38話 形は違えど人の為に





ーーやってしまった…




炭治郎は正座をして背中を丸めていると、千寿郎が炭治郎にお茶を出した。名前は火鉢を挟み、炭治郎の前に腰を下ろす。



「ごめんね本当に…、お父さんに頭突いちゃって…、大丈夫だった?」

「大丈夫だと思います。目を覚ましたらお酒を買いに出かけて言ったので」

「そっか…」

「ありがとうございます」

「…え?」




千寿郎の突然のお礼に炭治郎は首を傾げた



「すっきりしました。兄を悪く言われても僕は口答えすらできなかった」

「……」

「兄はどのような最期だったでしょうか」



千寿郎の問に炭治郎は全てを話した。



「そうですか…、兄は最期まで立派に…。ありがとう…、ございます…」

「いえ、そんな…、力及ばず申し訳ありません」


涙を流しお礼を述べる千寿郎に名前は唇を噛み、眉を寄せた。





「…あの時俺がもっと強かったら、一瞬で…煉獄さんを助けられるくらい強くなる方法があったら…ずっと考えていました。だけどそんな都合のいい方法はない。近道なんてなかった」



炭治郎は静かに、けれど強く言葉を紡ぐ



「足掻くしかない。今の自分にできる精一杯で前に進む。どんなに苦しくても、悔しくても……」

「そして俺は杏寿郎さんのような強い柱にーー必ずなります」




炭治郎の真っ直ぐな瞳に千寿郎は涙を浮かべ、小さく微笑んで涙を流した。



「兄には継子≠ェいませんでした。本当なら私が継子となり、柱≠フ控えとして実績を積まなければならなかった」



千寿郎は噛み締めるように言葉を続けた。



「…でも私の日輪刀は色が変わりませんでした。どれだけ稽古をつけてもらっても私は駄目だった」




千寿郎の膝の上に握られている拳にポタポタと涙が落ちる。そして小さく諦めたように笑った。


「剣士になるのは、諦めます。それ以外の形で人の役に立てることをします。炎柱の継承は絶たれ長い歴史に傷がつきますが、兄はきっと許してくれる」




炭治郎は瞳に涙を浮かべながら、千寿郎に言葉をかける。



「正しいと思う道を進んでください。千寿郎さんを悪くいう人がいたら俺が頭突きします」

「それはやめた方がいいです」




千寿郎の正論に炭治郎は口を一文字に結んだ。












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