3月12日 28日目
『楽しみだな〜!』
「せやな〜!」
建物の屋上で行われる大学のバレー部の集まりは、バレー部だけやなくて、彼女連れてくる奴居るって言うとったから名前が目立たんくて良かったな〜、なんて考える。やって、名前しか女子が居らんかったら絶対に他の男達ら名前に声かけるし。
「お〜!侑遅いぞ〜!」
「そんな遅れとらんやろ!」
扉を開けると暗いと思っていたのに様々な電飾で彩られて華やかになっとった。名前は嬉しそうに笑っていて俺もつられて笑って居ると、視線の先に角名が居て名前に小声で話しかける。
「あれが俺と同じ高校で今も一緒にバレーしとる」
『角名くん、だよね?』
俺がこくりと頷くと名前は角名の方へと駆け出して行った。
『角名くん!久しぶり〜!』
「苗字さん、侑とは仲直り出来た?」
『うん!ばっちり!』
今の名前は角名とは初対面やのにそれを感じさせない事に、今までもそうやって努力してくれたんやなって少し、柄にも無く泣きそうになった。
「仲直り出来て良かったね」
「おぉ、あんの時はありがとうな」
「素直にお礼言われると気持ち悪い」
「はァ!?」
俺が1人で柵に寄りかかりながらコーヒーを飲んどると角名が隣に来て煽るようにそう言うた。
「侑みたいなひとでなしと付き合ってくれる子なんて苗字さんくらいなんだから大切にしなよ」
「誰がひとでなしや!!」
角名は少し笑うと俺と同じように柵に寄りかかり、空を見上げた。
「まさか俺とか治より侑の方が幸せになるとは思ってなかった」
「……なんや、お前らは俺を幸せにした無かったんか」
「そういう訳じゃ無いけど…、ほら、ひとでなしだから」
「何回言うねん!ひとでなしちゃうわ!」
「あ、苗字さ〜ん!」
角名はお湯を配っていた名前を呼ぶと、名前はお湯を持ったまま小走りで俺らの前へと来た。
『どうかしたの?角名くん。…あ、お湯?』
「ううん。お湯担当は俺が引き継ぐから侑と帰っていいよ」
『え?』
「え?」
「周り知らない人で疲れただろうし、それにもう11時過ぎだしさ」
「ほんまや!送ってくわ」
『…うん、そうさせてもらうね。角名くん、ありがとう』
「いえいえ」
俺は名前の手を取って周り適当に挨拶をして、階段を降りた。
「さっきまで気付かんかったけどほんまに寒いな」
『本当にね〜。もう3月なのにね?』
「………せやな、3月やのに、」
忘れようとしても、もう3月
名前と出会って、28日目
「……名前、」
『ん?なに?』
「愛しとる」
『………』
立ち止まって名前の目を見て真っ直ぐに言うと名前は驚いた様に目を見開いとった。手帳に書いとらんかったんやな、未来の俺ナイス、なんて笑うと名前はポロポロと涙を零して繋がれていない片手で必死に涙を拭っていた。
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