私のとある1日目

「…………」




侑は今にも泣きそうに瞳に涙を溜めて道端に蹲っていた。




「……みんな、どこ行っとんねん、」





そう言って抱えた膝に顔を埋めるとポンポンと肩を叩かれた感触がして慌てて顔を上げると知らない女性が立っていて侑は警戒心を露わにする。




「だ、誰や…、」

『きみ、迷子?』

「ちゃう!俺以外が迷子や!」

『お名前と何歳か聞いてもいい?』




侑は眉を寄せると女性は困ったように眉を寄せて笑って近くにあったたこ焼き屋さんを指さした。




『えっと、方言的に関西の子かな?良かったら私が買うからたこ焼き食べない?』

「………」




侑は1度眉を寄せてから立ち上がった。






「おっ、お前がどうしてもって言うから食うたる!」

『ふふっ、ありがとう』




侑はお店に置かれているベンチに腰を下ろすと女性はたこ焼きを2つ買って隣に座り、たこ焼きを渡す。





『それで?家族とはぐれちゃった?』

「……俺がはぐれたんとちゃう。オカン達が迷子やねん」

『そっか〜。じゃあ早くお母さんたち探してあげないとね』

「おん…」




女性はそう言ってたこ焼きを放り込むと美味しそうに咀嚼した。それにつられて侑もたこ焼きを食べると、それまでは不安で気付かなかったが空腹に気付いてどんどん口に含む。




『君は、えっと、見た目的に小学生?』

「……10歳、……宮侑や」

『………侑くんか』




女性は噛み締めるように名前を呼ぶと、パッと笑って食べ終わったたこ焼きをの入れ物を閉めた。




『よしっ!じゃあ行こう!』

「は?どこに?」

『お母さんたちを探しに!』




女性は自分のゴミと侑のゴミを捨てると、侑の手を取って歩き出した。その足取りはまるで行く場所が決まっているかのようにしっかりとした足取りだった。





『侑くんは好きな事あるの?』

「バレーが好きや!」

『へぇ〜!じゃあ将来の夢はプロのバレー選手?』

「そうや!俺はプロになって活躍すんねん!」




歩きながら侑は楽しそうに話すと、女性はキュッと手に力を入れた。




『……なれるよ、侑くんはプロになれる』

「当たり前や!俺はもっともっと上手くなってプロになんねん!」




そんな会話をしながら女性は公園に着くと侑の手を離した。




『……ここに居ればすぐに家族に会えるよ』




そう言って数歩後ろに下がった女性に侑は不安になって慌てて手を掴む。




「待ってや!」

『………』




女性は目を見開くとしゃがみ込んで、コートのポケットから小物入れを取り出した。





『……これ、私の宝物なの』

「…これが?」

『そう。本当に大切なもの。これを侑くんに預けるから、また会えた時に一緒に開けよ?』

「……ほんまに、会える?」





侑が不安げに首を傾げて言うと女性はグッと唇を噛んで侑の小さな体を抱きしめた。





「……え?」





ギュッと抱きしめられて侑は目を見開くが、すぐに体は離れて女性はマフラーに口元を埋めると目元を緩めて笑った。





『……また会えるよ』





女性はそう言って背を向けて去ってしまった。






「……侑!!」

「……お母さん、」




侑はポケットに小物入れを仕舞って家族に駆け寄ると頭にゲンコツを落とされた。



「勝手に動いたらあかん言うたやろ!」

「……俺が迷子になったんとちゃうし」



侑は不貞腐れたように、さっきの女性がした様にマフラーに顔を埋めた。

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