34話 進むか止まるか




「それから、竈門少年 俺は君の妹を信じる。鬼殺隊の一員として認める。汽車の中であの少女が血を流しながら人間を守るのを見た。命をかけて鬼と戦い人を守る者は、誰が何と言おうと鬼殺隊の一員だ」




「胸を張って生きろ」




煉獄の言葉に炭治郎・伊之助がグッと息を飲み込む。



「己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと、心を燃やせ。歯を食いしばって前を向け。君が足を止めて蹲っても時間の流れは止まってくれない。共に寄り添って悲しんではくれない」


「俺がここで死ぬことは気にするな。柱ならば、後輩の盾となるのは当然だ」

「柱ならば誰であっても同じことをする、若い芽は摘ませない。」

「竈門少年、猪頭少年、黄色い少年、もっともっと成長しろ。そして今度は君たちが鬼殺隊を支える柱となるのだ」



「俺は信じる、君たちを信じる」




煉獄の最後≠フ言葉を聞き逃さぬように炭治郎はポロポロと静かに涙を流す。



「………、」




炭治郎の背後に煉獄は母である瑠火の姿を見た。



ーー母上

ーー俺はちゃんとやれただろうか

ーーやるべきこと 果たすべきことを全うできましたか?





ーー立派にできましたよ




優しく微笑んだ瑠火の言葉に煉獄は子供の様に笑ってゆっくりと息を引き取った。





煉獄が息を引き取る瞬間、気を失っている名前の瞳から一筋の涙が流れた。



ーーあとの事は頼んだぞ。大丈夫だ、君は俺の自慢のーーー




『………煉獄、さん…?』



頭に手のひらの様な温もりを感じて名前はゆっくりと瞼を上げた。




「なんで来んだよ上弦なんか…、そんな強いの?そんなさぁ…」

「悔しいなぁ…、何か一つ出来るようになっても、またすぐ目の前に分厚い壁があるんだ…。凄い人はもっとずっと、先の所で戦ってるのに…、俺はまだそこに行けない…」



炭治郎は膝の上で拳を握り堪えるように涙を流す。そして瞼を強く瞑り、悔しさを堪えながらも吐き出す様に言葉を続けた。



「こんな所でつまずいてるような俺は…煉獄さんみたいになれるのかなぁ…」

「弱気なこと言ってんじゃねぇ!!」



伊之助の力強い声に炭治郎は小さく体を揺らす。


「なれるか、なれねぇかなんてくだらねぇこと言うんじゃねぇ!信じると言われたならそれに応えること以外考えんじゃねえ!」

「死んだ生き物は土に還るだけなんだよ!べそべそしたって戻ってきやしねぇんだよ!」

「悔しくても泣くんじゃねえ!!どんなに惨めでも恥ずかしくても生きてかなきゃならねぇんだぞ!!」




伊之助は修行だと言いながら炭治郎の羽織を引っ張る。



『………煉獄さん?』



名前は脇腹から血が流れる事も気にせず、呆然としたまま煉獄の元へと足を進める。時々地面に手を付きながら半分這うように、煉獄の前に倒れ込むように座り込む。



『…………煉獄さん?』



その声はまるで親を探す子供の様な声だった











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