さよならプリーツ







「来年から苗字さん東京ね」

『…………………え?』





ーー事の始まりは2時間前に遡る





『おはようございま〜す』

「おはよう」




いつも通り名前が足icsに出社し、制服に着替えてネームプレートを付けていると、リーダーに名前を呼ばれた。




「苗字さ〜ん!今日チーフが話あるって〜!」

『わかりました〜!』




返事をすると隣で着替えていた先輩が肘で名前をつついた。




「なにしたの〜?チーフに呼ばれるってそうそう無いよ〜?」

『特にミスもしてないし、何もしてないはずなんですけど…』




名前は首をかしげながら頭を捻るが特に思い当たる節が無く低い声で唸る。すると先輩も首を傾げて思い付いたように言葉を発した。




「もしかして異動だったりして!」

『え〜?私達ただの受付ですよ〜?無い無い〜!』

「だよね〜!」





ーーそんな会話をしていたのが1時間前だ






「苗字さん、4月から東京に異動ね」

『…………え?』

「受付2人の産休とか育休が重なっちゃったらしくてさ。人が足りないらしいのよ」

『……と、東京?でも、私、ただの受付で…』

「勿論、断る事もできる。宮城から東京なんて簡単に決断出来る距離じゃないから」

『…は、はぁ…』

「そしたら、他の子に頼むしか無いわね…」




ポツリと零したチーフの言葉にピクリと体が揺れる。チーフはそんなつもりで言葉を零したわけじゃない事は分かっているけど、そう言われてしまうと私が行かないと、と思ってしまうのは仕方ない事だと思う。

けれど、東京

やはり簡単には決められない




『……少し、時間をもらってもいいですか?』

「ええ、もちろんよ。むしろごめんなさいね。バタバタしちゃって」

『い、いえ…』




名前はチーフに一礼すると自分の持ち場である受付に腰を下ろした。




「で?何したの?」

『………異動、みたいです』

「…………………え?」





名前と同じ反応をする彼女にきっといつもなら笑っていただろうが、今の名前にそんな余裕は無かった。

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