秘密一つに不慣れな二人




『で、出まし、た』

「お、おん、」




名前が髪を乾かして居間に戻ると既に布団は敷かれており、その事がこれからの行為を想像させられて顔が熱くなる。チラリと時計を確認すると短い針は9を指していた。





『………』

「…………」




ふたりはどうしていいか分からず、向かい合わせで布団の上に正座で座る。すると侑が名前と髪に手を伸ばすから、名前の肩がビクリと揺れる。





「…そんな警戒すんなや。がっついたりせぇへん」

『わっ、分かってる…』

「髪ちっと濡れとるな」





侑は名前の毛先を指でくるくると弄びながら小さく笑っていた。その姿に名前の肩からもほんの少し力が抜けて唇を開く。




『まっ、待たせるのも、悪いかなって…』

「……ほんまに、ええの?」





緊張している侑の声は酷く硬く、名前を伺うように少し上目遣いで顔を覗き込んだ。そして侑の手は名前の膝の上にある手に重ねられ、名前はその手の熱さに驚いた。




『……侑に、言ってなかったんだけど、』

「なんや」






名前も何処か緊張した面持ちで重たく言葉を吐き出す。あまりにも真剣な表情に侑もグッと体に力を入れる。





『この歳で恥ずかしいんだけど…、私、初めてで、』

「……………へ?」

『面倒臭いっていうのも分かってる!…嫌なら、』

「あほ」

『痛っ…!』





侑は唇を尖らせて不機嫌そうに眉を寄せながら名前の額を指で弾く。その行動に名前は驚きながらも反射的に両手で額を抑えた。





「好きな女が初めてでめんどいなんて思うわけないやろ。思う男が居るんならソイツはその女に惚れとらん」

『……侑、』

「そんなん言うなら俺かて初めてやし。それに俺は名前の最初で最後の男や。最初も最後も俺なんやで?そんなん最高やんか」

『……ありがとう』

「何がやねん」




侑はシシシと笑ってコツリと額を合わせるとゆっくりと瞼を閉じた。名前もつられるように瞳を閉じると唇が重なっては離れて、そしてまた重なった。





『……緊張する、』

「俺かて試合より緊張しとる」






侑は名前の右手を取ると自分の胸元へと移動させて息を潜める。すると名前の手のひらには早すぎて心配になる程脈打つ侑の心臓の音が感じられた。




「…もっかい、キスしてもええ?」

『……うん、』





唇が重なると、ちゅう、と唇を吸われて、焦らすように何度も唇が重ねられる。名前は緊張を隠す様に繋がれた侑の手を握ると応えるように侑もその手を握り返した。するとそのまま体重がかけられてゆっくりと布団の上に倒れ込む。唇が離れて名前が薄ら瞼を持ち上げると侑の顔には影が指していて、その表情は試合のようにギラギラとしていた。





『あ、侑、電気、電気暗くして欲しい、』






名前が必死にそれだけを伝えると侑はハッとした様に目を開いて電球の紐を引っ張り豆電球にして、少し恥ずかしそうにしながら誤魔化すように触れるだけの唇を重ねた。






「…緊張して頭回らん」

『私もだから…、お揃い』

「………」

『…侑?』

「……あかん…、名前が可愛く見えた」

『いつもは可愛くないってか』






悔しそうに唇を噛んでそう言った侑の頭を軽く叩いて名前がジト目で睨む。すると侑はフッと笑って少し崩れた名前の髪を撫でて整える。






「いつも可愛ええと思っとるよ。やから俺も必死に捨てられへんように頑張っとんねんもん」

『……馬鹿じゃないの』

「フッフ、ほんまに照れ方ヘタクソやな」





楽しそうに笑う侑は少し力が抜けたのか、いつもの様に唇を重ねてするりと名前のお腹の辺りを撫でる。




「……解くで」

『…ん、』






着物の帯がシュルリと静か過ぎる空間に大きく響いて床に落とされる。けれど侑は浴衣を広げること無く首筋に唇を落として熱い舌を伝わせる。あまりにも熱すぎる舌に名前はビクリと体を揺らす。





『…っ、』

「…なぁ、痕付けてもええ?ちゃんと見えへんとこにするから」

『……見えない、とこなら、』





侑は少しだけ着物の首元を緩めると鎖骨やその少し上辺りに何度か吸い付いた。その度に走る甘い痛みに名前は必死に息を飲み込む。





「触んで、」




そう言って侑は少し名前の着物をはだけさせると、ゆっくりと確かめる様に素肌に触れ、右手で胸を包み込んだ。






「……柔らか、」

『そっ、そういう事っ、言わなくていいから…!』

「しゃーないやん!」





ふたりして顔を赤くしスっと視線を逸らす。その間も侑の手は感触を楽しむ様に動かされる。じわじわと襲ってくる小さな快楽に名前は唇を噛む。名前が瞼を閉じていると突然、突起が弾かれて声が漏れて目を見開く。






