16話 終了する顔合わせ




「お疲れ様でした」


綺麗で可愛らしい声が聞こえて、最終選別が終わった事が知らされる。



「……名前は違いが分かるか?」

『………ごめん、分からない』




炭治郎の隣に立ち、猩々緋鉱石を眺める。そこで私は不意に気付く。




刀を作って貰って色が変わらなかったらどうしよう…、


私はそもそもこの世界の住人では無い。その可能性だって大いに有り得る。



「……名前?……汗が凄いぞ!どうした!」

『……ごめん、何でもない』



私は炭治郎に謝り、また猩々緋鉱石を眺める。




『………あ、』




見た目に大した違いは無いのに、何故かただ1つに目が奪われる。自然と手が伸びてその石を選ぶ。



理由は分からないけれど、その石を見た時に煉獄さんの顔が浮かんだ。



『………私は、これにする』




刀の色が変わらなかったら、またその時考えよう。考えても仕方の無いことは考えるな。



私はだだ、あの人を救う事だけを考えればいいんだから。




******




『……師範、戻りました』

「……うむ!怪我も無いな!関心、関心!」

『はい』




最終選別を終えて、屋敷に戻ると師範は縁側に腰を下ろしていた。その足元に跪き頭を下げる。



「……それで、初めて見た鬼はどうだった」

『………怖いと、思いました』




幾ら漫画で見たとはいえ、本物を見た時の恐怖は尋常では無かった。



「…そうか」

『…だからこそ、私は師範と共に戦いたいです』

「………」

『……私は、最終選別に行った事…、そして鬼殺隊に入隊する事を後悔する事は無いです』

「………そうか」



私が答えると師範は満足そうに少しだけ笑った。




「今日は名前の好物にしよう!」

『…えぇ!?良いんですか!?』

「あぁ!入隊する祝いだ!」

『ありがとうございます!!』




私が立ち上がり喜ぶと、師範も立ち上がり私に近づき私の頬を撫でた。



「……無事で良かった」

『……大丈夫です。なんたって私は鬼殺隊 炎柱の煉獄杏寿郎の継子なんですから』

「……そうだな!」




親指でスリスリと頬を撫でられ、擽ったくて少しだけ身を捩る。



「何が食いたい!」

『………さつまいものお味噌汁が良いです』

「む?」

『…あと、師範が、良ければなんですけど、いっ、一緒に、作って貰えませんか?』





実年齢成人済みが年甲斐も無い恥ずかしい頼み事に頬が赤くなるのを感じながら、師範を見上げて尋ねると師範はピシリと固まってしまった。



『…しっ、師範?』

「……」

『あの、…やっぱり、ダメでしょうか…?』

「……いや!そんなことは無い!」

『良かった…、』




私が安堵の溜息を吐き出すと師範は、私に触れていない方の手で顔を覆ってしまった。




「……そういえば君は無意識だったな」

『…え?』

「……こちらの話だ!」




そう言うと師範は最後にするりと私の頬を撫でて手を離すとさつまいを買いに2人で街に向かった。








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