きみが熱帯の中心



『明日から私任務行ってくるね』

「……………乙骨先輩とか」

『うんっ!』




私が嬉しそうに頷くと伏黒くんに鼻を摘まれた。付き合ってから伏黒くんはよく私の部屋に来るようになった。隣に虎杖くんが居なくて寂しいのかな。でもあともう少しで交流会だし、あと少しの我慢だよ。




『よしよし。良い子だね〜』

「……やっぱりオマエって人の話聞かないよな」

『…え?』





私が首を傾げると伏黒くんは呆れたように溜息を吐いた。でも私は怒らない。今の伏黒くんはスウェットだから。スウェットって何故かかっこよく見えるよね。高専の制服はピシッとしてるから余計かな。





『………うん。スウェットは2割増だ』

「意味が分かんねぇ」




伏黒くんはそのまま視線をスマホに落としながら会話を続けた。




「交流会の2日目は参加するのか」

『うん。どうにか参加させて欲しいって五条先生に言って、五条先生が上に言ってくれたの。乙骨先輩は忙しくて参加出来ないみたい』

「……………」





私が乙骨先輩の名前を出す度に機嫌が悪くなるから最近はちょっと楽しくなってきた。私みたいな面倒な女はこうやって愛を確認するんですね。ごめんなさい。




『乙骨先輩は尊敬してるけど違うよ』

「……分かってる」

『でも乙骨先輩の愛情は好き』

「……………」




伏黒くんが愛してくれても、やっぱり乙骨先輩の呪ってしまう程の愛情は羨ましい。





『………ん、』

「…………」





突然顎をすくわれて上を向かされると唇が重ねられた。離れて瞳を上げると不機嫌そうな伏黒くんの瞳が見えてクスリと笑ってしまった。





『……伏黒くんが私を愛してくれる限り、私も伏黒くんを愛してるよ』

「…………」

『…不満?』





私が首を傾げると伏黒くんは何処か言葉の続きを促している様に見えた。




『伏黒くんが私を愛してくれるなら、私は伏黒くんだけを愛すし、他の人に目移りなんてしない。私は伏黒くんだけが好きで、愛してるよ』




私の言葉に満足してくれたのか伏黒くんは目尻を少し下げるとまた唇を重ねた。





「………日本に帰ってくるだろ」

『帰ってくるよ。軽いトラウマ植え付けちゃった?』

「…………向こうには乙骨先輩も居るしな」

『…ふふっ、』




私が笑った事にムカついたのか、乙骨先輩のことを否定しなかったことにムカついたのか分からないけど伏黒くんは唇を重ねるとさっきまでとは違って少し吸い付いてきた。
早く任務終わらせて誰かの元へ帰りたいなんて思ったの初めてだよって言ったらきっと彼は喜んでくれるかな。





*****




集合場所に現れた釘崎は大荷物で今から旅行にでも行こうとしているような格好だった。




「京都で姉妹校交流会…」

「京都の姉妹校と交流会だ。東京で」




去年勝った学校で行われると知り、それが乙骨先輩の力が大きかった事を知った釘崎はガイドブックを丸め大声で叫んでいた。うるせぇな。




「あらお出迎え?気色悪い」

「乙骨いねぇじゃん」




京都校が現れて空気が一瞬ピリつくと向こうの学校の引率の先生が五条先生を探していた。




「で、あのバカは?」

「悟は遅刻だ」

「バカが時間通りに来るわけねーだろ」

「誰もバカが五条先生のこととは言ってませんよ」



すぐに五条先生だと気づく俺も認めているようなものだけど。すると五条先生が何か大きな箱を荷台に乗せて現れた。




「私出張で海外に行ってましてね!京都校の皆にはとある部族のお守りを!歌姫のはないよ」

「いらねぇよ!」

「そして東京都の皆にはコチラ!」






五条先生が大きな声を出して両腕で箱を指さすと蓋が開いて中身から虎杖が出てきた。………虎杖?






「はい!おっぱっぴー!」

「故人の虎杖悠仁くんでぇーっす!!」

「………」

「………」





この時の俺と釘崎の顔はなんとも言えない顔をしていたと思う。すると俺たちの反応が思っていたのと違うのか虎杖は冷や汗をかき始めていた。




「………おい、」

「あ、はい」

「何か言うことあんだろ」

「……生きてること黙っててすんませんした」





釘崎の瞳には涙が浮かんでいて、コイツも泣いたりすんだななんて思った。





「開始時間正午まで解散!!」




夜蛾学長の声にゾロゾロと散ろうとした時、東堂先輩がパンダ先輩を呼び止めていた。何故か他の人たちも足を止めたから俺も何となく止めて振り返った。




「おい、パンダ」

「ん?なんだ」

「乙骨は不参加か」

「憂太は今海外」

「………………アイツは、」

「は?アイツ?」

「…………………苗字は、どこに居るんだ」

「……………………………」





パンダ先輩は俺を見たけど俺が何も言わないで居ると先輩は東堂先輩に向き直り苗字が海外にいることを伝えてくれる。と思っていた。






「俺分かんねぇから彼氏に聞いたらどうだ?」

「………………………………は?彼氏?」







東堂先輩はキョロキョロと東京校の男達を見渡していた。俺は何となく視線を逸らすと東堂先輩は虎杖を指さしていた。





「…………オマエか?」

「…え?…えぇ!?何の話!?なぁ!伏黒!何の話!?」

「………知らねぇ」





俺が白を切ると東堂先輩は狗巻先輩を睨んだ。すると狗巻先輩は悪ノリを始めたのかピースサインをした。いや、アンタ違うでしょ





「……狗巻なのか?」

「いっくら、すじっこ」

「いや、そんなはずない。苗字が趣味のつまらん男を選ぶわけが…」




その言葉を聞いて目尻がピクリと動いたのが自分でも分かった。アンタに苗字の何がわかるんだ。何も知らないくせに。




「だってよ〜?このままじゃあ棘が彼氏になっちまうんじゃねぇの?手上げろよ。俺が彼氏ですって」



禪院先輩のわざとらしい声に右手を少しあげると虎杖と東堂先輩が勢いよく振り向いた。




「俺です。苗字の彼氏」





俺が答えると釘崎と禪院先輩は満足気にニヤリと笑っていた。東堂先輩の驚いた顔と絶望の混じった顔にこの間殴られたの帳消しにしてやろうと思った。殴られたくらい許してやる。俺は東堂先輩が手に入れたくても手に入れられない物を持ってるからな。




「ほら〜、伏黒言ってやんなさいよ〜。俺の名前がお世話になってますって〜」

「俺の苗字がお世話になってませんけど、言っておきます」

「…伏黒、アンタ意外と面倒くさい男ね」

「オマエが言えって言ったんだろ」




まぁ、いい。今の俺は気分が酷くいい。



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