足元からはがれ落ちる君の気配
虎杖くんに引っ張られて地面に足を付けると野薔薇の姿があった。気持ち悪い格好をした男の人の背中はもっと気持ち悪かった。
「みたなぁああぁ!?」
「え、誰!なんかゴメン!」
「ゴメン兄者ァ!わざとじゃねぇ!わざとじゃねぇんだ!」
「バチ殺し!!」
あぁ、うるせぇなぁ、
『…ぐっ、』
突然虎杖くんに抱えられてお腹に痛みが走った。すると虎杖くんは次に野薔薇を抱えた。
「うっし射程外だな」
「よくやった褒めてつかわす」
「ヘイヘイ」
「嘘、アリガト」
「苗字は?平気?」
『………』
「名前?」
野薔薇が私に手を伸ばそうとした時、目から血を流した呪霊が血のようなものを吐き、野薔薇を守るように虎杖くんがそれを浴びた。
「虎杖!!………ッツ!」
「心配しなくても弟の血に私のような性質はありませんよ。私のだって全身に浴びてもしない限り死にはしません。まぁ死ぬ程痛みますがね。私達≠フ術式はここからです」
気持ち悪い男がそう言うと野薔薇たちの体に薔薇のようなものが刻まれた。すると野薔薇は釘を取り出して自分の掌に刺した。
「我慢比べしよっか」
我慢比べ、我慢比べかぁ…。私は我慢が得意だと思ってた。物心ついてからずっと、我慢ばかりの人生だったから。
『…………アンタのせいだ、』
アンタのせいで私の仮面が剥がれたの。仮面があれば私はいくらでも我慢ができたのに。我慢ができなくなったのは、私のせいじゃない。やっぱり私は悪くない。
『………全部、捨てちゃおっか、私にはアナタがいるもんね。独りなんかじゃない。…………あの時から私は独りじゃなかった』
なら、もう何もいらないじゃん。なんで気づかなかったんだろうね。
やっぱり、恋愛なんて馬鹿がすることだったんだ。良かった。私はまだあの女とは違う。まだ全然引き返せるところにいる。むしろまだ出発すらしてない。
私はあの女みたいな馬鹿じゃない。結局はホルモンの勘違い。
『…………』
私には、アナタがいるもんね。独りなんかじゃない。アナタは私を捨てない。見捨てない。
私を愛して≠ュれるでしょう?
『…………おいで、さとるくん』
やっぱり私の神様はこの世でたったひとりだった