息をとめても心音がついてくる
「フフン〜♪フンフ〜ン♪」
「……機嫌良さそうやな、ツム。明日から一人暮らしが始まるから寂しくて泣いとると思っとった」
「泣くわけないやろ〜」
「……気持ち悪い程上機嫌やないか」
「俺は今、最強やねん。何言われてもキレへん自信がある」
「……………ブス、アホ、ひとでなし」
「同じ顔やろ〜」
「……下手くそ、ヘボセッター」
「下手くそちゃうわ〜」
「…………名前さんに振られろ」
「おい今の本心やろ!!ふざけんな!!」
「冗談も通じんのか〜。つまんない男やな〜。これは名前さんが飽きるのは時間の問題やな〜」
「飽きさせへんわ!名前は俺の事大好きやから平気やし!」
「前までモタモタしとったくせに偉そうやな」
侑が地団駄を踏むと、下の階から母親の怒号が飛んできて侑は慌てて地団駄を止める。そして部屋の隅にあるキャリーケースを開くと楽しそうに鼻歌を歌いながら荷物をまとめ始めた。その鼻歌が妙に上手い事が治を更に苛立たせた。
「鬱陶しいねん。今すぐ息するのを止めろ」
「率直に死ね言うとるな!?」
「おー、意味が通じて良かったわ」
侑は眉を寄せて治を睨むと、ハッとしたような顔をして次の瞬間にはニヤニヤと笑みを浮かべて治と肩を組む。
「……そうか、お前寂しいんやろ?」
「…あ゛?」
「わかるわかる。お前俺の事大好きやもんな〜。いきなり居らんくなったらそら寂しいやろな〜。 たまには帰って来たるから泣くなよ?」
「誰が泣くか!鬱陶しいねん!離れろ!」
「おーおー、機嫌悪いなぁ?どうした?情緒不安定か?」
「お前に言われた無いわ!情緒不安定男!」
「なんやと!?」
治が侑の胸倉を掴むと、抵抗するように侑がその手を掴み髪を引っ張る。そうして2人が暴れていると下から母親の怒号が聞こえてピタリと喧嘩を止める。
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