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『りおー!』

「ん?なんだ?」

『だっこ!』

「了解した。.....これでいいのか」

『うんっ!』

「「.......」」

『あっ!あのね!りおー!』

「なんだ?」

『名前ね!この間ね!!』

「あぁ、ちゃんと聞いている。ゆっくりでいい」

『お買い物のときにね!』

「あぁ」

「「.......」」



俺の目の前には理鶯が名前を抱き上げていて
名前は嬉しそうに笑いながらこの間あった話をしていた


「おい」

「...なんだ」

「あれ、お前より懐いてんじゃねぇの」

「...うるせぇ」

「.....懐くのはやすぎだろ」




理鶯と名前を会わせたのは本の数時間前だった



『...?今日はどこにいくの?』

「今日は左馬刻の所に行きます」

『っ!さまとき!』



そう言うと名前は嬉しそうに繋いでいた手をぶんぶんと振った



左馬刻のとこの下っ端に通してもらい中に入ると
そこには左馬刻と理鶯がいた


「おや、理鶯も来ていたんですね」

「遅せぇよ」

「あぁ、小官を左馬刻が呼びに来てくれてな」

「そうなんですか」

「...名前?」


左馬刻が名前を呼ぶが、名前は俺の足の後ろに隠れていた


「名前、理鶯は大丈夫ですよ」

「だから出てこい」

『...』


俺達がそう言っても名前はズボンをつかみ
顔を押し付けるように左右に首を振った




「...?」


理鶯は首をかしげていた


「名前は訳あって私が預かっているんです」

「そうなのか」

「おい、理鶯っ」




そう伝えると理鶯は立ち上がり俺の足元にしゃがみ込んだ



「小官は毒島メイソン理鶯という。」

『...』

「名前を聞いてもいいだろうか」

『っ、名前...、』



名前は小さな声でそう答えていた



「そうか。名前というのか」

『...』




足の後ろからじゃ見えるわけないのに名前は首を縦に1度振った




「とてもいい名前だな」

『.......へ』

「綺麗な名前をしている」

『.....』

「きっと愛情を持ってそう名付けてくれたんだな」

「理鶯っ、」




俺が慌てて理鶯に声をかけると、理鶯は首をかしげて俺を見上げた


どう説明しようか迷っていると、名前は首を足の後ろからちょこんと出した



『そう、なの?』

「...?」

『ほんとうに、名前のお名前は、きれい?』

「あぁ」

『ママとパパが名前のこと好きで、このお名前くれたの?』

「小官はそうだと思うぞ」

『.....そっか』



すると名前はゆっくりと体を出すと、理鶯の前に立った



『名前は、ぶすじまさんのお名前も、かっこいいと、おもう...』

「理鶯だ」

『りおー、さん、』

「理鶯でいい」



そう言って理鶯は名前の頭に手を置いた



「小官はそう思う」

『そっか、そっかぁ...』



理鶯に頭を撫でられ、そう言われて名前は嬉しそうに笑っていた



『あ、あのねっ、』

「なんだ?」

『名前も、このお名前、好きなの...』

「そうか」

『ママとパパがつけてくれたの...』

「そうか」

『すきなんだっ』

「小官も好きだ」

『っ!あのねっ、あのね!』

「あぁ」




理鶯に慣れたのは安心した





けれどこんなに懐くとは思わなかった




『りおーはなにしてるの?』

「なに、というのは」

『いるまさんはけいさつかん、っていうお仕事なんだって』

「小官は海軍だ」

『...かいぐん?』

「名前には少し難しいかもしれん」

『そっか〜...』

「海軍は小官にとっての誇りだ」

『りおーはかいぐんがすきなの?』

「好き.....、ふむ、まぁそうかもしれないな」

『じゃあ、名前もすき!!』

「そうか」



そう言って理鶯は少し笑っていた




「なんであんなに懐いてんだ」

「私が知るわけないでしょう」

「...理鶯の野郎」

「...」

「おい!名前!」


左馬刻が大きな声で呼ぶと名前は首をこちらに向けた



『...?なーに?』

「こっちこい」

『...』



すると名前は理鶯の服をクイッと引っ張り
理鶯が抱き上げたまま左馬刻の近くへと来た



「「.....」」




名前と理鶯は一緒に首をかしげていた





俺と左馬刻はイライラしながらその日を過ごしていた




「...そろそろ帰りますよ」

『.....うん』



俺が声をかけると名前は少し寂しそうに理鶯から離れて俺の元へと来た


左馬刻は苛立ちがピークに達して外にタバコを吸いに行っていた



「理鶯はこの後どうするんですか?」

「小官は左馬刻が戻ってくるのを待っている」

「そうですか」

「またな、名前」

『バイバイ...』



名前は握っている俺の手に力を入れ、
寂しさに耐えているようだった



「(なんで俺が罪悪感感じてんだよ!)」



「今度は小官のキャンプ地に来るといい」

『きゃんぷち?』

「あぁ、小官が暮らしているところだ」

『いきたい!!』

「待っている」

『うん!!』



そう言われ、名前は元気に頷くと素直に
俺についてきた



理鶯が見えなくなるまで手を振り続け、見えなくなると元気に繋いでいる手をぶんぶん振り始めた



『きゃんぷち行きたいな〜...』

「そうですね」

『りおーいい人だった!』

「そうですね」

『たのしかった!』

「そうですね」

『...』

「っ、...名前?」




急に名前が立ち止まり、足を止めると名前は俯いていた



「どうかしましたか?」

『い、るまさんは、』

「はい?」

『いるまさん、名前のこと、嫌いになった?』

「...は?」




名前は涙を我慢しているのか顔を顰めていた

けれどその瞳からはボロボロと涙が落ちていた



「どうしたんですか?」



俺が名前の前にしゃがみこみ顔を覗き込むと
名前は顔を上げた



『きょうっ、いるまさんっ、ずっと、怒ってた、からっ、』

「...」

『さ、さまとき、もっ、怒ってた!』

「違いますよ」

『名前のことっ、嫌いになったからっ?』

「名前」

『名前がいい子にしなかったからっ?』

「名前」

『きょうっ、わがままたくさん言ったからっ?
言わないっ、もう言わないからっ、だからっ、』

「名前っ!」

『っ、』



俺が少し大きな声で呼ぶと名前は1度体を揺らした


「違います。名前が悪いんじゃないんです」

『でもっ、でもぉっ!』

「それに、わがままなんて言ってないですよ」

『っ、うぅっ、』

「わがままはもっと言ってください」

『ぅっ、っ、』

「ちゃんと、聞きますから」



俺が少し手を広げると名前は勢いよく俺の服にしがみついた



頭と背中に手をやり、リズムよく叩くと名前はさらに大きな声で泣いていた




『名前っ、名前ねっ!』

「はい」

『いるまさんっ、すきだからっ、いっしょに、いたいのっ、』

「俺も名前のこと好きですよ」

『あぁぁ〜っ!』




名前は大きな声で泣き、俺のスーツに顔を押し付けていた


会ったばかりの時はスーツが汚れるから離れろと離していただろうに、今の俺は素直に受け止めしまっていることに少し自分で笑った





名前の声が聞こえなくなり、顔を覗き込むと名前は眠っていた



「...仕方ねぇな」



理鶯と遊び、思いっきり泣いた疲れが出たんだろう



俺は小さく軽い体を持ち上げ、歩き出した







腕に苦しくないくらいの力を入れ、腕の中に眠る暖かい温もりを抱きしめた








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