24話 火炎の行先
『…………』
瞳を開け周りを確認する。横を見ると何故か汽車が横転していて、私は外に居た。………大丈夫。意識はハッキリしてる。ここは夢だ。覚醒条件も覚えてる。
私は刀を抜いて乱れそうになる呼吸を必死に整える。
『……大丈夫、夢だから。斬っても私は死なない…、大丈夫、……大丈夫だ』
刀はカチャリと音を立て、首元にあてがう。
『……っ!?』
その瞬間、後ろで地響きが鳴り渡り慌てて振り返る。
『………猗窩座…!!』
振り返ると猗窩座が立っていて、師範と炭治郎まで居た。
『…どうして!!』
私は立ち上がり走って師範の元に向かう。
『…師範!!』
「…名前か」
「……また弱そうなのが増えたな」
夢とは思えない猗窩座の気迫に勝手に体が震える。夢の筈なのに、………これは本当に夢なのか?
「……鬼になれ、杏寿郎」
「俺は鬼にはならない」
「…そうか、なら、…………死んでくれ」
一気に距離を詰める猗窩座に慌てて剣を構える。
『……炎の呼吸 伍ノ型 炎虎』
「炎の呼吸 参ノ型 気炎万丈」
「……ほぉ、同じ炎の使い手か」
猗窩座は距離を取り避けると、直ぐに私の目の前に飛んできた。
『っ、炎の呼吸 弍ノ型 昇り炎天』
「……」
猗窩座は後ろに少し下がり技を避けると少しだけ切れた胸元を摩る。
「……そこら辺の剣士よりは強いな。けれど柱よりは断然弱い。お前は必要無い。話の邪魔だ」
『っ、』
私が唇を噛むと巨大な炎が猗窩座包んだ。
「……俺の大事な弟子だ。弱いはずが無い!!」
『…………煉獄さん、』
その声は強く、そして真っ直ぐだった。
「…分からんな。何故弱者に構う。杏寿郎、お前は強い…。鬼になれ!!」
「ならない!」
『させない!!』
「お前は邪魔だァ!!」
『ッグー、』
力強い拳に慌てて刀を盾にして拳を受け止める。それでも圧されて腕に力を込める。拳を流す様に刀を斜めに振り下ろして距離を取る。
『はっ、…はぁっ、』
「…名前、まだやれるか」
『はい!!』
崩れそうになった体勢を立て直し、真っ直ぐに剣を構える。
「…どうしてその餓鬼を庇う。ただの邪魔だろう」
「…邪魔などでは無い」
「……弱い奴に構うなど、俺には理解出来んな」
「……ここに居るものは誰も弱くない」
「……まぁ、いい。…………死んでくれ」
「……名前」
『っ、』
名前を呼ばれただけで何を伝えたいのかが分かった。それだけ長くこの人と居たんだから。
「炎の呼吸 玖ノ型」
『炎の呼吸 玖ノ型』
すぅーと息を吸い込む。ここで絶対に猗窩座を倒す。そして絶対に彼を救ってみせる。
『「煉獄!!!」』
「ーっ、」
私の剣が猗窩座の腰を斬って、体勢の崩れた上体を師範が首元を狙って刀を下ろす。
『絶対に助ける!!!』
爆発音と共に大きな火柱が立ち上っていた。
← 戻る →