7話 小さな柱合会議




「…あら、煉獄さん。こんにちは」

「胡蝶か!こんにちは!!」

「お前、今日は非番じゃねぇのか?なんで鎹鴉なんか連れて歩いてんだァ?」

「宇髄も居たのか!」

「最初から居ただろうが」





煉獄が久方振りの非番に街に行くと、出先の茶屋に宇髄、胡蝶が腰をかけていた。



「俺も失礼しよう!」

「なんでテメェが真ん中なんだよ!狭いだろうが!」

「そういえば宇髄は妻が3人居たな!それに胡蝶は女性だ!意見を聞きたい!」

「話聞けよ」

「そこで相談なのだが!妻が鬼殺隊に入隊したいと言ったらどうする!」

「……はァ?」

「まぁ!面白そうですね!」






真っ直ぐ前を見たまま話す煉獄に慣れているのか、宇髄は溜息を吐き、胡蝶は楽しそうに両手をパチンと合わせて顔を輝かせた。



「……お前、嫁なんていたか?」

「居ない!」

「………」

「だが奉公人は居る!」

「煉獄さんはその女性に恋心を抱いているのですか?」

「抱いていない!」

「…………要約すると、その奉公人が鬼殺隊に入りてェって事か?」

「そうだ!話が早くて助かる!」



そう言って煉獄は笑い、宇髄は鬱陶しそうに顔を歪めた。



「お前は反対しそうだけどな」

「あぁ!反対した!だからなのか最近1人で稽古をしている様だ!」

「…1人でですか?」

「走ったり、木刀を振ったりしている!」

「へぇ〜、肝が据わってるじゃねぇか」





煉獄の言った通り、名前は走り込みや素振りを行っていた。もちろん煉獄の居ない間に。煉獄が任務に出ている時に隠れて稽古をしていた。けれど、疲れきって船を漕ぎながら食事をしたり、洗濯物を畳みながら寝てしまい、覚えていないが名前は朝起きると布団に居た為、自分で移動したと思っているが、実の所は煉獄が眠ってしまった名前を運んでいた。



「……確かに鬼殺隊に入隊させるのは勇気と信頼、………そして捨てる覚悟が必要です」

「…まぁな。いつ死ぬか分からねぇ鬼殺隊に入隊させるってのはそういう事だな」

「でも煉獄さんは甘露寺さんを鬼殺隊に推薦しましたよね?」

「なのにそいつは入隊させねぇのは理由があんのか?」




煉獄は黙り込み、そして静かに言葉を発した。




「……鬼殺隊に入隊したいと言った日、名前の瞳には確かに人を助けたいという強い意志は感じた。けれどその反面、どこか諦めた目をしていた」

「……諦めた…、ですか?」

「自分の命が失われるのは仕方ない…、そんな瞳だ」

「……」




宇髄は空を仰ぎ、フーっと息を吐き出した。



「……お前がそいつを大事にしてる事は分かった。けど、そいつの意思を尊重してやっても良いんじゃねぇのか?」

「……宇髄さん」

「失うのは怖ェよ。……でもお前、本当は決まってんじゃねぇのか?」

「…………」

「本気で反対するならお前は木刀なんて置いておく筈がねェ」



ニヤリと楽しそうに顔を歪めた宇髄は煉獄を見ると、彼の表情は珍しく少し曇っていた。



「まぁ?お前の傍に居るのが一番安全だろうけどな。俺らの屋敷の周りは藤の花も派手に咲いてるしな」

「……時々、怖いんだ」

「…怖い?」

「煉獄が怖気付く程イカつい奴なのか?その奉公人は」

「私は1度だけ話した事がありますけど、普通の女性でしたよ」

「……見た目では無く、宇髄の言った通り肝が据わっているのか、時々…、名前が取り返しのつかない事をしてしまうのではないかと思ってしまう時がある」




煉獄はそう答えると、お茶を飲んだ。




「……おいそれ俺の茶だぞ」

「うまい!!」









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