05







『体育祭?』

「あぁ、今週の土曜に二郎の体育祭があるんだけど寂雷先生に呼ばれてて行けなくなっちまったから代わりに三郎と行って欲しいんだけど...。大丈夫か?」

『まぁ、休みだからいいけど...。でも三郎が来るのは意外かも』

「もし名前が絡まれたら大変だろ。二郎が」

『ジロウガ』

「僕は一兄が言うから仕方なくです」

『イチニイガ』



私は…?



『三郎くーん!お迎えにあがりましたー!』

「お!今日は頼むな。」

『はいよー。三郎は?』

「いますよ」

『お、おはよー。ちゃんとした私服見たの初めてかも』

「...なにか文句でも?」

『いや?かっこいいなぁと思って。流石は山田家DNA』

「.....さっさと行きますよ」

『褒めたのに...。三郎に嫌われてんのかな...』

「いや、そんなことないと思うぞ。むしろ三郎は.....っ!まぁいい。気をつけて行ってこいよ」

『…?はーい』



一郎が何か言いかけたのが気になったけど、三郎を待たせるのも悪いと思って、話を切り上げた




というわけで来ました。体育祭!!



『意外と保護者来てるんだねぇ。私が高校生の時はほぼ来てなかったけどなぁ』

「...僕だったら一兄だけ呼びます」

『私もついて行くね』

「...話聞いてましたか?」

『はいはい、一兄、一兄』

「っ!おいーーーーー」

「名前さんっ!?」

『あ、二郎!』

「なんでここに!?いや、嬉しいけどっ」

『あー!二郎っ!二郎だけだよ!!』

「えっ、え?なに?え?」


私はずっと一兄∞二郎∞三郎≠フ為とかしか聞いていない中で私が来たことを喜んでくれたあまりの嬉しさにその場で二郎に抱きついてしまった


「え、え、どうしたの?え?」

『あ、今日は一郎来れないんだって。だから代わりに私と三郎で応援に来たよ!』

「ほんと!?」

「...僕は一兄に言われて仕方なく」

「...ほんっと、可愛くねぇな!」

『まぁまぁ、なんの競技出るの?』

「俺は個人では徒競走と借り物競争で、クラスで綱引きと騎馬戦かな」

『出るの多いねぇ。頑張ってね』

「っ!うん!!頑張る!!見てて!」

『え、うん。見に来たんだから見るけど』

「おーい!!二郎!!集合!」

「あ、おうっ!わかった!...じゃあまた後で!」

『はーい』


二郎は友達に呼ばれて私に手を振ってクラスの方へと走って行ってしまった。


私が体育祭で楽しみにしていたのは、もちろん二郎の活躍だけど…。もうひとつあるのだ。



『体育祭って食べ物売ってるかな?』

「...」

『デブですいません』

「何も言ってないですよ」

『ないかぁ...』



少し落ち込みながら、レジャーシートに腰を下ろして校庭を眺める



『あ、二郎出てきた』

「...」

『聞いてる?...ま、いっか。最初は...、徒競走か。ねぇ、二郎って足速いの?』

「...」

『まぁ、山田家DNAだから速いか...



二郎は私たちに気づいて片手を上げてブンブンと元気よく手を振っていた。
順番が来ると真面目な表情になって、ピストルの音と同時に走り出す。



『おぉ、1位だ。山田家のDNA万能過ぎない?』

「...ドヤ顔腹立つ」

『声怖すぎ。...喜んでるのめっちゃ可愛い。』



二郎の出番がない時には三郎とボードゲームをして時間を潰す(手加減してくれなくて全敗だった)



