2月29 16日目
「…名前」
『…おはよう』
「……お、はよ、」
朝9時にあの公園に行くと、名前は既にベンチに座って俺を待っとって見つけるなり優しく笑いかけた。
『早速だけど、話しちゃおうか』
それから名前はポツリポツリと話し始めた。
『……いきなり突拍子の無いこと言うけど、怒らないでね』
「…おん」
『私はこの世界の人間じゃなくて、こことは別の世界の人間なの。私の世界は侑が生活してるこの世界とは真逆に時が流れてるの』
「………は?」
『私は5年に1度この世界に遊びに来てて、今回で4回目』
「ちょ、…はァ?」
名前の話しを纏めると、 彼女は俺にとっては異世界人で俺とは時の流れが真逆だということらしい。そして5年に1度30日だけ俺の住んでいるこの世界に遊びに来てるらしい。つまり前回来たのは名前が15歳ん時で、その時の俺は25歳やったらしい。
現実味の無い話に俺はただただ呆然として動けなくなってもうた。
「……その手帳通りに行動しとったって事か?」
『この予定は侑の最後の日…、私にとって1日目に、侑自身が教えてくれた予定なの』
「……俺、自身…?」
勿論、俺にそんなに記憶は無い。当たり前や、やって名前が言うとるのは今から14日後の話やから。
フィクションの様な出来事に頭がパンクしそうや。試合中でもこんなに混乱した事無いのに。
「……そんな、話どうやって信じろ言うねん」
『うん、そうだね。信じられるわけないよね』
「……当たり前やろ」
名前はいつもと変わらん笑顔で笑うとまた話始めた。
『信じてもらうためにも開けちゃおっか』
名前はコートの中から小さな鍵を取り出すと、『小物入れある?』と言った。俺もポケットから小物入れを出すと名前は鍵穴に鍵を差し込みカチャリと解錠した。
『……中、見てみて』
「…………」
ゆっくりと中を開くと、1枚の紙が入っていた。心臓がバクバクと音を立てながら、そんなはずは無い、この世界の人間じゃないなんてありえへん、と思いながら震える手で取り出してひっくり返した。
「…………なんやねん、これ」
その紙は1枚の写真で、写っていたのは俺と名前
ーーそして俺の家族
「お、俺…、こんな写真撮った覚え無いで…。それに名前は治と会ったことも、治の事を話すらしてへんのに…」
『撮るんだよ。今から13日後の29日目に』
「……う、嘘や、」
呆然とする俺に気付かないのか、気付いていてあえて反応しないのか。名前は空を見上げた。
『侑が5歳の頃助けたのは35歳の私』
「……は、」
『…まだ侑に話してなかったけど、私も5歳の頃に死にかけてるの。……初めて来たこの世界のお祭りに行った時、爆発が起きて、……35歳の侑が救ってくれたの』
「…は?………は?」
『私たちはお互いの事をお互いで救いあったの。端と端の時間軸の時に…、お互いが5歳の時に』
混乱する頭の中で、いつも隣に居った筈の名前が酷く遠くに感じてしまった。
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