『…んっ、』

「…………」







静寂の中に突然流れた甘い声にふたりは目を見合わせて固まった。そして我に返った名前はカァーッと顔を赤くして両手で顔を覆った。





「…めっちゃエロかったんやけど、」

『言うな!やめろ!』

「こっちの方が気持ちええの?」

『やっ、ちょっ、』






下着を少しズラして突起を優しく指で擦りながら侑の片手は顔を覆っている名前の手を掴み、顔を覗き込む。





『ま、待って、』

「…顔真っ赤やん、」

『あ、つむ、』





あまりの恥ずかしさに名前の瞳に涙が溜まると、侑の喉がゴクリと鳴った。侑は名前の手を離すと顔を移動させて舌を出し、突起に伝わせた。






『ひっ、』





熱くぬるりとした舌が突起を弾いたり、時々優しく吸われたりを繰り返され名前はパチパチと瞬きを繰り返す。その呼吸は段々と荒くなり、声が漏れそうになるのを必死に抑える。するともう片方の膨らみの突起にも快楽が走り反射的に侑の頭を抑える。チラリと視線を落とすと、侑の手が器用にも突起を啄いていた。






「痛かったか?」

『い、痛くは、ない、けど、』

「続けてもええ?」

『う、ん』





名前が頷くのを確認して侑は名前の髪を撫でて優しく声をかけた。





「背中浮かせられるか?」

『せ、なか?』




意味もわからないまま名前が少し背中を浮かせると、侑の右手が背中に回されてホックが外される。その事に名前は驚いて声を上げる。






『片手で外せるなんて…!』

「……お前なぁ、…雰囲気とか気にせぇへんの?」

『だって、思わず…』

「仕組みが分かってれば取れるやろ」





何処か呆れた様な顔をしながら侑は下着を上にズラすと膨らみに唇を落として、時折舌でなぞる。





「…下、触ってもええ?」

『……許可する、』

「ありがたき幸せ〜」





クスリと笑いながら侑はお腹を撫でて手のひらを下へと伸ばす。下着の上からなぞると、少しだけ湿りを帯びたショーツに目を細める。





「ちっと濡れとる」

『なっ、なんで言うかなぁ…!?』

「だって嬉しいやんか」

『はァ?』





侑の言葉の意味が分からず名前が素っ頓狂な声をあげると、侑は頬を染めて恥ずかしそうに、けれど嬉しそうに笑った。





「好きな女が自分の手で気持ちようなって、乱れとるんやぞ?嬉しいやろ」

『………そういうもんですか』

「そういうもんです」





侑はショーツに手をかけるとゆっくりと下へとズラして名前の足から抜き取る。そして探るように指を伝わすと、ぴちゃりと音がして指を上下に動かす。





「……濡れとる」

『っ、』





名前から溢れる愛液を指に絡ませると、突起に擦り付ける様にして指を動かした。





『んっ、…それっ、…やだ、』

「嫌…?」





不安そうに眉を下げて首を傾げる侑に名前はグッと唇を噛む。侑だって初めてで、女性の嫌の意味をまだ分からない。名前は羞恥を噛み殺して視線を逸らし、小さく震える声で言葉を吐き出す。






『…き、もち、良くて、いや、』

「……分かった、」





侑も名前の言葉の真意に気付いたのか、指の動きを再開させた。侑の指が優しく突起を擦り、段々とその水音は大きくなる。





「さっきよりも濡れてきたな」

『っ、…ぁ、』

「…指、入れるで、」





侑の爪はバレーで切りそろえられていたおかげで痛みは無く、名前はナカに感じる異物感に眉を寄せながら耐える。





「痛いか?」

『痛くないけど、…変な、感じ』

「痛かったらすぐに言うて」





侑の指がズルズルと抜かれて、またゆっくりと戻される。侑の指がナカの上のお腹辺りをなぞる度に名前は甘い痺れに腰を揺らす。





「…ここ?」

『なっ、んか、変なっ、感じっ、』





ジッと見つめる侑の視線から逃れる様に名前は両腕で顔を隠す。それでも侑の手は止まることなく、ゆっくりと、けれど確実に名前のイイところをなぞる。





『まっ、待って、侑っ、』

「ん?」

『あっ、…へんなっ、感じっ、』

「名前ってひとりでせぇへんの?」

『なっ、にがっ、』

「やってさっきから変な感じとしか言わへんやん。ひとりでシたことあるんやったら気持ちいいって分かるやろ?」





分かっていた。名前だって成人してから数年経っている大人だ。その間経験が無いと言っても自分でシた事はある。変な感じ、ではなく、気持ちいい、のだ。





『〜っ、』

「俺初めてやから気持ちええって言ってくれへんと分からへん」





そう言った侑の表情は真剣で、名前は侑が恥ずかしがらせる為に言った訳では無いと分かっていた。だからこそ、余計に言葉が詰まった。けれど相手は歳下。侑が歳下扱いが嫌いなのは分かっているが、歳上である自分がリードしなくては、と謎の責任感が名前の口を動かした。






『…き、もち、いい、から、』

「…名前?」





両手を侑の首裏に回し、顔が見えないようにと最後の抵抗で耳元に口を寄せて小さく呟いた。





『…もっと、して、』





名前のすぐそばで侑の息を飲む音が聞こえたと思ったら唇が重なっていた。舌が絡められて既に汗をかく程熱いのに、その舌があまりにも熱くて名前の額に朝が浮かんでいた。

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