5







「銃兎」

「なんだ」

「お前もしかして明日仕事かよ」

「...?当たり前だろ」

「...まじかよ」



俺が答えると左馬刻は信じられないものを見るような目で俺を見た



「なんか文句でもあるのか」

「俺はねぇよ」

「は?」

「明日、クリスマスイブだろ」

「.......」

「名前どうすんだよ」

「.........」

「まじで忘れてたのかよ」

「...........」

「俺はちゃんと買ってあるぜ」





なんにも用意してねぇ...






『あっ!おかえりっ!』

「...名前」

『なぁに?』

「.....いえ」



名前が寝た後、ネットで必死に探しても
何がいいのかもわからない

それに次の日に届く物でプレゼントになるようなものも無かった



「...どうするか...、」




それに明日は仕事

ついでに言えば、クリスマス当日である明後日も仕事だ



「.....くそっ、」











『今日はさまときさんのところ行くの?』

「いえ、今日は仕事なので行きません」

『そっか...』

「...1人で留守番出来ますか?」

『できるよ!名前は1人でいれるよ!』

「.....」



きっと普通のガキはこの年で1人で家に残されることなんてない

けれど、名前の中では1人で待つことが当たり前になってる



「...すぐに帰ってきます」

『いってらっしゃい!』



すぐに終わらせないといけないな





「なんか今日、入間さん仕事早くね?」

「いつも早いだろ」

「いや、そーじゃなくて...。なんか、こう、」

「彼女でもいるんじゃね?」

「あぁ、なるほどな」




なんて言葉が聞こえてくるが今日は全てを無視する


昼飯ですら適当に済ませ、仕事を再開する



「(プレゼント...、どうするか...、)」




仕事を終わらせ、近くにあるおもちゃ屋に急いだ


「(どれが欲しいとか、わかんねぇな)」


それに、名前がおもちゃで遊んでいるのを見たことがない


基本的にはテレビを見ているか寝ている


いや、それしかやることが無かったんだろう


あの親元でガキが遊ぶ物なんてあるわけねぇしな



家に名前を置いてきてしまっている

早くしなければと焦り、足早に街を歩いていると




「...、」



ある物が目に入り、俺はその店に入り購入した




「ただ今戻りました。.......?」



いつもなら声をかけるとすぐに名前が寄ってくるはずなのに来ない


急いでリビングの扉を開けると





『あっ!いるまさん!おかえりなさい!』

「遅せぇよ!」

「お邪魔している」

「左馬刻...、理鶯...、」




リビングには自宅のようにくつろいでいる左馬刻と
名前と遊んでいる理鶯がいた



俺に気づくと名前は俺のそばに寄ってきた



『おかえりなさい!』

「...ただいま」



頭を撫でてやると名前は嬉しそうに笑った



「おい、銃兎。食いもん買ってきてねぇのかよ」

「...」

「仕方ねぇから俺様が買ってきてやった」

「小官は台所を借りた」

「!?」

「具材は俺様が買った」

『今日ね!すごいんだよ!』



名前は興奮気味に俺のズボンを引っ張りながら話していた


『ご飯がね!いっぱいあるの!お肉もあった!
おっきいお肉があるの!』

「...そうですか」



名前に手を引かれ机に向かうと、机の上には左馬刻が買ってきたであろうケーキと七面鳥があった



『すごいでしょ!』

「そうですね」

『誰かのお誕生なの?』

「「「え?」」」




名前は純粋にそう思っているのか首をかしげていた



「いや、おい、今日は、クリスマスイブだろ?」

『...くりすます?』



左馬刻が焦ったように名前に聞くと当の本人は首をかしげた



『くりすますってなに?』


名前は俺のことを見上げ、そう尋ねた


「クリスマスっていうのは、」


俺が言いかけると左馬刻が立ち上がり名前を抱き上げた



「クリスマスっつーのは、サンタっていうおっさんが子供にプレゼントをやる日だ」

「おっさん...、」

「いや、クリスマスというのは...」


理鶯は本当のクリスマスの意味を伝えようとしていたが俺が止めると素直に口を噤んだ


『そーなの?』

「おう。いい子にはプレゼントくれるんだってよ」

『...名前、もらったこと、ない...、』

「...、」



泣きそうになっている名前の頭を撫でてやると
涙を溜めた目を俺に向けた



「サンタから貰えなくても、俺たちがいるから名前は寂しくないだろ」

『っ!...うん!!』



そう言うと名前は頬を真っ赤に染め笑った





「...寝たのか」

「寝たみたいですね」

「ソファでは風邪をひいてしまうぞ」



沢山食べて遊んだせいですぐに眠くなったのか
名前はソファで寝てしまった


「お前、プレゼント買ってきたのかよ」

「まぁ、な」

「小官も持ってきたぞ」




名前の体を静かに持ち上げ寝室へと連れていく



体を下ろすと、左馬刻と理鶯は周りにプレゼントを置いていた



そして2人は名前の頭を撫でるとリビングへと戻って行った



「...」



俺もプレゼントを置くと眠っている名前の頭に手を置き、部屋を後にした



「お前、仕事ん時に名前1人にしてんだろ」

「...まぁ、そうだな」

「防犯ちゃんとしとけよ」

「してる」

「今日、理鶯と来た時に俺だ≠チつったら
名前ドア開けたぞ」

「は、」

「最初はチャイムを鳴らしても音沙汰が無かったのだが、声をかけたらすぐに名前が出てきたな」

「はぁ...、」

「ガキひとりなんだからちゃんとしとけよ」

「わかった...」




左馬刻と理鶯は好きなだけ呑むと帰って行った



寝るために風呂に入り、寝室に入ると名前は
気持ちよさそうに眠っていた

静かにベットに腰をかけ、名前の頭に触れる


「...名前」




最初は仕方なく引き取っただけだった


仕事の一環だと、仕方なく


すぐに施設に入れるつもりだった



けれど、いつの間にか家に名前が居るのが当たり前になっていた


俺を見るだけで嬉しそうに笑う

汚れた俺の手を嬉しそうに握る



汚ぇ俺を汚れの知らない瞳で見つめる




それが心地良かった




「ふっ...、」




俺は名前の眠るベットに入り、眠った








『い、いるまさん!!!』

「おはようございます」

『お、おはよう、ございます!!』

「どうしたんですか?」

『みて!みてみて!!』




名前は起きてリビングに入るや否や、
両手に箱を抱えていた



『こ、これっ!!』

「サンタからのプレゼントですかね」

『ほんと!?』



名前嬉しそうに笑っていた




『あ、あけていいの?』

「名前のですから、好きにどうぞ」

『やったぁ!!』



名前は丁寧にプレゼントの装飾を外すと
次々と開けていった




『わぁ!!てぶくろ!!!』

「...」

『みて!てぶくろだよ!』

「そうですね」

『やったぁ!ふふっ、でぶくろ!』




俺のあげたプレゼント.....手袋を手にはめ、嬉しそうに両手を頬に当てていた



『ふふっ、あったかい...』


俺は名前の前に膝をつき、両手を取った



「今度、これを付けて出かけましょうか」

『っ!.......うんっ!!!!』






たまには、悪徳警官が子供の為にらしくないことをしても良いだろ




今日はそういう日なのだから














×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -