星の三原色





『……確か、…ここら辺で待ち合わせのはず、』





大きい荷物を壁に寄せながら人通りの多い東京の町を見上げる。地元には無かった賑わいに名前は目が回りそうになっていた。これが東京。これが都会。名前は駅から出る時点で迷っていた。都会の駅は出口が多いことを知った。






『…………やばい、…不安になってきた』





大の大人が情けなく涙声になっていた。人通りの多さ、見知らぬ土地への不安感、知り合いがいない寂しさ。名前は既に帰りたくなっていた。





『…………侑…、』

「名前〜!!」






大声で名前を呼ばれて弾かれたように顔を上げると脳天気な笑みを浮かべてブンブンと右手を振る侑を見つけ名前は眉を寄せた。






「久しぶりやなー!元気にしとった!?」

『遅い!怖い!不安!孤独死するかと思った!』

「えぇ!?まだ待ち合わせまで時間あったはずやけど!?孤独死!?」





見慣れたジャージ姿の侑に名前は鳩尾目指して拳を振るった。当たり前に手加減はしているが、侑は予想通りというか、オーバーなリアクションをして苦しんでいた。





「ひっ、久しぶりの恋人に、何すんねん…」

『東京怖い!』

「なんでやねん…」

『人通り多いし!コンクリートだらけだし!都会だし!』

「神戸かて都会やろ」

『東京さんをその他と一緒にするなよ?日本の中心だぞ?』

「テンション可笑しなっとるやん。久しぶりで恥ずかしいんは分かるけど落ち着け」

『…………』




侑の言った通り、確かに久しぶりの侑に…、というか恋人となった侑に会うのは少し気恥しかった。それを見抜かれて名前はフイっと顔を逸らす。





「まっ、良かったわ。ちゃんと俺ん事男として見とって」

『……別に前から、見てたけど』

「前は弟みたいに思っとったやろ。今は恋人やから」





嬉しそうに頬を緩めて笑う侑に名前はグッと奥歯を噛む。この甘酸っぱさにどうも慣れない。





「……それじゃ行こか。俺達の愛の巣に」

『あ、今のでもう大丈夫。恥ずかしさ無くなった』

「はァ!?」





謎のドヤ顔とイケボを出して寒い事を言った侑に名前はスンッと真顔になって歩き出した。その後を慌てて侑が追って行き、道のりを急いだ。





『…………』

「……………」






そして徒歩10分のところを迷ったせいで40分かけて辿り着いたのはふたりだけの秘密だ。

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