『次は借り物競争か...。懐かしいなぁ。出たことないけど。...あ、二郎だ。.....スタートした!』

「は?こっち来てる。」

『え?』

「三郎!!来い!!」

「は?」

「いくぞ!!」

「おいっ!はなせ!」

『...行っちゃった』



物凄い速さで三郎が攫われて、ぽかんとしていると声をかけられる


「お姉さん、一緒に来てもらっていいすか?」

『...え?』







「ぜぇ、はぁ、」

「ほん、とっふざけんなっ、」

「しょうが、なぃだろっ!お題が、兄弟、だったんだから!」

「くそっ、はぁ、」

「って、あれ?名前さん、は?」

「...は?」



男の子はバッと腰を折って、私に頭を下げる。慌てて両手を降って声をかける





「ありがとうございました!」

『そっ、そんな!私なんかでよければ!』

「本当に助かりました!お姉さんのおかげで1位が取れました!」

『い、いえ。それじゃ』

「あ、待ってください。お姉さんって二郎のお姉さんっすか?」

『え、いや、』

「おい!!」

「お、二郎」

「何してんだよ!」

「ん?いや借り物手伝ってもらってさ、それで見に来てたから二郎のお姉さんかなって」

「ちげぇよ!名前さんは俺の彼女だよ!」

「えっ!!二郎彼女いたのかよ!!すいませんでした...」

『いやいや!!全然気にしないでください』

「お姉さんが二郎のお姉さんだったら狙ったのになぁ」

「はぁ!?」

「冗談だよ」

「っ!もう昼だろ!?俺は名前さんと食うから!」

「へいへい」

「ほら名前さん!行こ!」

『え、あ、うん!』

「お姉さんまたね!」

「また、はない!!」



二郎に手を引かれてレジャーシートを目指して歩く。



「ってなんでお前は先食ってんだよ!」

「来るのが遅いんだろ」

『あ、お弁当ある場所分かったんだ。よかった』

「...俺も食う」

『うん、食べよ!卵焼きとおにぎりは私が作ったんだよ』

「ほんと!?って三郎!卵焼き食うな!」

「別に二郎のじゃないだろ」

「おにぎりも食ってるし!」

『まだまだあるから』


仲良く3人でご飯を食べていると...


「あ!!いた!」

「あ?」

「なぁ!午後の二人三脚出てほしいんだよ!」

「はぁ?なんでだよ」

「なんか出るはずだった田中が怪我したらしくてよ...。それで二郎に頼みたいんだよ!」

「...やだよ」

「頼むって!!組むの美幸ちゃんだからさ!!なっ?美幸ちゃんなら可愛いから!頼む!!」

「関係ねぇよ。悪いけどパス」

「なんでだよぉ〜!」

「....」




二郎はチラチラとこちらに視線を寄越してた

多分私に気を使ってだろうなぁ...





『出てあげれば?』

「...え?」

『クラスの子が困ってるんだから出てあげなよ。一郎だったらそうするだろうしさ。ね?』

「.........名前さんが言うなら...」

「やった!!!まじありがとう!!」

「...」

『ほら、ムスッて顔しないで!体育祭なんだから
いっぱいでた方が思い出になるじゃん!』

「...二人三脚は別に出たくなかった。」

『...』




助けを求めて三郎を見るけど三郎は携帯の
ボードゲームに夢中でこちらに気づいていない。




『.....私は二郎のかっこいい姿が沢山見れて嬉しいけどな...』

「...ほんと?」

『うん。徒競走の時も、借り物競争の時もすっごくかっこよかったよ。』

「...そっか、」







ちょろい。






「んじゃ、行ってきます」

『いってらっしゃい。頑張ってね』

「うん!」

『.......さっきわざと気づいていないふりしてたでしょ、三郎』

「.......なんのことですか?」




くそがきめ。





「じゃ、頼んだぞ!!二郎!!」

「おう」

「よろしくね、二郎くん」

「...よろしく」



アナウンスで次が二人三脚と聞いて、スマホから顔を上げる



『あ、出てきたよ!うっわ!相手の子可愛い!ほっそ!ちっさ!』

「...うるさい」

『みて!可愛い!いいなぁ...。』

「...ほんと変わってる」

『え?なに?悪口?』

「独り言です。」



そう言ってそっぽを向く三郎のほっぺを掴んで左右に引っ張る



「はっ、離せっ!」

『ゆっ……ゆで卵!?』

「はぁ!?」


引っ張っていた手を離して、頬を包み込むようにスベスベツルツルな肌を堪能した



『何このスベスベ素肌!キィ〜〜!!羨ましい!!なんの洗顔を使えばこんな肌になれるの!?三郎って洗顔のCM出てたっけ!?私なんて高い洗顔使ってもニキビできたんだよ!?許せない!も〜〜!!離したくない!この素肌!』

「うるさいっ!とにかくっ、はなっ、せ、」


三郎は何故か弱い力で私の両手を掴むと頬を真っ赤にして私を睨んだ。



『そんなに強く掴んでないんだけど…。頬真っ赤だけど大丈夫?ごめんね?』

「別に大丈夫ですけど!?」

『おっ、怒んないでよ…。ごめんって〜』



今日の三郎は情緒不安定なの?



