2月26日 9日目

「俺明日から合宿なんやて…」

『何日間?』

「……3泊4日」

『じゃあ荷物用意しないと!』

「……会えへんの寂しい」





俺がそう言って机に伏せると名前はクスリと笑って俺の頭を優しく撫でた。




『私も寂しいけど、バレーしてる侑は楽しそうだから好き』

「………もっかい言うて。特に最後のとこ」

『言いませ〜ん!』

「えぇ!?なんで!?」





俺がガバッと上体を起こすと名前はクローゼットから俺の大きなカバンを取り出すと、俺の前に置いた。



『しっかり準備してるところ見たら勝手に口が動いて言っちゃうかもな〜。ちゃんとしてる男性って素敵だもん』

「準備する!準備するから言うてな!?」




俺は立ち上がってタオルや着替え、歯ブラシをかき集めてカバンにドンドン入れていく。その間に名前はお茶を入れてくれとって、準備が終わる頃にはお茶は丁度ええ温度になっていた。




「準備終わったで!」

『おぉ!おめでとう!』

「言うて!俺の事どう思っとるか言うてや!」

『忘れ物ない?』

「ない!言うてや〜!」





俺が壊れない程度に机をバンバンと叩くと名前は少し呆れた様子と楽しそうな様子を混ぜたように笑った。





『しっかりしてて大人な侑が大好き』

「おっ、俺も!俺も名前大好きや!」




右手を上げて前のめりで小学生の様に言った俺に名前は吹き出して笑っとった。それが可愛くて、もっと笑わせたくてモノマネやモノボケ色んなことをした。



******




『合宿なんでしょ?送ってもらわなくて平気だよ?』

「あかん!夜は危ないヤツが多いねん!名前はすぐ襲われてまう!」

『え〜?この距離なのに?』

「この距離やのに!」




手を繋ぎながら駅まで歩いとると、名前は寒いのかマフラーに顔を埋めた。




『合宿楽しみだね』

「せやな!名前と会えへんのは嫌やけど、強いヤツとバレー出来るんは嬉しい」

『……侑はさ、プロのバレー選手になりたいの?』

「なりたい、やなくて、なる!」

『……そっか』





名前は目元だけでも分かるくらいに嬉しそうに笑っていて、何故か俺までが嬉しくなった。




『…なれるよ。侑はきっと』

「当たり前や!俺は世界に名を轟かせるセッターになんねん!」




俺がそう言って繋がれていない手を空に向かって向きあげると名前は繋いだ手にキュッと力を込めた。




『……うん、この時間なら12時までに家につける』

「門限ギリギリやったな…、ごめんな?」

『ううん、私が居たくて居たんだもん』




電車に乗った名前に向かい合って小さく手を振る。




『じゃあ、また明日…、じゃなくて、4日後に』

「おん、また4日後」



また明日、と言わない事に何となく変な感じがして笑うと、名前も同じことを思ったのか笑っていた。



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