14話 最終選別
『……行ってきます!』
「あぁ!」
私は緊張した面持ちで師範に挨拶をして最終選別へと向かう為、背を向ける。
「……名前」
『…はい?』
師範に名を呼ばれ振り返ると、温もりに包まれた。
『……煉獄さん?』
山吹色と赤色の髪が見えて抱きしめられている事に気付いた。
「……必ず、生きて戻って来い」
その言葉に、声に、無意識に腕が動いて彼の背中に回して抱きしめ返す。
『……はい。生きて、戻って来ます。ここに』
私が答えると、グッと腕に力が込められて少しだけ苦しくなったけれど、それが堪らなく嬉しかった。
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「…名前」
『カナヲ!』
会場には既にカナヲが居て、知り合いがいる事に安心した。
『頑張ろうね!』
「…うん」
辺りを見回すと、彼をーー竈門炭治郎を見つけた。頭に狐の面を付けてキョロキョロと周りを見渡していた。
『……』
主人公に会えた喜びよりも、その時≠ェ近づいているという実感に焦りを覚えた。
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『……7日間、生き残る』
私は稽古はしてきたが、本物の鬼を見たことは無い。勿論、漫画、アニメでは見た。けれどこの目で見た事は無かった。
『……大丈夫、私は煉獄杏寿郎の継子なんだから』
そう小さく呟き、気合を入れる。
「きたァきたァ…、餌だァ、数ヶ月振りの、上物だァ」
『ーっ、』
声が聞こえ視線を上げると四つん這いになり、私を舐める様に見定める、鬼が居た。確かに気配はあった。けれど実際に見ると少しだけ、恐怖が生まれる。
「…女、女だァ、こりゃ良い…、」
『……』
私は剣を抜いて構えると、笑っていた鬼の表情が固くなった。
「…あァ面倒だなァ、まずは腕から食いちぎってやる…、」
『……炎の呼吸 壱ノ型』
「……刀が邪魔だもんなァ、この間の餓鬼みたいに食ってやる」
『……………不知火!!』
「…………………あァ?」
一気に間合いを詰めて一撃で鬼の首を落とす。ゴトリと重たい物が落ちた様な音がして振り返ると鬼の首がこちらを見ていた。
「……あァ?…なんだこれェ?……斬られたのか?首を?………この俺がァ?……………ぎゃぁっぁ!!」
鬼の首と体は弾ける様に細かく飛びちった。
『…………ふぅ、』
私は小さく息を吐き、刀をグッと握る。
『…………もっと、もっと強く、』
こんな所で怖気付いて、立ち止まる訳にはいかない。
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