五条に告白したら逃げられた

高専に通う五条悟という男について少し語りたいと思う。
御三家である五条家に産まれ、無下限呪術と六眼と同時に授かった最強の呪術師。
身長は190越えで、顔は国宝級に整っている。
この男の欠点は、性格がクソだという所だろう。

そんなクソ野郎に惚れてしまっている馬鹿な女が、私だ。

『悟が好きなんだけど』

2人で行った都外での任務終わり、高専の門を潜る直前にそう言うと、悟はゆっくりと振り返った。

「……あー、なに?よく聞こえなかった」
『悟が好き』

もしかしたら聞こえないふりをしてくれたのかもしれない。同期のままで居たい。そんな意思表示だったのかも。でも私は同期に戻るにしても、スッキリとしたい。断られても同期なのは変わらない。
なんて言ってみても、やっぱり怖いものは怖い。
悟から視線を逸らし、地面の砂利を眺めて悟の言葉を待つ。けれど一向に答えない悟に痺れを切らして顔を上げると

『……………は?』

そこに悟の姿は無かった。


∵∵


『本っ当に最悪じゃない!?』
「それは無いな」
『でしょ!?』

その後、私がとった行動は同期であり友人である家入硝子に愚痴りに行くことだった。

『断るなら分かるけど!逃げるって何!?』

硝子の部屋で机をバンッと叩くと、ケラケラと笑って「荒れてるな」と言った。

『傑を好きになればよかった…!』
「アイツも隠れくずだから止めとけ」
『じゃあ七海!』
「懸命だな」

私だって七海を好きになれるならなってる。なのに惚れたのはあのクズだ。いつから私はダメメンズ好きになったのか。

『普通の振られ方よりキツイんだけど…』

振られるだろうな、とは思ってた。悟は私の事をただの同期としか見てないから。
それでもこの振り方は酷くないだろうか。流石の私も堪える。

「夏油の部屋でも行ってくれば?」
『は?なんで?』
「男の傷を癒すなら男、って言うだろ」
『ちょっと違うような…』

でもモテる男No.1の傑なら、何かしらアドバイスをくれるかもしれない。そう思って硝子と分かれ、傑の部屋の扉をノックする。

「名前?」
『よっ。今平気?』
「いいけど…」

どこか尻込む傑に首を傾げていると、少し遠くから上機嫌なのが声だけでも分かるほど楽しそうな声を上げる悟がスキップをして現れた。

「すっぐる〜!!」

けれど、私を見るなり両手にビニール袋を下げた悟はスキップを止め、デレデレとしていた表情を消して私を睨んだ。

「……なにしてんの。オマエ」
『なにって…、』
「こんな時間に男の部屋に来るってどういう神経してんの?」
『……はァ?』

今は21時過ぎだけど、それを悟に言われる筋合いは無い。自分を振った相手に説教されて、それを受け入れられるほど今の私のメンタルは強くない。

『悟に関係無いでしょ。私が用事あるのは傑だし』
「……あ?」

眉を寄せて凄む悟の雰囲気に押されそうになったけど、本当の事しか言っていない。悟に迷惑はかけてないし、頼むから今すぐ消えて欲しい。

『とりあえずすぐに終わらせるから悟は待っててよ。どうせ部屋近いんだし、いいでしょ』
「………の、…ッチ」
『なに?』

夏油傑相談室の順番待ちの話を悟にすると、何故か俯いてしまった悟は小さすぎる声を上げたが、よく聞こえなくて眉を寄せる。すると勢いよく顔を上げた悟は瞳に涙を溜めて大声をあげた。

「このクソビッチがァ!!」
『………はァ!?』
「夜に男の部屋に行くなんてヤってくださいって言ってるようなモンだろ!!あーあ!オマエってビッチだったんだな!尻軽女!」

突然の暴言を、好きな男に言われたショックと、極めて不名誉な言葉に腹が立って言い返す。

『なんでそうなるわけ!?意味分かんない!友達の部屋に遊びに来ただけじゃん!』
「それがビッチだっつってんだよ!」
『なんで悟にそんな事言われないといけないわけ!?関係無いじゃん!』

振られた気まずさなんて忘れ、悟に大声で詰め寄る。彼氏でも無いのに、そんな事、言われたくない。泣きそうになる気持ちを抑えて、必死に飲み込むと、悟はグッと息を飲んで、何故か顔を真っ赤にして口を開いた。

「彼氏なんだから関係あるだろッ…!」
『彼氏だからっ、て、……え?』
「オレは、オマエの彼氏なんだから、自分の彼女が、他の男の部屋に行ったら、嫌だろーが…」

頬を赤くして頭を掻きながら視線を逸らす悟に、私の頭はパニックだった。
訳が分からず傑を見上げると、深く溜息を吐いて助け舟を出してくれた。

「今日、悟に告白したんだって?」
『…したけど、』
「悟の中では、も名前と付き合ってるみたいだよ」
「オレの中ではって何だよ!」
『……付き合ってる…?…私と悟が?』

あまりの爆弾発言に思考が追いつかない。付き合うって何だ。彼氏彼女って何だ。何故、私と悟が付き合ってる事になってるんだ。

『……悟は私を振ったじゃん』
「はァ!?振ってねーよ!!」
『告白して答えも出さず逃げたら振られたのと同義でしょ!?』

傑を見上げてそう言うと、確かに頷いてくれた。ほら見ろ。私が正しいんだ。
フフンっと鼻を鳴らしながら悟を見ると、イギギ…、と悔しそうに顔を歪め、悟らしからぬ小さな声で言った。

「は、恥ずかしかったんだよ…。だから、その…、」
『……逃げた、と?』
「彼女なんだからそれくらい分かれよ!」

いやいやいやいや。可笑しい。誰が勇気を出して告白したら逃げられて、やったー!付き合えたー!恥ずかしくて逃げたんだなー!なんて答えに辿り着くんだよ。ストーカーだよそんなの。
私は落ち着く為に深呼吸を繰り返し、悟を見上げて大きく息を吸った。

『分かるわけないだろうがッ!!!!』


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真実編

五は告られてテンパリ、とにかく相談してた夏の元へと走り、「こっ、こここ告られた!名前がオレの彼女なんだけど!!」って言って「お祝いするぞ!」って1人でお菓子を大量に買って戻ったら名前と鉢合わせた。





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