんの?
「名前ちゃんの彼氏どんな奴なの?」
『優しいですよ〜。かっこいいし』
「でも年下なんだよね?」
『...そうですよ〜』
ダメなのか!?年下じゃ!確かに年上が好みだけどな!! 近いし!なんなん!?しかもどんな奴って、奴って言うな!何様だよ!
「あ、次何飲む?」
『私はお酒好きじゃないのでもう大丈夫です』
「へぇ...ねぇ名前ちゃん」
『なんですか?』
「今から2人で抜けない?年下じゃ満足出来ないでしょ?」
『...は?』
「ね?」
『...私お手洗い行ってきます』
「考えておいてね」
考えるも何もありません!!!私の彼氏は二郎です!!!
『はぁ...帰りたい。体調悪いとか言って帰ろうかな、ん?』
トイレにある蛇口で手を洗いながら愚痴を零していると、携帯が鳴って相手を確認すると二郎だった。
二郎[今どこにいるの?]
『どうしよう...もう帰るし、家って言おうかな』
[家だよ]
二郎[行ってもいい?]
『え!?いつも夜来ないじゃん!』
[なんで?]
二郎[ダメ?]
[何も無いから]
二郎[別にいいよ]
粘るなぁ...とにかく帰ろう
私は急いでトイレを出て、飲み会が行われている場所に戻って荷物を手に取る。
『すいません、急用が出来たので帰ります』
「え〜!」
「じゃあ俺が送ってくよ」
「うわー!送り狼かよ!」
「ちげぇよ!」
『いや、大丈夫です。タクシーでも拾って帰るので』
「送るよ」
『...ほんとに大丈夫ですよ』
「送ってもらえばいいじゃ〜ん」
「友達もこう言ってるし、ね?」
『(ね?じゃねぇんだよ)』
仕方なく一緒に帰って、家が近づいて慌てて声をかける
『ほんとにここまでで大丈夫ですから』
「もうすぐ家なんでしょ?送るよ」
『彼氏来るんで大丈夫です』
「来たら帰るよ」
『.....あの!!』
「名前さん!!!」
いい加減に頭にきて、迷惑なのだと言ってやろうと口を開くと、突然名前を呼ばれて振り向くと息を切らした二郎が立っていた。
「家にいるって言うから来たのに、」
「これが彼氏さん?大学...いや、高校生かな?」
「...だからなんだよ」
「子供だね。名前ちゃんほんとにこんな奴がいいの?」
「あ゛ぁ?」
「こんなガキじゃ満足出来ないでしょ?俺にしとかない?」
「は?てめぇいい加減に」
『二郎』
キレ始めている二郎に気づいて、名前を呼んで袖を引っ張る
「…名前さん、」
『帰ろう』
「考えておいてね。名前ちゃん」
『失礼します。行こう』
「...わかった」
家に着くまでの道を無言で歩き続ける
「.....」
『.....』
「...名前さんは、」
『え?』
「名前さんはやっぱり年上の人の方が好き?」
『...一郎から聞いたの?』
「...うん、それにき、キスもしたこと、あるって」
『...まぁ、一応成人済みだしね(余計なことを...)』
「知ってると思うけど、お、俺、そういう経験全くないし、年下だし、高校生だし、でも、でも俺!名前の事ほんとに好きだから!! だから、だから、名前さんが、あの男の方が、良いって言うなら...」
『.......別れるの?』
「.....ごめん、」
『...私は別れるつもりは、』
静かに謝る二郎に心臓が嫌な音をたてる。
焦りから無意識に二郎に両手を伸ばすけどそれを掴もうとはしてくれなくて。自然と目の前が涙で歪んだ。
『っ、二郎、』
二郎は私に向かって手を伸ばしてくれてそれを掴もうとしたけど、その手が掴まれる事はなくて。 二郎の手は私の手を通り過ぎて、二郎の手は私の胸ぐらを捕んでグイッと引っ張られると私は必然的に二郎に近づくことになる
『「いった!!」』
『っーーー』
「ご、ごめん!!!だ、だだ大丈夫?」
『いったい...唇切れた』
「勢い良すぎた...ほんとにごめん...」
『胸ぐら掴んでキスする奴があるか!!絶対これ明日腫れるよ...二郎も唇切れてるし、はい、ハンカチ』
「い、いいよ!名前さん拭いて!」
『私はティッシュあるからいいよ。ほら』
「あ、ありがと...ぅ、っ、ふっ」
『え!?泣くほど痛かったの!?』
「ち、ちが、おれ、俺かっこ悪い...キスも上手くできないし、っ、年下だしぃ、名前さんの為には別れた、ほうが、いいのかもしれないのに、おれ、別れたく、ない!」
二郎はボロボロと涙を流して、両手をグッと握りしめていて肩も見ても分かるくらいに力が入っていた。
『はぁ...。二郎顔上げて』
「むり、俺いますげぇ、ダサい」
『顔をあげる!』
「ぅ、」
無理やり二郎の頬を掴み目線を合わせた
『二郎』
「な、なに?」
ゆっくりと二郎の唇に自分の唇を重ねる。その瞬間に唇が少しピリッとした。
「へ、」
『私は二郎が好きだよ。ダサくて、年下で泣き虫の童貞だったとしても好きだよ。』
「...童貞は余計だろ...」
『私は二郎のことが好きなのに別れないといけないの?それとも二郎は別れたいの?』
「別れたくない!!!」
『ん、なら問題ないね』
「...でも」
『でももだってもありません!好きなんだから別れない!はい!終わり!』
「うん…、ありがと、名前さん」
『うん』
「...ねぇ名前さん」
『はいはい、まだなにか?』
「...あのさ、」
二郎は私の袖を掴んで、私の顔を覗き込むように言葉を紡いだ
「もっかい、キスしてほしい」
『…二郎、』
いや、それは二郎からしてよ。
君にとっての一番は
俺でありたい。
そんなの、私だってそうだよ
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