青は青のまま




『ごめんね繋心くん。送って貰って』

「田舎は車が無ぇと駅まで行くのも大変だからな」




名前は朝早くから烏養の車に乗り最寄りの駅を目指していた。烏養の車の後部座席には大きなキャリーバッグに大きなリュックが存在感を放っていた。





『また宮城とはお別れか…』

「お前の事だから大丈夫だと思うが、相手は未成年だからな」

『分かってるよ。私があの子の重荷になるわけにはいかないしね』





そう言った名前の表情はどこが寂しそうな、諦めたような顔だった。そんな名前を見て烏養はフーっと息を吐いていた。





『…ありがとう、繋心くん』

「永遠の別れじゃねぇんだから気にすんな。本当はアイツらも見送りに来たがってたんだけどな」

『……おばさん泣いちゃう』

「残念ながら練習中だ」





烏野の谷地を含む5人の気持ちに名前はわざとらしく涙を拭う仕草をすると烏養がガシガシと頭を撫でた。





「何かあったら連絡しろよ。すぐには駆けつけてられねぇけど話くらいは聞いてやる」

『…………繋心くんがモテない理由が分かった』

「あぁ!?」

『良い人はモテないって本当だね』

「うるせぇ」






ポカリと頭を殴られて名前はクスリと笑って烏養の手に握られていたキャリーバッグを受け取り、リュックを背負い直す。





『いってきます!』

「おう。いってこい」





烏養の力強い言葉に背中を押されて名前はそのまま改札を通り電車に乗り込む。変わり行く景色に何故か涙が出そうになっていた。





『…神戸の時は、何とも思わなかったのになぁ』





そうポツリ零すと携帯が何度も震えて取り出すと、5件のメッセージが来ていた。




ーー東京で仕事頑張ってください!

ーー宮さんがうるさいんすけど。どうしたらいいですか

ーーいつでも帰ってきてくださいね!ツッキーも待ってますから!

ーー捨てられないといいですね

ーー都会でのお仕事かっこいいです!頑張ってください!




日向、影山、山口、月島、谷地それぞれからの連絡に名前は笑を零した。影山と月島に関しては励ましでもなかったが、名前には十分だった。





『……侑からだ』





ーー電車乗った!会えるの楽しみや





『………………』






燥いでいる姿が目に浮かび名前は小さく吹き出す。勿論、寂しさはある。短期間とはいえ、面倒を見ていた子達と離れるのは寂しい。けれどその反面、楽しみもある。






ーー私も会えるの楽しみ





そう送って窓を見ると辺りは桜に包まれてピンク色の空に変わっていた。


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