百人を殺さねば良医になれぬ








「任務に行きたくて行きたくて仕方ない名前に朗報だよー!」

『任務ですか』

「いや、うん…そうなんだけどさ…、テンション上げてこうよ…」





先生と狗巻くんと訓練を始めて1ヶ月が経った7月下旬、やっと私にも任務がやってきた。




「今の時期は夏休み前とかだからそんなに呪術師の仕事は多くないんだけどね。大人たちは憂鬱みたいだね」

『そうですか』

「どうする?誰か連れていく?今の時期なら暇だがら同期から誰か連れて行ってもいいよ」

『いえ、だいじょ』

「高菜!高菜!」

「はい!狗巻棘くん!」

「こんぶ!高菜!」

「だってさ名前、棘が一緒に行きたいって」

『………………よろしくお願いします』

「おぉ!良かったね棘!」

「いくら!」




狗巻くんは自分の常をポンッと叩いて胸を張った。確かに私より階級が高く経験も豊富な狗巻くんが居てくれた方が安心する。私が素直にお願いすると席に着いていた禅院さんとパンダは驚いている様だった。




『任務はいつですか』

「今から」

『…今から?』

「うん、今から。だから車の中で情報を調べてね。はい、いってらっしゃい」

「しゃけ!」

『分かりました』





狗巻くんと靴箱を目指していると、彼はどこか楽しそうに口を開いた。最近になってやっと少しずつだけ彼の言いたいことが分かってきた。本当に少しだけど。まだ8割何を言ってるか分からない。





「すじこ、こんぶ、」

『……………あ、緊張?』

「しゃけ」

『まぁ、大丈夫かな、……狗巻くんも居てくれるし』

「………………ツナ?」

『うん』





狗巻くんが自分を指さすから頷くと彼はグッと胸の辺りを掴んで苦しそうに背中を丸めてた。え?なに、発作?





『狗巻くん?大丈夫?任務私1人でも平気だよ』

「おかか!…すじこ、」






首をフルフルと振って歩き出した狗巻くんに首を傾げながらもまぁ、いいかと歩き出した。






『…………なんか、呆気ないね』

「高菜!」

『…そうだよね』





任務先について呪霊を難無く祓うと2人で高専に戻った。狗巻くんが居てくれたから早く終わったっていうのもあるけど。




『ありがとうございました』

「すじこ」




窓の人に頭を下げてお礼を述べ、2人で高専の校舎を歩く。すると狙ったかのように先生が目の前に現れた。



「おー!おかえり、どうだった?」

「いくら!」

「流石に余裕だったか。名前は?どうだった?初任務」

『……別に、これといっては…』

「強心臓だねー。次からはもう少しレベルアップしたやつにしよっか」




狗巻くんがウンウンと頷くと先生は首を傾げて、ついでに体も傾けた。背高いな本当に。




「次からは棘は参加しないよ」

「………高菜!?」

「当たり前でしょ?今日たまたま暇で、名前が初任務だからついて行ってもらっただけなんだから」

「……すじこ、」





狗巻くんは何故か肩を落としてガックリとしていた。狗巻くんもお金稼ぎたいのかな。





「それで?どうする?まだ特訓する?」

『……先生に時間があればお願いします』

「貪欲だねー。いい事だけど。棘は?」

「しゃけしゃけ!」





狗巻くんはフンフンと鼻を鳴らしながら頷くと、先生は右手を上げながら去って行った。2人で残されて、私は寮に戻ろうと足を進めると狗巻くんもついて来たから多分寮に戻るんだろうな。




「いくら、高菜?」

『うん、任務だって狗巻くんに迷惑かけちゃったし。もう少し1人で動けるくらいにはならないと』

「すじこ!」

『何度かカバーしてもらってた。ごめんね』

「おかか!」






狗巻くんはクールそうな見た目とは反して身振り手振りが大きい。多分呪言の縛りで言葉が通じにくいからだろうけど。私もその動作で理解出来てるところが多い。




『………もっと強くならないと、』

「………………………おかか…、」





私の言葉に狗巻くんは小さく首を振っていたけど、その意味が分からなかった。それに彼はどこか私を心配るような目を向けていた。でも私はそれを見て見ぬふりした。





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