わたしの中の波のざわめき





「苗字」

『…伏黒くん!』





家入さんの治療を終えて廊下を歩いていると伏黒くんが現れて足を止めた。




「………大丈夫か」

『え?…うん!大丈夫!死んでない!』

「…そうか」



4月になっても廊下は少し寒くて体が震えそうになったけど堪えて伏黒くんに駆け寄る。





『伏黒くんは?どうしたの?』

「……様子を見に来た」

『……私の?』

「オマエの」





伏黒くんは見た目は怖いし、目つきも悪いけど本当は凄くいい子で優しい子だって、出会った時から知ってる。




『…ありがとう。…私大丈夫だよ!元気!家入さんの治療のおかげもあるけど、でも!任務終わりも元気だったよ!』




私が自慢げに握りこぶしを作って力こぶを制服の上から見えるように腕を曲げると伏黒くんは視線を下げて顔に影を作っていた。




『………伏黒くん?』

「……オマエ、」

『ん?』





伏黒くんは何かを言いたかったのか何度か唇を開いては閉じてを繰り返すと、顔を上げて少し固い表情で口を開いた。





「……飯、食いに行くか」

『……うんっ!』





今日こそはプリンを食べようと弾む足を隠す様にわざとゆっくりとした足取りで伏黒くんの隣に並んだ。





******





「名前〜」

『はい!真希さん!』

「お前準一級になったんだって〜?生意気だな〜」

『いっ、痛いっ、痛いですっ、真希さん!』





私の為に開かれる受け身をとろうの会≠ェ始まると真希さんの腕が肩に回されてもう片手で髪をぐしゃぐしゃにされる。でも頭に置かれてる手が妙に優しいからされるがままになっていると、パンダ先輩に名前を呼ばれた。





「それにしても凄いな〜。呪術師になってまで数ヶ月だろ?」

「しゃけ」

「だから生意気なんだろうが」




最後にポンっと頭を叩かれて開放されると私に影が差して顔を上げると伏黒くんが立っていた。




『伏黒くん…?』

「受け身の練習、するんでしょ」




するとパンダ先輩が考えるように人差し指を口の下に当てた。






「でも名前、準一級なんだろ?受け身くらいとれるんじゃないか?」

「とりあえずパンダが1回投げれば分かることだろ」

「すじこ」

「……そうだな」




パンダ先生は自分の中で完結させたのか私に近付くと私の足首を掴んだ。





『……え、』

「それじゃあ行くぞ〜!」

『ちょっと待ってぇえ〜!?』





グルグルと回されて目が回り始めた頃、急に体が浮遊感に襲われて慌てて地面を見ようとするけど目が回ってて辺りはぐにゃぐにゃに見えた。あ、これやばいかも、って思った時浮遊感が無くなって温かさに包まれた。





『わっぷっ、』

「……受け身とれるんじゃなかったのか」

『伏黒くんっ!』





私を受け止めてくれたのは伏黒くんで、彼は呆れたように肩を落としながらもゆっくりと私を地面に下ろしてくれた。





『ありがとうっ!本当に死ぬかと思った…!』

「死にはしないだろ」

『伏黒くんが居なかったら今日の夜ご飯のハンバーグ食べれない所だった!』

「そこなのか…」

『あっ、伏黒くんは何食べる?私はねぇ…、餃子も良いかなって…』

「ハンバーグって言ってなかったか…?」





私が夜ご飯について考え出すと伏黒くんはハーっと溜息を吐いていて私は首を傾げることしか出来なかった。





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