「応援席にいるのお姉さん?」

「...彼女」

「へぇ。歳上なんだ」

「...そうだけど」

「でも歳上より同い年の方が良くない?」

「別になんでもいい。俺が好きなの名前さんだし」

「..そんなに好きなんだ」

「まぁな。始まるぞ」





落ち着いたのか、三郎は頬を拭うように何度かさすると不機嫌そうに目を細めた



「なんか、あの女無駄に近くないですか?」

『え?そう?二人三脚ってああいうもんじゃない?』

「.....どうでもいいけど」



流石の運動神経と言ったところか、二郎達は難なく1位を取っていた



「おー!やっぱ二郎に頼んで良かったわ!!1位じゃん!!さっすが!」

「ん、終わったからテント戻る」

「あの、二郎くん!」

「...なに?」

「あの、私、ずっと、」

「...俺、テント戻るわ」

「え、じろ、くん、」






「(あー、名前さんに触りたい...。てか、俺頑張ってるよな...。本当だったらこんなに本気でやる予定じゃなかったし...。ご褒美くらい貰ってもいいんじゃ...?キスとか、抱きしめてくれるとか...。あ、今日の帰りデートしてもらおうかな...
そうだ、デートしてもらお)」





『いやー!やっと終わったねぇ!』

「...やっと帰れる」

『お疲れ様〜!ビデオも撮れたし!』

「は?ビデオ?」

『うん、一郎のためにビデオ撮っておいた』

「二郎のなんて見たくもない」

『いや、一郎の為だからね?』

「名前さんっ!」

『あ、おつかれー!』

「ありがとう!あのさ!帰りなんだけどっ!」

「おーい!二郎!今日打ち上げあっからその話し合いだってさー!」

「え?あ、」

『ほら、友達待ってるから行かないと』

「え、でも、」

「ほら、行くぞ!!」

「え、ちょ!!名前さんっ!」

二郎は引き摺られる様に引っ張られてい行ってしまった。
私は三郎を無事家に送り自分も家へと帰った
もちろん一郎にビデオを渡してから。




家でダラダラとしているとピコンと短い音がスマホから響いた



一郎[今すぐ家来れるか?]

[行けるけど...。どうしたの?]

一郎[とりあえず、早めに頼む]



どうしたんだろう。
ビデオ撮れてなかったとか?



『おじゃましまーす!』

「やっと来たか!!」

『え?なに?え?』



一郎に腕を引っ張られてリビングに連れて行かれる


『え、何この状況...』

リビングのソファの端に体育座りをしている二郎が居た。
心做しか表情が暗い気がする。



「じゃ、あとは頼んだぞ。俺と三郎は自分たちの部屋にいるからな」

『えっ!?なに!?ちょっと!......えぇ...』




とりあえず、二郎に話を聞くのが先か...

私は二郎の目の前に膝をついて座った




『二郎?どうしたの?』

「.....名前さん」

『ん?どうした?』

「.....なんで、先帰ったんだよ...」

『...え?いや、だって、打ち上げって...』

「...断ったのに...」

『え!?断ったの!?打ち上げ!?』

「...俺、体育祭、頑張ったから、帰りにデートしてもらおうと、思ってたのに」



えぇ...。だって打ち上げ行くと思うじゃん?




『あー...。ごめんね?打ち上げ行くと思ってて...』

「...二人三脚だって、名前さんが言うから出たのに...」

『クラスの子達困ってたし...』

「そうだけど...。名前さん以外の女と肩組みたくない」

『お、おう...』

「...頑張った、のに、」





最近思うんだけどさ...、

二郎って彼女ポジなの?

今それを言ったらさらに状況は悪化するから
言わないけど...




『ごめんね、二郎。デートは出来なかったけど
二郎頑張ってたから、なんか1つお願い聞いてあげる。』

「...ほんと?」

『うん。ほんと』




私がそう言うとずっと膝に埋めていた顔を上げて私と視線が合った



「...あの、俺、」

『ん?』

「き、キス、して欲しい...、」

『.....じゃ、目閉じて?』

「...ん、」



まつげ長っ!やっぱ顔綺麗だな...

山田家DNAすごくない?羨ましいんだけど...

私がキスをしないのを不自然に思ったのか

うっすらと目を開けて、その目には涙が少し
浮かんでいた

「...してくれないの...?」

『あ、する、するする、』

「ん、」

『...ん、....許してくれた?』

「.....」





キスが終わった時に満足気な顔をしてたのに機嫌が直ってないと言い、私はずっと二郎のかっこよかった点を延々と言わされた...








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