言の葉の色彩学
『……ゴリラ?』
「……あ、」
伏黒は女子生徒の言葉で自分が何を言ったかを思い出して慌てて口を手のひらで抑えるが女子生徒はジッと伏黒を見つめ続ける。その視線が居心地悪くなり伏黒はスっと地面に視線を落とす。
『ぷっ…、あははっ!ゴリラ!ゴリラっ!確かに!』
「……」
女子生徒は濡れた体を折ると大口を開けてお腹を抑えて笑っていた。思ってもみなかった反応に伏黒は驚いてその女子生徒を見つめ続ける事しか出来なかった。
『ごっ、ごめんね!初対面の人にゴリラなんて言われると思わなかったからっ、ちょっと、面白かったっ、』
「…………悪かった」
『え?なんで謝るの?私は面白かったんだけど…』
女子生徒はキョトンと首を傾げて不思議そうに伏黒を見ると、優しく微笑むと『それじゃあ、私帰るね』と行って濡れた上履きをキュッと響かせて背中を向けた。
「ーっ!?」
女子生徒の真上の天井からドロリと液体の様なものが現れて彼女を覆うようにボタリボタリと落ちていく。伏黒は慌てて女子生徒の手を引いて引き寄せると、突然の行動に女子生徒は目を見開く。
『…え?』
「クソッ!」
伏黒は舌打ちを隠すこと無く大きな音を立てると女子生徒の手を引いて走り出した。当然の奇行に女子生徒は頭にクエスチョンマークを浮かべながらも必死に足動かしてついて行く。
『あっ、あの!なんで走ってるの!?』
「いいからついてこい!」
『えぇ〜…?』
女子生徒は困惑の声を上げながらも引っ張られているせいで止まることが出来ずにとにかく足を動かした
伏黒の頭の中には一級の文字が浮かんでいた。特級程の力は無いが、確実に二級以上の呪力に無意識に体に力が入り、手を引いているせいでいつもの速さで走れない苛立ちを感じていた。
「っ、足遅ぇな!!」
『失礼すぎない!?私はなんで走ってるのかも分からないんだけど…!?』
「面倒だ…!」
伏黒は後ろを振り返って呪霊を確認すると長年使われて居ないであろう教室に女子生徒を半分投げ入れる勢いで押し込み、自分も体を滑り込ませ意味があるのかは分からないが鍵をかけて後ろを振り返ると女子生徒は床に尻もちをついて驚いた表情で伏黒を見上げていた。