花売りとパラシュート
「名前の力を測りたいから任務に行ってきて」
『………はぁ…、』
突然五条にそう言われ名前は食べようと1口に分けたサバの味噌煮をポロリと皿の上に落とした。それを見て伏黒は眉を寄せると慌てて名前が謝る。
『行儀悪くてごめんね!』
「…なんの任務ですか」
「なんで恵が気にするの?任務は名前にだよ?」
「苗字はまだ呪具すらまともに扱えないんですよ」
「その為の任務だよ」
「1人は危険すぎます」
「大丈夫だよ。だって名前は特級を取り込んでるんだよ?力は恵よりあるよ」
「………その使い方をまだ覚えてないって言ってるんです」
『あの!大丈夫だよ!私、頑張るから!』
2人の険悪な雰囲気に名前は慌てて立ち上がってそう言うと伏黒は眉間に深いしわを刻んだ。
「……頑張る、頑張らないの問題じゃない」
『でもっ、』
「そうそう。頑張る、頑張らないの問題じゃないんだよ。どう頑張っても名前は任務に行く。その選択肢しか無い」
「………なら俺も行きます」
「そのわがままは通らないよ。恵」
「……………」
伏黒はまるで親の仇の様に五条を睨み上げるが、五条は薄らと笑みを浮かべていて、それも伏黒を煽っている事に伏黒は気付いていた。
「それじゃあ任務については番犬が居なくなったら話に行くよ」
五条はそう言って名前の定食に乗っていたプリンを持って去ろうとした時、伏黒がガタリと音を立てて立ち上がった。
「それは苗字のですよ!」
「え?貰っていいよね?」
『えっ、はい!良いですよ!』
「ありがと〜!じゃあ、後でね」
「っ、」
伏黒は奥歯を噛み締めると五条の背中を睨みつけた。名前は伏黒を見て引き攣った笑みを浮かべた。
『ふっ、伏黒くんっ、ご飯冷めちゃうからっ、ね?』
「…………あれはお前のだろ」
『え?…プリン?…プリンくらいいいよ』
「……………」
笑みを浮かべて席に着く名前に伏黒は納得がいかないと表情に浮かべながら音を立てて荒っぽく席に着く。
『………』
「……………」
『……えっと、……、にっ、任務って、どうやって行くの?電車?』
「……………いや、基本は窓の人が車を出してくれる」
『そっ、そうなんだ…!なら迷う心配は無いね!良かった!』
名前はわざとらしく喜ぶと口を結んで水に口をつけた。伏黒は置いていた箸を持つと静かに口を開いた。
「……………やばいと思ったらとにかく逃げろ」
『…え?』
「任務がどうとかは考えなくていい。自分の身の危険を感じたらすぐに逃げろ」
『…………』
伏黒の言葉に名前は嬉しそうに笑うと伏黒は驚いた様に目を見開いた。
『………ありがとう、心配してくれたんだよね』
「………」
『とにかく頑張ってみる!……死なない程度に!』
そう言って握りこぶしを作り少し腕まくりをして見せた名前に伏黒は小さく微笑んでお味噌汁に口をつけた。
「………気持ち悪いねぇ」
五条は名前から貰った<vリンを天井に掲げる様にして小さく呟いた。